ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
21/06/28(月)01:35:30 No.817837900
泥っす https://seesaawiki.jp/kagemiya/
1 21/06/28(月)01:39:41 No.817838902
しかしCCCも楽しみでこれは 続報が欲しい
2 21/06/28(月)02:06:26 No.817844672
妹がそこにいた。私の妹が。 実家のあるフランスの片田舎に駆けつけたそこに、私の妹が立っていた。自信たっぷりに。所在なさげに。 「………───ジゼル?」 我ながらなんて気の抜けた声だったろう。 向こうを向いていたジゼルは私の言葉を背中に受けて、ゆっくりと振り返った。 見たこともない表情───なのは当然だ。 だって、私はこの子とたった一度しか会ったことがないのだから。 あの日、私と同じくすんだ桃色の髪できょとんと私を見上げていた顔がそこにあった。 ただそれだけでじわりと目端に涙が浮かぶ。溜め込み続けたものが溢れかえりそうになる。 何度、あなたに首をかけて絞め殺す夢を見ただろう。何度、その夢を見るたびに胃の中のもの全てを吐き出しただろう。 私はあなたから全てを搾取する側の人間で、全てを搾取するべき側の人間で。当主として、あなたを奪い尽くす側の魔術師で。 「………ノア姉さん?」 だから、あなたに姉さんなんて呼ばれる資格なんて本当は無い。 ただあなたにそう呼びかけられただけで律していた感情がぐずぐずと溶け出していった。 涙を堪えるなんて無理だった。腰が抜けて、地べたにぺたんと座り込んでしまう。
3 21/06/28(月)02:06:44 No.817844728
「ごめ、ごめんなさい、私、わたし………!」 ジゼルが何も言わずに私を見下ろしている。涙と嗚咽が止まらない。 それが悲しみだけではないことに私は嫌悪した。私は…安堵している。魔術師としてそうあるべきではないのに。 「わたし、なれなかった…!あなたを当然のように使い潰すような魔術師にはなれなかった…! そうあれと育てられたのに、そうあれと育ったのに、ずっとあなたのことを気に病んでた…! ごめんなさい、ずっとどっちつかずな魔術師にしかなれなくてごめんなさい…! あなたのために、あなたを我が家の魔術のために使い尽くす覚悟も…。 あなたのために、あなたを何処か遠いところに逃がすような覚悟も…。 どちらも私にはできなかった…!本当に浅ましくて、情けなくて、中途半端な魔術師にしかなれなくてごめんなさい…!」 溜め込んでいた言葉が堰を切ったように溢れ出る。ああ、なんて恥ずかしい。 けれどジゼルは、私の妹は、そんな私に穏やかに微笑んだ。 「そっか───そうだったんだ。私にも、そんなふうに想ってくれる人はいたんだ。馬鹿だな、私」 そう言って私の妹は蹲る私の前にしゃがみ、私の頬に手を添えて言った。
4 21/06/28(月)02:07:24 No.817844861
「ありがとう。だからこれからはあなたの人生を生きて、ノア姉さん」 ───その時の出会いが、私とジゼルの最後…から二番目の出来事だった。