22/04/24(日)00:05:27 トーセ... のスレッド詳細
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22/04/24(日)00:05:27 No.920078370
トーセンジョーダンのトレーナーがウマ娘に突如変わってから早3ヶ月。 女神の悪戯か、トーセンジョーダンが長い間抱えていた爪の問題はトレーナーが肩代わりするような形となって、今度はトレーナーを苦しめていた。 笹針の力でも爪を治す事は出来ず、2日に1回は笹針での治療(痛み止め)をしないと激痛で歩く事すら出来ない。それに笹針だけでなく、ウマ娘化による後遺症と偽り、少し離れた病院で爪を診てもらってはいるが良くなる気配はない。 結局、薬と笹針で痛みを誤魔化し、割れるのは最早鬱血してしまうギリギリまでテーピングで固めて抑えるばかり。 医者からは絶対安静と言われているがトレーナーは容認する筈もなく、また忙しさからかれこれ1ヶ月近く爪を診てもらっていない。 今日も医者からの忠告を無視して並走トレーニングを行っていた。 爪の問題から解放され、調子も良いトーセンジョーダンが目指すのはアルゼンチン共和国杯。既にその先、有馬記念への出走も考えていた。
1 22/04/24(日)00:06:07 No.920078695
「どうしたペースが落ちているぞジョーダン! 濡れたターフは初めてじゃないだろう!」 「そうだけどさっ……! うまく走れねぇん、だっ……てぁ!」 「コーナーでは無理にインコースを取ろうとするな! 転倒するぞ! 少し大きく曲がるんだ!」 「分かってる……っての!」 前日に雨が降ったターフコースでトーセンジョーダンが声を上げる。 レースは良バ場ばかりではないのでこういった足場の悪い場面を想定してトレーニングも行っていたのだが、トレーナーの予想よりもトーセンジョーダンが苦手としていた様で、酷く走り方に安定感が無い。 かえって走り方に変な癖を与えてしまうかと危惧したトレーナーは今走っているコーナーで1度休憩にしようと、トーセンジョーダンよりも前に行こうとスピードを上げる。その時だ。
2 22/04/24(日)00:07:52 No.920079447
「!」 右足に激痛が走る。まるで筋肉が千切れたと錯覚させる感覚とバクバクと唸る心臓が足に移動したかのような脈動。次の足を踏み込むまでの間に爪に何かあったのはすぐに察したものの、あまりの痛みに次の足を踏み込む際に力加減を誤ってしまった。 濡れたターフは当然滑る。結果、甘い踏み込みと、激痛を感じた右足を無意識に庇って体勢が崩れたトレーナーは最高スピードのまま転倒。全身を強打しながら10m以上転がった。 「トレーナーッ! 大丈夫!? だ、誰か! 救急車呼んで!!」 「……、ぁ……ぐ……」 そういった場面において、人は意外にも当事者程冷静になるものだ。 トレーナーは今後の展開で足の事が担当に露見する可能性を冷静に考えながら1度意識を手離した。
3 22/04/24(日)00:08:41 No.920079777
「トレーナーさん。私が何でここに居るか、お分かりですね?」 「……えぇ。安心沢さんは流石に喋ったみたいですね」 次に目が覚めた時、見知らぬ天井が本当に有るとは思わなかった。 病院のベッド色々と話を聞くと、どうやらあの転倒で盛大に転がったものの、軽い打撲程度で済んだらしい。 では何故たづなさんが怒気を孕んだ声音で俺に質問しているのか。それは医者からもツッコまれた足の事だ。 両脚は笹針の施術後で傷跡だらけ。いつの時代の戦士ですらこうはならなかっただろう。そして爪。全て割れていて、またちゃんとした治療もしていない為に指の殆どが壊死している。 人間の足の形である以上、走る際の爪先への負担は非常に大きい。ましてや爪に掛かる負荷は尋常ではない。 今回の転倒は遂にその爪先が限界を迎えてしまった事に起因する。 たづなさんが特に怒っているのは、その事を知っていながらも何もせず、並走トレーニング等を繰り返していた事によるものだ。 「どうしてそんな真似を」
4 22/04/24(日)00:09:28 No.920080148
「今彼女……トーセンジョーダンは長く苦しめられていた爪の問題から解放されてやっと自由に走れるようになったんです。そしてお世辞にも、それで苦しめられていた期間の遅れはまだ取り返ししきれていません。彼女はそれを分かってましたし、その分を次のアルゼンチン共和国杯までに取り戻すと宣言しました。ビッグなウマ娘になると。ならば、それを実現する為に我々トレーナーも頑張らなくてどうしますか」 「それがやり過ぎだと言ってるんです! 貴方のトーセンジョーダンさんへの想いは良く分かりました。でも、それでも先ずは自分を顧みないのでは意味がありません! 貴方はウマ娘にはなりましたが、その体はトーセンジョーダンさんと同じ適性ではないんですよ? ましてや爪の事だってあるのに。その結果が今の状態ではないですか! その無理のせいで、結果的に貴方はトーセンジョーダンさんにも迷惑をかけているんですよ!」
5 22/04/24(日)00:10:07 No.920080436
「分かってますよ! この体じゃどう頑張ってもマイルが良いところなのも! やり過ぎなのも! でも……駄目なんですよ……ジョーダンにもう爪の事で悩んで欲しくない……! アイツの代わりにそれを背負うことになった事を知られたくないんですよ……! 知ってますか? ジョーダンはバカですけど、周りに気を配れるし優しい娘なんです。……走れない辛さが無くなって、また走れる喜びが得られたとしたら……貴女ならどうですかたづなさん。分かるでしょう?」 「それは……」 たづなさんが言い淀む。……これ以上は彼女のプライバシーに突っ込んでしまう。 俺の目的はジョーダンが無事、笑って卒業し、俺の事も忘れるくらい夢であるネイルサロンに没頭してもらう事だ。学園を卒業すれば、すぐに俺との関わりと薄くなるだろう。その時まで、爪(これ)を隠し通せればそれで良い。 ここでたづなさんの過去についてとやかく言うべきではないのだ。
6 22/04/24(日)00:10:31 No.920080606
「……兎も角、医者からの提案は受けます。ちゃんと入院もします。ただ、この事は絶対に誰にも明かさないで下さい。ウマ娘化の弊害や脳へのダメージを考慮して安静にしているとでも言って誤魔化してもらえればそれで良いですから」 「提案を受けるという事は、貴方は走れなくなるんですよ?」 「……それは場合によります。世の中には義肢で走るウマ娘も居るんです。たかが両足の指が無くなった位で完全に走れなくなる訳でもないでしょう」 そう。俺の足の指はもう限界を超えている。 繰り返し割れた爪から菌が入っているし、無理なテーピングのせいで壊死もしている。このまま放置は流石に出来ない。だから切断する。それだけだ。 指程度なら、大体2週間もあれば退院は可能だ。 その間は申し訳無いが、友人のヘリ(ヘリオス)トレとゴルシのにジョーダンのトレーニングを監督してもらおう。元々こう言った場合に備えてメニューは用意してある。
7 22/04/24(日)00:10:48 No.920080714
「……変える意思はないと?」 「はい。そもそも、この事をあまり大事にするのは学園側としても好まないでしょう。俺だって、あんな小さな理事長に記者の前で頭なんて下げさせたくありません」 「ではこちらからも条件を。今後、また貴方が無理をして倒れた場合は今度こそ理事長や貴方の担当に報告します。場合によっては貴方をトーセンジョーダンさんから外す事も視野にいれます」 「それは──!」 「こちらも辛いですが、貴方も辛い筈です。そうならないよう、気を付けてください」 「……っ」 たづなさんはそう突き放すように言うと、踵を返して病室を後にした。 ただ1人、病室に残された俺は怒りからベッドの手摺をひしゃげさせていた。
8 22/04/24(日)00:11:16 No.920080910
トレーナーが転んで入院になって、あれから面会もダメって言われたからヤバイのかと思ってたけど、普通にテレビ電話とかするし、大事をみてアンセーにしてるって事だった。 入院中はトレーナーのマブダチトレーナーがカントクしてくれたし、メニューもあったからいつもよりちょっとやりにくい程度で済んだからよかったわ。 にしても、いつ退院なんだろ。トレーナー全然LANEの既読つかんしレスおそくて困るんだよね。 「ただま~」 トレーナー室は出入り自由になって、あたししか使わないんだけど、なんとなくそんなアイサツ。 「おう。お帰り」 「うぃ~」 そう。こんなやり取りもヒサビサで──
9 22/04/24(日)00:11:55 No.920081171
「ちょま!? なんだ帰ってきてんじゃん! お久トレーナー!」 「ただいも。元気してたか?」 「こっちのセリフだし! つか帰ってきたなら連絡よこせ」 「ごみんごみん」 「……?」 なんか、トレーナー変じゃね? なんて言うか、ちょっとヤせた? 「もしかして痩せたと思ってる? まぁ、その通りなんだけど。流石に殆ど寝てたからな」 「……体はもう大丈夫なん?」 「当たり前だろ? 2週間も要らなかったんだがな……ま、そんなとこだ。今日のトレーニングは終わりか?」 「まぁうん。一応メニューなくさないように置いとこうと思って」 「言い心がけだ。偉いぞジョーダン」 イスに座ってたトレーナーが立ち上がって前よりも小っちゃくなった手で頭を撫でてくる。
10 22/04/24(日)00:12:45 No.920081510
──なんだかその時の歩き方は少し変だし、目もなんかにごってるみたいな変な感じだったけど、あたしはなんでかシテキすることは出来なかった。
11 22/04/24(日)00:14:53 No.920082434
この前のTSの続きをふと書いてみましたけど、長くなりすぎた……
12 22/04/24(日)00:16:11 No.920083031
もっと書いてもいいんだぞ
13 22/04/24(日)00:16:55 No.920083321
覚悟決まりまくってる…
14 22/04/24(日)00:19:23 No.920084400
ウマ娘が走れなくなるって…
15 22/04/24(日)00:30:32 No.920089191
ほとんどバレてるようなもんじゃん…
16 22/04/24(日)00:39:14 No.920092813
しっかりバレた時がいよいよ怖くなってきた