「もういいぞ。サキ」
声に促されて、ゾンビィ2号二階堂サキは被っていたジャケットを下ろした。
「うわ…ベッドでっけぇ…」
目の前に広がる異空間に素直な言葉が口を衝いた。
窓のない薄暗い室内。怪しいピンク色の照明の中、キングサイズのベッドが部屋の中心に鎮座している。
ローファーを脱ぎ、湿った靴下でフローリングの床を濡らしながら、メイクが流れた顔で室内を物珍しげに見渡す。
ドアが閉まる音に華奢な肩がピクリと跳ねた。
フランシュシュのプロデューサー、巽幸太郎が濡れた前髪をかきあげる。
「先にシャワー浴びてこい」
こくり。
細い喉を鳴らして緊張を飲み込んだサキは、男の指示に無言で頷いた。
ここは佐賀県のとある県道沿いに建つアミューズメントホテル。
つまりはラブホテルである。
18/12/02(日)23:39:23
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