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2019-11-26のスレッド一覧 5231件

月には兎がいると言うが、伝説とはいつも美しい虚構なのだ。月面を這いずり回るぴるす君の群れは、刹那苦しんでは息絶えてゆく。 断末魔は聞こえない。ここは静かだ。何十人分かの死体を一掴みして、太陽に投げ入れてみる。黒点が俄に翠色に輝いた。国産みの光だ。太陽には世界のはじまりがある。 思えば六方とは地球でしか意味を為さぬものだ。ここではあめつちの他に何もない。荒涼たる風、概念すら死す砂漠、ただ天地だけが遥か。ならばここは常世の国なのだ。いずれ撹拌されるのを待つ無限の海なのだ。 劫を重ねて幾星霜、五万四千六百人目のぴるす君が死を迎える頃、この砂漠の上にはあるいは梨園が築かれて、八億九千万回目の白紙の勧進帳が演じられるとき、この月の上に太陽から一人目のぴるす君が帰り着くだろう。 その身体は焼け爛れ、臭気は遥か冥王の彼方まで、涙は流れるまま枯れ果てて、誰もが君を打ち捨てる。だがぴるす君、知るがいい、虚ろな眼窩の見上げる先、久遠の暗闇、最果ての静寂、朽ち果てたボイジャーの向こうで、緑の法衣をはためかせ、誰かが君を待っている。 君たちは死してようやく出会う。だから今、生命を惜しむ必要はないのだよ。

19/11/26(火)00:14:48

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