虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

1 22/04/24(日)22:11:10 No.920456483

「それはフツーじゃない。その後戦うことになるボスがカワイソーだし。何より楽しくない。とりあえずボス行くから準備するし」 「……まぁ、そうだな。じゃあ10分位待ってくれ。アイテム錬成して薬草を強化するから」 「そのビンボーくさいのヤメてってば！ あたしの回復魔法あんだから良いでしょ！」 「ジョーダンがやられた時に狂戦士の俺は回復する手段がそれしか無いんだってば……」 そーいえばそうだった。 あたしは《神官》のクラスで、回復魔法で助ける戦わないタイプ。トレーナーは《狂戦士》ってやつで、紙装甲で攻撃力だけアホみたいに高い鈍重脳筋マン。でもなんでかアイテム錬成とかチマチマしたスキルはいっぱい持ってるからいろんな事が出来たりもしてる。狂ってるんじゃないの？ 「あまり時間もかけられないから3分で必要な分だけ用意して。次のボスの情報はあるんでしょ？」 「あぁ。町の全部の家に忍び込んで日記とか本とか全部見てきた。どうやら毒とマヒ、それから火の呪文を使ってくるらしい」 「……そのカッコウで漁ってたとか引くわ……」

2 22/04/24(日)22:12:09 No.920457028

トレーナーのカッコウは何でか大剣と皮の靴。皮の手袋だけで、あとはムキムキの体を出しっぱなしにしたパンツ一丁。 無課金プレイヤーでももっとさぁ……。 「仕方無いだろう。今のレベルなら防具つけても大して変わらない。むしろすぐ使わなくなる防具にお金はかけたくない。次の町で良い防具があったら買うよ」 「たかが数百ゴールドじゃん。その薬草買うお金を回せってば」 「駄目だ。なるべくお金は武器優先で次に雑貨だ。防具は最後」 考えてるんだか考えてないんだか分からねー。こんなにケチくさいとは思わなかったわ。てかいくらゲームでもロシュツはおさえろし。とにかく、今はボスに行くための準備をする。 トレーナーはゲーム下手なのか、アイテムも大量に買うし、あたしがやるわもう。毒とマヒでしょ……それなら魔法もあるし、予備もまぁ、薬10ずつは持ってけば大丈夫っしょ。 「と、そんな話をしている間に錬成完了だ。ま、これは保険だから使わないのが良いんだが。回復頼むぞ」 「トーゼン。任せろし」

3 22/04/24(日)22:12:47 No.920457392

そんなこんなでボス戦。 途中のダンジョンでナゾ解きめっちゃ頭使ったのにここでもそんなんだった。まずトレーナーが耐性なさすぎてすぐシビレてるし大変。次にあたしは回復だから、トレーナーを回復して自分も回復してでスゴく忙しい。 トレーナーもトレーナーで戦い方が下手くそだから、あたしが指示してやらんとどーにもならない。 「ぐえー！？ ジョーダンまたシビビビビ！」 「あああもう！ 回復するから！ で、シビレとれたら自分で回復して！ アイツ次頭ふったらただの攻撃だからそん時はアンタも攻撃！ あたしは回復する！」 「シビビビビ！」 変な返事はムシして、まずはトレーナーのマヒを取る。そしたらあたしはすぐにボスから離れる。逃げながらは魔法は使えないけど、アイテムなら動きながら使えるからトレーナーにはタゲとってもらいつつ自分で回復してもらう。 ……うん。あたしの予想どおり。でもボスの動きをよく見ないと。トレーナーは紙装甲のクセにボスのパターン読めてないから。

4 22/04/24(日)22:13:34 No.920457795

「トレーナー！ 次そいつが口開いたら後ろににげて！」 「分かった！ 後ろだな！」 「！ 来た！」 ボスが口を開いた。口からスゴいの出すんだけど、これが大きなスキになるからここで一気に──って！？ なんでボスの後ろににげないの！？ 「ぐえー！ ジョーダン痛い！ 後ろに逃げたのに！」 「あ」 あたしはそこで自分の言葉が足りないことに気づいた。 あたしが分かっていても、トレーナーも同じ事を分かっているとは限らない。あたしの言った後ろは『ボスの後ろ』だったけど、トレーナーにとっては『自分の後ろ側』だったんだ。 人に指示するのってこんなにむずかしいの……！？ や、それよりも今をなんとかしないとここまで来た努力がムダになる！ えっと、こーいうときは……！ まずトレーナーを回復してそれから……！ 「ウワーッ！？ 追加でノックバック食らって動けない！」 「だあああ！ ちょっと待ってろし！」

5 22/04/24(日)22:13:51 No.920457967

それから1時間。ゲームを終わりにしてVRウマレーター室の待合室で俺はジョーダンから流石に動きの悪さを指摘されていた。 結構それっぽく動けていたと思ったんだが……流石に駄目過ぎたか。 「トレーナー下手くそすぎ。もっとボスの動きよく見てよ～」 「そうは言ってもな……俺は至近距離で戦ってるから俯瞰……全体を見れなくて。でもジョーダンが頑張ってあれこれ指示してくれたからなんとか勝てたじゃないか」 「そーだけどさ……まぁ、あたしもたしかに指示のやり方下手でトレーナーにメーワクかけたし」 「迷惑なものか。あのゲームでボスの動きを良く観察し、分析して対策する。俺が出来なかった事をジョーダンが出来たお陰で勝てたんだ。俺はただパニックになってジョーダンに頼ってただけだ。この調子で頼むよ」 「ま、まぁ？ トーゼン若いあたしの方がデジタル系向いてるのは仕方ないから。でももっと敵からはなれてよく見るといいかもね」 「俺はまだ23で若い筈なんだが……」

6 22/04/24(日)22:15:00 No.920458609

兎も角、ジョーダンはあれこれ戦いやすいように指示してくれた。アイテムを使うタイミングだったり回復役と離れ過ぎても良くないとか。 後衛として戦況を見渡して把握していた彼女からの指摘はどれも納得するものばかりだった。今回は流石に俺の動きが悪過ぎたので、すぐそこの自販機で好きなものを買ってお詫びとさせてもらった。 しかし、ふむ。中々良い調子じゃないか。 「じゃあ、そんなんだから。あたし先にコースいってウォーミングアップしておくから遅れないでよ」 「分かった。すぐ行く」 ジョーダンが待合室から先に出ていき、俺も早く準備をしようと立ち上がる。しかし、ジョーダンが居なくなるのを見計らっていたのか、同じく待合室で休憩していたゴルシのトレーナーが話しかけてきた。 「よう、ジョーダンの。少し良いか？」 「おうゴルシの。どうした？」

7 22/04/24(日)22:15:21 No.920458813

「さっきあのVRのゲームの動きが悪いってアドバイス貰ってたけど、お前あのゲームもうクリア済みだろ？ しかも裸一貫《狂戦士》縛りプレイで」 「ああ。何人かのトレーナーと縛りプレイRTA対決してな。だからあのゲームなら大体分かるぞ」 「それ。なのに何でわざわざ下手くそのふりしてるんだ？」 「……ジョーダンには内緒だぞ？」 要はこれもトレーニングなんだ。 前々からジョーダンには観察眼を鍛えてもらいたく、時折トレーニングしているウマ娘をモチーフにネイルのチップを作って貰ったりしていたが、それだけではいずれ飽きがくる。 ならば、ゲームでそれを鍛えられないかと思ったんだ。

8 22/04/24(日)22:15:46 No.920459065

ジョーダンには後衛で戦況を俯瞰して把握してもらう。そして如何にして下手くそなお荷物《狂戦士》を効率よく動かせるかや、ボスのパターンを読んで対策してもらったり。または指示してもらったりする。 そうすることで、ゲームを遊んでいるだけなのに指示の仕方や物事を俯瞰して見てみる力を鍛えられるという寸法だ。 わざとジョーダンの指示を理解し間違えたフリをして、彼女にもっと分かりやすいように指示をさせるように誘導する等は結構楽しかった。 「成る程ねぇ。確かにゲームなら楽しみながら鍛えられる。海外じゃ戦闘機のゲームのプロに軍用無人機のパイロットをさせたりもするらしいし、理にはかなっているな」 「だろ？ 嫌々やらせるよりかは楽しい方がよっぽど良いさ。さて……じゃあ俺も行かなきゃだ。じゃあな」 「おう」 ……。 「……ジョーダンには内緒だけど、そもそもゴルシにも教えるなよ？ てか、誰にも言うなよ？」 「分かってるよ……」

9 22/04/24(日)22:17:42 No.920460133

ゲームでも色々学べることはあるよねって事でトーセンジョーダンにVRウマレーターを使用してもらいました

10 22/04/24(日)22:21:04 No.920462007

>「……ジョーダンには内緒だけど、そもそもゴルシにも教えるなよ？ てか、誰にも言うなよ？」 そういうことを言うと画面外にゴルシがいそうな気がしてくる！

11 22/04/24(日)22:36:15 No.920469979

続きがありそうな感じに見える

12 22/04/24(日)23:09:16 No.920487006

いやこういうことはゴルシは聞いてても黙ってる 別な頼み事のタネでゆすりに使う