最初の異聞帯での任務を終え、漂白された荒野を駆けるシャドウボーダー。
荒野に佇む滅びゆくロシアを眺めながら、汎人類史最後の要であるマスターはため息をついた。
「まだ精神的に辛いならムニエル氏に対処させようか?君には休む資格があるからね」
モニターから聞こえてくるダヴィンチの声を聞いたマスターは重々しくもしっかり立ち上がった。
「ううん、カドック・ゼムルプスの尋問は予定通り私がやる」
「本当に無茶はいけないよ、今の君は相当堪えてるはずだし」
「大丈夫だって、心配性だなあダヴィンチちゃんは」
いつも通りのへらっとした笑顔を見せるが彼女の内心は、穏やかとは到底言えない。
異聞帯を排除し異なる世界の民を犠牲にしたことで彼女は心身ともに疲弊していた。
その精神のゆらぎを見逃すほどカドックは魔術師として未熟ではない、そこに浸け込み彼女を謀ろうと企んでいるのは確実。
アナスタシアを奪われたことで復讐に燃えている彼にその機会を与えてはならない…
それはカドックのためでもあり、彼に託したアナスタシアのためでもある。
18/04/14(土)23:45:37
107レス