天気の絵描きたちはその名に違わず、空に天気を描くのが仕事だ。
それぞれがそれぞれの担当を持ち、僕は曇天。
とは言え雲全般を任されており、雨にも雪にも青天にも呼び出されるのが実情だったりもする。
今日の仕事はある山に描く笠雲。
何やら神聖な霊峰らしく、そういう仕事は大体緊張と責任感の裏返った恐怖に押しつぶされそうになる。
「スレット、貴方なら出来ますよ」
虹天使はいつも簡単そうにそんなことを言う。
天気の天使はそれぞれの天候を担当している。
一つの天気が一つの色。七つの天気は七つの色、一つの虹。
そしてその七色を統括するのが虹天使、僕らの長。
「はい、アルシエル様。頑張ります」
一つにして七つの彼女。七つにして一つの彼女。
虹天気アルシエルはいつも僕に優しく微笑んで、背を押してくれる。そんな言葉を掛けられたのなら、前に進むしかないだろう。
アルシエル様の見たい空が僕の見たい空だから。
空は澄み渡り青く、まばらに浮かべた雲の白色に一層爽やかな印象を受けた。地平線を隠す遠くの山々の一つ、森羅の霊峰。
17/11/02(木)23:55:12
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