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20/04/26(日)23:54:44 ねこ優... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1587912884464.png 20/04/26(日)23:54:44 No.683284540

ねこ優季のお話を考えました お時間ありましたらお付き合いください

1 20/04/26(日)23:55:06 No.683284676

大洗女子学園艦にたちの悪い伝染病が流行り始めたのが、およそ一月ほど前のことである。 ウィルス性で、かかっても発熱が少し長く続くだけのそれほど重篤性のないものなのだが、 感染力が強いことと特効薬がないことから、大洗女子生徒会は学園の休校と住人全体への外出自粛を要請。 もちろん戦車道の練習も、西住みほ隊長からのネットを介した連絡で、しばらくお休みが宣言された。 外出自粛に対するチームメイトの反応はさまざまである。 ランニングを朝の四時ぐらいにずらして各個に行うようにしたバレー部。 本が買いに行けないとぼやきつつ、これを機にネット通販に手を出した歴女。 積んでいたレースゲーにどっぷり漬かっている自動車部。 各々それなりに不自由な思いをしながらも、新しい生活スタイルに少しずつ順応し始めていた。 そんな中、アリクイさんチームは特に変わることのない生活を送っていた。 もともと買いだめ癖があり、休日は一歩も家から出ないことも珍しくない彼女たちである。 むしろ西住隊長はじめ戦車道履修生にネットを介した効率のよい連絡方法を指南したり、いつもより少しだけ積極的な日々を送っていた。

2 20/04/26(日)23:55:56 No.683284950

◆■◆ カーテンから差し込む明かりが強くなり、ねこにゃーは夜を徹したことに気づく。 PCウィンドウ端の時計は午前十時を差している。最後にPCから離れて飯を食ったのが、確か昨日の午後十時。 状態を「一時退席」にして、ぼきぼきと鳴る膝を伸ばす。半開きの目でぐるりと部屋を見回すと、外出自粛需要にかこつけて安売りしていた商店街の総菜弁当が積まれているのを見つけた。 がさごそとビニールを開けてもそもそと弁当を口に運ぶ。まだサクサク感の残っているコロッケに小さな感動を覚えつつ、俵型の米を食んでソースの味を和らげる。 しば漬け、からあげ、ナポリタン、マカロニサラダ。一通り食んで胃に落とし込むと、徹夜の疲労がじんわりと身体にのしかかった。 テーブルの上に転がっていた飲みかけのペットボトルを口にすると、ゲームに最適化されていた自分の精神が少しずつ「人間」に戻っていくのが感じられた。 換気をしよう、とねこにゃーは思った。

3 20/04/26(日)23:56:37 No.683285162

カーテンは昨晩から閉めっぱなしだし、そのカーテンすら端の方に埃がまとわりついている。窓なんて、最後に開けたのはいつの事だっただろうか? 学校のない生活はゲーマーにとって天国ではあったが、反面、外界に触れるタイミングを見失ってしまうというのが悩みの種でもあった。 弁当のごみをがさごそとビニールにしまい、のっそりと立ち上がるとネコの絵のカーテンに手をかける。 シャッとカーテンを開ければ、部屋の照明やディスプレイの光とは比べ物にならない強烈な光が差し込んできた。 毎日あんなにも光を放って、太陽は疲れたりしないんだろうか……。 そんな阿呆なことをぼんやりと考えながら、ねこにゃーは窓を開けてベランダに出た。 クロックスに素足を差し込んでベランダに立つと、Tシャツの身にはきんと冷える4月の朝の風が体をなでる。寒さに両肩を抱き、慌てて部屋に引っ込むと着古したどてらを羽織った。

4 20/04/26(日)23:57:17 No.683285390

ベランダでどてらを二、三度たたいて埃を落とし、欄干にもたれて朝10時の街並みを眺める。 どんな解像度のCGでも再現しようのない、脳という最高のコンピューターが見せるリアルの景色である。身に堪える寒さも、まぶしすぎる日光も、決して悪いものではない。 しばらくねこにゃーは眠い目を瞬かせながら、ぼうっとして、景色を味わっていた。 外出自粛を感じさせない清々しい青空と、家々の屋根。少し目線を下げれば、人っ気のない道路。向かいのマンションには自分と同じようにベランダに出て外気を味わう人が一人、二人。 それからマスク姿の人間が何人か、通りを歩いているのが目に入った。外出自粛とはいえ最低限食料品の買い込みなどは認められている。 ふと、そのうちの一人が目に止まる。 ほかの通行人と比べて一回り小さな、黒髪のショートヘアの人影である。小さな顔を半分も覆うような白いマスクをつけて、体に見合わない大きなビニールを下げて歩いていた。

5 20/04/26(日)23:57:47 No.683285551

はっとして、思わず体ごとその少女に向ける。 大洗女子風紀委員──いや違う。そど子さんたちならもっと荒々しい。 今にも手折れそうな女性らしさのある様相。それはウサギさんチーム装填手、宇津木優希ちゃんに相違なかった。 ひとりで歩いているところを見るのは珍しい──思わずねこにゃーはその姿を目で追う。 くりくりとした目、小さく丸い肩、ちょこんとした小柄な身体に、きゃぴきゃぴした女子高生らしい仕草。瓶底眼鏡にオタクファッションがデフォルトの自分とはかけ離れた存在で、またそれゆえにねこにゃーにとって彼女は、ひそかな憧れの的でもあった。 どうしようか、ここからでも、声をかけたほうがいいんだろうか。 でも声をかけたところで何を言えばいいんだろうか。 ベランダであれやこれやと逡巡しているうちに、ふと、優季の視線が上を向いた。 ぱちり、と音がして視線がぶつかる。 マスクと前髪の間で少しだけ覗く目が、ねこにゃーの姿を確かにとらえていた。

6 20/04/26(日)23:58:43 No.683285841

ねこにゃーの頭を占めるあたふたは一層大きな波になる。 ど、どうしよう。何かしなきゃ。 挨拶したほうが。でも結構距離もあるし、変に大声出しても迷惑かもしれないし……。 怒涛の勢いで押し寄せる焦りと迷いは特にいい閃きを与えてくれるはずもなく、手やら顔やらをせわしなく動かし回るばかり。そんな内心を知ってか知らずか、優季はにっこりと目元を柔らかく細める。ぴしり、と石像のように固まってしまったねこにゃーに、優季は特に声をかけるでもなく、ただひらひらと手を振った。 マスク越しで表情は分からないが、目元から笑みを浮かべていることは分かる。 戦車道の練習の中で何度も見せる、少女らしい愛くるしい笑み。 彼女は手を肩のあたりまで挙げてひらひらと、ねこにゃーただ一人に向けて振っていた。 どきどきと心臓を高鳴らせながらも、ねこにゃーは慌てて手を振り返す。 高く掲げて、ぶんぶんと振るう。こんにちは。会えて嬉しい。今日もかわいい。元気にしてる? 胸の底から湧き出るいくつもの感情を表すように、全身でぶんぶんと。

7 20/04/26(日)23:59:00 No.683285933

優季は始めこそ控えめに手を振っていたが、ねこにゃーの手の振りようを見てくすりと笑みを深めたようだった。 そして、対抗するよう手を高く掲げてぶんぶんと振る。自分の動作に呼応してくれたのが、何故だかねこにゃーには妙に嬉しかった。 会話はなかった。やがて優季は振り向き振り向きしながら、荷物を持って帰路を進んでいく。 ねこにゃーの胸には春の萌芽のような小さな明かりが灯っていた。ただチームメイトと会い、手を振りあう。そんな些細なことなのに、ゲームのレベルアップよりも少しだけ大きな幸せを感じてしまう。 三階のベランダから見た優季の笑顔を噛み締めるように思い出し、少しばかり暖かい気持ちに浸っていた。 それにしても、やっぱり優季ちゃんはかわいいにゃー。 そんなことを思う。人に会うわけでもない、ただの買い物なのに、服も髪形もちゃんと整ってて、いつもと同じくらいかわいくって……。 そこまで考え、はっと気づく。

8 20/04/26(日)23:59:45 No.683286175

「……ん゛に゛ゃあああああーーーっ!?」 尻尾を踏まれたような悲鳴を上げ、ベランダから転がり込むように部屋に戻る。 ぴしゃりとカーテンを閉めてどたばたと洗面台に駆け出し、ひびの入る勢いで洗面台を掴むと鏡に映った自分をにらみつける。 徹夜明けである。 髪はぼさぼさ、肌はボロカス、目の下には大きな隈。 ほつれたどてらを身に纏い、その下には完全部屋着用のネタTシャツ。ドイツ陸軍の名将が本を「読ンデル」イラストがでかでかと胸を飾っていた。 ぴしり、と洗面台にひびが入るほど強く握りしめ、やがてねこにゃーはそのままへなへなと崩れ落ちる。 馬鹿みたいにぶんぶんと手を振っていた二、三分前の自分をぶん殴ってやりたかったが、既に後の祭りである。 「うあ、あああ、あああああ……」

9 20/04/27(月)00:00:06 No.683286300

しばらく洗面所に蹲り身悶えしていたねこにゃーだが、やがてがばりと起き、どてらとクソTシャツを脱ぎ捨てて素っ裸になる。 そのままシャワー室に足を踏み入れようとして……パソコンの「退席中」を、ログアウトに変更。ずんと疲労や眠気がのしかかる体を恐るべき羞恥心で動かし、顔を真っ赤にしながらシャワーを浴びた。 「ちゃんと生活しよう、ちゃんと生活しよう、ちゃんと生活しよう……!」 ぶつぶつと呟きながら汗と埃とを流していく。 外出自粛解除の見込みは、未だ立っていない。 だけどちゃんと毎日夜寝て、朝起きて、そして寝る前と起きた後はシャワーを浴びよう。 部屋で着るものも、もうちょっとだけ考えて選ぼう。 ねこにゃーは人知れず、自分に誓いを立てるのだった。 ……それから、毎日朝の十時ぐらいに、ベランダに出て日光を浴びよう。とも。

10 20/04/27(月)00:00:22 No.683286392

終わりです お付き合いいただきありがとうございました

11 20/04/27(月)00:05:14 No.683287938

渋で描いてる人以外のねこ優季初めて見た

12 20/04/27(月)00:05:34 No.683288030

>優季は始めこそ控えめに手を振っていたが、ねこにゃーの手の振りようを見てくすりと笑みを深めたようだった。 >そして、対抗するよう手を高く掲げてぶんぶんと振る。自分の動作に呼応してくれたのが、何故だかねこにゃーには妙に嬉しかった。 かわいくていい…

13 20/04/27(月)00:09:25 No.683289193

おいおい乙女か 乙女だったわ

14 20/04/27(月)00:20:21 No.683292498

来たのか!

15 20/04/27(月)00:30:30 No.683295491

>本が買いに行けないとぼやきつつ、これを機にネット通販に手を出した歴女 「注文し過ぎもんざ!」 「イタリアから航空便で取り寄せるのはやり過ぎぜよ」 「エルヴィンだって神保町から『週間総統地下壕を作る』全556号揃いで買ったじゃないか!」 「これで我等の来月の小遣いはゼロだな…」

16 20/04/27(月)00:31:25 No.683295789

宇津にゃーいいよね…

17 20/04/27(月)00:33:27 No.683296435

ねこにゃーはまずトチロー眼鏡を外してコンタクトにするべきだと思うの…

18 20/04/27(月)00:35:31 No.683297067

>ねこにゃーはまずトチロー眼鏡を外してコンタクトにするべきだと思うの… 違 ク

19 20/04/27(月)00:37:25 No.683297613

>ドイツ陸軍の名将が本を「読ンデル」イラストがでかでかと胸を飾っていた 酷い…

20 20/04/27(月)00:38:32 No.683297986

贅沢を言うけど優季ちゃん視点のお話が欲しい

21 20/04/27(月)00:39:48 No.683298369

>そど子さんたちならもっと荒々しい ちょっとそれどういうことよ猫田さん!!1!

22 20/04/27(月)00:45:21 No.683300017

このお話は普段乙女心に無頓着なねこにゃーが可愛い後輩に見られることに気付いて、今までたまり表に出なかった乙女心に気づくところがとても可愛いくて描写でクスリとさせるところがとても良いよね…と思いましたよ私は

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