虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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21/06/28(月)00:09:50  6時... のスレッド詳細

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21/06/28(月)00:09:50 No.817811090

 6時から始まったコンサートが終わる頃には既に時刻は9時を回っていた  他の観客がゾロゾロと出口へ向かう中、俺と担当ウマ娘ライスシャワーは座席に座ったまま、人混みが捌けるのを待っていた 「楽しかったね、お兄さま!」 「ああ、そうだね」  満面の笑みを浮かべるライスを見て、俺は思わず笑みを溢した  今日の……というよりも、アイツのコンサートは基本的にMCが多く、歌が目当てなら少し物足りなさを感じてしまうような構成だったが、ライスは満足してくれたようだ 「えっと……あの『関白宣言』って歌あったでしょ? あれ、最初は酷い歌詞だなって思ったけど、最後ら辺になったらすごく優しい歌詞になって……」 「あの歌いいよな。俺好きだよ」 「ライスも好き!」  そんな風に感想を言い合っていると、いつの間に出口付近の人混みも無くなっていた  あれほど笑い声や拍手に満ちていたコンサートホールがやけに静かで、物寂しい雰囲気を感じた

1 21/06/28(月)00:10:10 No.817811227

「それじゃあ行こうか」 「うん」  俺はライスと共に立ち上がると、出口へと向かった 「お兄さま、今からお友達の場所行くの?」 「もちろん。今ならまだ楽屋に居るだろうし。折角だし付いてくる?」 「うん、行きたい!」 「それじゃあ一緒に行こうか」  エントランスに出て受付のスタッフに楽屋までの道を尋ねる  彼は一瞬怪訝な表情をしたように見えたが、追っかけの類だと思ったのか「多分会えませんよ」と笑いながら道を教えてくれた  昔から人を引き寄せる話術と雰囲気を持っていたアイツには、きっと追っかけが多いのだろう。耳を澄ませると、ホールの外でワイワイと騒ぎ立ててアイツが出てくるのを待っている人々の喧騒が聞こえてきた

2 21/06/28(月)00:10:29 No.817811374

 ホールの入り口脇から地下へ続く通路を進んでいると、壁に関係者以外立ち入り禁止と書かれた貼り紙が貼られ、テープで区切られたスペースに辿り着いた  細長い通路には大勢のスタッフが忙しそうに行ったり来たりしている  俺は申し訳なく思いながらも、一番近くにいたスタッフに声を掛けた 「すみません、私は佐田さんの友人の的場と申します。今日は彼に誘われてコンサートに来て、一言挨拶を申し上げに来たのですが……」  そう言うと、彼は驚いたように目を見開いた 「ああ、あの的場さんですか! それに、ライスシャワーさん! 話は彼からお伺いしていますよ」 「本当ですか?」 「はい、自慢のご友人だと仰っていましたよ。それでは中へどうぞ、彼は一番手前の楽屋に居ますので」 「分かりました、ありがとうございます」  スタッフに会釈して、俺とライスはテープの下を潜り抜けて楽屋の前に向かった

3 21/06/28(月)00:11:07 No.817811603

『さだまさし様』と書かれた貼り紙が貼られた鉄製のドアをノックすると、中から声が聞こえてきた 『はい、どうぞ』  壇上よりも少しだけ低い声に背中を押されて楽屋のドアを開けると、アイツは巨大な鏡の前に置かれた椅子に腰掛けて携帯電話に視線を落としていた 「久し振りだね、雅史」  微笑んでそう言うと、アイツはバッと顔を上げて、昔と寸分変わらぬ満面の笑みを浮かべた 「均! やっぱり来てくれたんだね、ステージの上から見えてたよ」 「ああ、すごく良いコンサートだったな。俺もライスも楽しませて貰ったよ」 「そりゃよかった……お、もしかして隣のお嬢ちゃんがライスシャワーちゃん?」  アイツは俺の隣に立つライスに気付くと、屈み込んでライスの顔を覗き込んだ 「は、はい! ライスシャワーです!」

4 21/06/28(月)00:11:31 No.817811736

「初めまして。君のトレーナーのお友達の佐田です。先日の宝塚記念観てたよ、素晴らしい走りだったね」 「あ、ありがとうございます!」 「次はどのレースを走る予定なのかな?」 「えっと……確か有馬記念、だったよね。お兄さま」 「うん、そうだよ」 「有馬記念っていうと……年の瀬か。それまではずっと調整なんだね。時間があったら、またレース場まで行ってみるよ」  そう言ってアイツは穏やかに微笑んだ  学生時代、高校受験に失敗して失意のどん底にあった時とは、まるで別人のような朗らかな笑顔に俺は思わず目を奪われた

5 21/06/28(月)00:11:53 No.817811858

 その後もライスとアイツは意気投合したようで、アイツの軽快な語りにライスの緊張も次第にほぐれていった  彼等のやり取りを側から眺めていると、不意に楽屋のドアがノックされ、その向こう側から声が聞こえてきた 『佐田さん、そろそろ撤収のお時間ですけど、もう出れますか?』  若い男性の、アイツのマネージャーらしき人の声だった 「ん? おお、もうそんな時間か!」  アイツは両膝をパンと叩いて立ち上がると、コンサートで使ったギターやバイオリンを急いで片付け始めた。話に熱中するあまり、撤収の準備はまったく終わっていなかったようだ 「ああ、ごめんね二人とも! 本当はまだゆっくり話したいけど、時間がちょっと無くなっちゃった! また今度会おう! 均もライスシャワーちゃんも元気でね!」  そう言い残すと、アイツは両脇に楽器ケースを抱えて、慌てた様子で楽屋を飛び出して行った

6 21/06/28(月)00:12:12 No.817811978

「……佐田さん、面白い人だったね」  ライスがポツリと漏らした呟きに、俺は深く頷いた 「ああ、アイツは昔からあんな感じなんだ」  アイツは高校時代、朝ドラのリアルタイム視聴にハマって毎朝高校遅刻してくるようなヤツだった  ある意味破天荒と言うか。そんなヤツだったから、今こうして歌手として大成しているのだろう 「ライス、またあの人と会ってお話したいな」 「だね。また時間があったら、コンサートに連れてきてあげるよ」 「本当!?」 「ただし、来月からの夏合宿が終わってからね」 「うん! ライス、頑張るね!」  今度は自分でチケットを確保してみるか  嬉しそうに尻尾を揺らすライスを眺めながら、俺はそう思い立った

7 21/06/28(月)00:13:21 No.817812404

さだまさし来たな…

8 21/06/28(月)00:14:05 No.817812656

> 的場均 1990年代初頭の『さだまさしのセイ!ヤング』では競馬予想を展開する度に「的場(が来る)!」と断言していた(ちょうど当時の的場はライスシャワーに騎乗し、数々の重賞レースを制している時期だった)。的場が通算一千勝を達成した際にはさだが作った「ひとりぽっちのダービー」を的場が歌ったCDが作られ、関係者に配布された。

9 21/06/28(月)00:14:23 No.817812761

元ネタあったんだ…

10 21/06/28(月)00:14:37 No.817812848

引用ミスった

11 21/06/28(月)00:16:16 No.817813456

imgやってなかったらさだまさしと的場騎手のエピソードを知ることはなかったかもしれない

12 21/06/28(月)00:22:56 No.817815883

的場均視点の怪文書初めて見た

13 21/06/28(月)00:29:28 No.817818236

さだまさしが出てくる怪文書初めて読んだ

14 21/06/28(月)00:31:16 No.817818905

>さだまさしが出てくる怪文書初めて読んだ 確かに本人出るのは初めてか…

15 21/06/28(月)00:36:19 No.817820650

まさか続きが来るとは思わなんだ

16 21/06/28(月)00:47:32 No.817824255

良い雰囲気の文章だ...

17 21/06/28(月)00:57:37 No.817827404

こういう繋がりがあったとは知らなかった

18 21/06/28(月)01:03:16 No.817829110

昨日たまたま関白宣言と関白失脚聴いたけどこう…引き込まれるね

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