『意識の回復は絶望的でしょう』
そんな言葉、言われたときにはまるで現実味がなかったのに。
いつも通りの日常が壊れた日、あの子が帰ってこなくなった日、授業もなにもかも放り出して向かった病室で医師が告げた言葉。
そんなわけがない。あの子のことだからすぐに帰ってくる。そう思って三日が経ち、一週間が経ち、一ヶ月が経ち――半年が経った。
「そんな腕じゃ木登り……できないじゃん……」
死んだように眠り続けるあの子の腕。インドアの私よりも細くなってしまった腕。私は木登りのプロだから、とあの子は女の子なのに自慢げに力こぶを見せつけてきて、私はそれを見て呆れて笑って……。
「うっ……ふぐっ、うぅぅぅ……」
ひどい。こんなのひどいよ。
あの子の命が喪われていたのなら、悲しみの果てに乗り越えて生きていこうと思えたかもしれない。
でもあの子はここにいる。笑顔の似合う丸顔がすっかり痩せこけて、私の名を呼んでくれるその唇が動くことがなくても、ここにいるのに!
ここにいるのに……何度呼んでも、いくら願っても、言葉を返してくれることはない。
20/04/26(日)23:45:11
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