虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。

2022-04-24のスレッド一覧 6273件

夜の帳が下りてきたから、私の瞼は開いてしまう。太陽から身を隠すように眠る習慣がついて、もうどれくらい経っただろう。 今では電気を点けることさえ怖くて、記憶を頼りに冷蔵庫へと巡礼する。 幽霊のように、陽炎のように。自由に消せるのが足音だけじゃなかったら、あの人にこんな苦労をさせずに済んだのに。 重々しい扉をやっと開いて、完璧に用意された夜食の盆をそっと取り出す。 片手でも簡単に食べられるよう拵えられた小さなおにぎりとおかずを何とか胃の奥に流し込んで、義務付けられた栄養の摂取を終える。 それきり、目覚めたばかりの私が眠るまでにやる事はもう何一つ残っていなかった。 何もしない。できない。しなくていい。真綿の監獄が優しく囁きかける。 施されたタブレットの操作すら不慣れな右手では億劫で、残ったのは抜け殻のわたしに相応しい抜け殻の時間だけだった。 一秒。二秒。三秒。時計の針が責め立ててくる。 四秒。五秒。六秒。呪わしい過去が脳裏で澱む。 爆発的に発生した喉を掻きむしる衝動さえ片腕の身には過ぎた願いで、結局私は堪えきれずにヨロヨロと歩き出す。 お話に出てくる幽霊のように、とめどなく涙を零しながら。

22/04/24(日)21:11:57

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じゃあミューゼシアが「ドレミ界や下界の皆さんに私の作った曲は受け入れられているのか不安なんです……」と彼女は体重を預けた。翼のように広がった髪が肩に潰れる。そして本物の翼、金色のそれがそっと我が身を包んだ。 「あなたの曲はいつも素敵ですよ。ドレミ界の妖精だってあなたの曲のお陰で生まれるわけじゃないですか。それはきっと受け入れられている証拠です」 どことなく気まずいのは、両の手の行き場がないからだろうか。天使は翼で人を包むというのに、人の手で彼女に触れるのはあまりにも恐れ多く思えた。あるいはピアニストの繊細な指に触れるということが。 「……良いものは心に響き、広がるのだと思います」 「そう、でしょうか」 ミューゼシアが顔を上げた。鉄のように鈍く輝く瞳が真っ直ぐに向いていた。 「そうですよ。そうだ、良かったら一曲演奏しませんか」 手も繋いだことはない。彼女の指は鍵盤を弾くために、魔法を奏でるためにあるのだから。 「では気晴らしに。……あの、お願いがあるのですが」 どこか甘さを漂わせた声で彼女は続けた。 「指が冷えてしまっているので……温めてくれませんか……?」 って言ったらどうすんだよ

22/04/24(日)00:48:26

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