ひどく疲れていた。
『天馬』を支えた名トレーナーに憧れてトレーナーを志し、職についてから五年が経った。
初めのうちはよかった。新進気鋭のトレーナーとして、若いウマ娘たちと共に純粋に夢を追う日々。
だが、自分に才能がないということを自覚するまでに時間はかからなかった。
本来なら輝けていたはずのウマ娘たちが泣いて学園を去っていくことを2,3度経験した頃、俺の心もまた疲弊していた。
ならばせめて努力でカバーできるようにと、家に帰っても、プライベートの時間にも最先端のトレーニングやメンタルケアの本等を読み漁る日々。だが、もはや評判の悪いトレーナーについてきてくれる物好きなウマ娘など居はしなかった。
自分はなんのために学園にいるのだろう。いや……なんのために生きているのだろう。
ふう、と重い溜め息を吐き出したとき。
「──なぁ、お兄さん」
そのウマ娘と出会った。
「ウチを……買わんか?」
21/06/28(月)22:45:08
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