虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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    17/11/02(木)00:35:54 No.463014361

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    1 17/11/02(木)00:36:09 [1/5] No.463014397

    10月の終わり、アンツィオ高校の宿舎はいつも以上に賑やわっていた。 「行くぞお前ら!トリック・オア・トリートだ!足りないおやつは巻き上げろ!」 先頭に立つのは巻かれたツインテールを揺らしながら、ドゥーチェに借りた教鞭を振りかざすペパロニさんである。 そんな威勢のいいペパロニさんを先頭に、思い思いに仮装をした一年生たちが後を付いていく。 私とドゥーチェはそんな皆を見送り、寮へと戻る。 「こちらも始めようか」 「はい。タネはもう用意してありますから、後は形を決めて焼くだけですね」 「すまないな、お前も愉しめばいいのに手伝わせて」 「いえ、私は楽しんでる姿を見てるのが好きですから」 「そうか?まあ私は助かるからいいけれど…ところでペパロニは何で私のコスプレなんかしてたんだ?」 「仮装したかったそうです。髪もロングのウィッグを借りてきて、私がセットしました」 「もうじき本当のドゥーチェだろうになんだってそんな…」 「ドゥーチェじゃなくて、憧れのドゥーチェ・アンチョビになりたかったんじゃないでしょうか」 ドゥーチェは照れ隠しなのか顔を逸らし、「そろそろ始めるぞ」と言いながら厨房へ歩き出す。

    2 17/11/02(木)00:36:24 [2/5] No.463014454

    冷蔵庫に寝かせていたクッキーの生地を出し、絞り袋へと移す。 量にばらつきが出ない様に気をつけながら金型に合わせて生地を練り出し、油が塗られた天板へと乗せて行く。 その単純な作業を二人で繰り返し、焼きあがったクッキーを袋に詰める。 二時間もしないうちに人数分の袋を用意し終えた私達は、余った生地で自分自身が食べる用に思い思いの形にして焼き上げる。 「こんなもんか。人数分はちゃんとあるな?」 「はい、ちゃんと揃ってます。喜んでもらえるといいですね」 「せっかくのハロウィンだし、驚かせたい気持ちの方が強いけどな」 「きっと上手くいきますよ。こっそり用意してましたし、名付けてトリック&トリート作戦ですね」 「生地を見つける目ざとい奴が居なかったのが救いか…じゃあ、とりあえず戻るのを待とうか」 「見た目は変えなくていいんですか?」 「変えたらあいつらがわからなくなりそうだし…って言うか髪で遊びたいだけだな?」 「遊んだりしませんよ、いつも本気で取り掛かってますから」 そんな雑談をしながら洗い物も終え、クッキーも粗熱が取れた頃。 両手いっぱいにお菓子を抱えた戦車道履修者の皆が扉から入ってきた。

    3 17/11/02(木)00:36:39 [3/5] No.463014510

    私はクッキーの入った袋を紙袋に入れ、隠しながら皆を招き入れる。 「姐さん!見てくださいよ!大量っスよ!」 ペパロニさんだけでなく、一年生たちも自分の手柄を誇る様にドゥーチェの使用するテーブルの上にお菓子を並べる。 「よーしお前たちよくやった!これで冬の間のおやつは確保出来たな!」 わぁっ、と湧き上がる一年生たちとペパロニさん。 「長期間保存の効くおやつは全て残しておくこと!今日食べるのは日持ちしない生菓子だけだぞ!」 そこまで聞くと、今度は「ええ~」という不満の声があがる。 「姐さん、せっかく皆で手に入れたんスから食べちゃいましょうよ」 一番食い下がってきたのはペパロニさんだった。 しかし、ドゥーチェも簡単には折れない。 「P4の修理もあるから駄目だ。無駄遣いしたら来年使えないだろう」 食べたい気持ちも強く反論したいものの、修理費用を得るまで先が長い事も理解しているペパロニさんは口をもごつかせるだけで言葉を発せない。 「その代わり!お前たちに渡す物がある!」 ドゥーチェが続けて言ったその言葉に、室内は静まり返った。

    4 17/11/02(木)00:37:07 [4/6] No.463014621

    「カルパッチョ。袋を」 私は足元に隠しておいた袋を持ち上げ、ドゥーチェの前に置く。 「皆が頑張ってくれていた事を知っているカルパッチョと一緒にクッキーを用意しておいた!全員分あるから受け取る様に!」 わあっ、と湧き立ち、皆の目が輝き出す。 「ええっ、姐さんいつ準備してたんスか!?ねぇカルパッチョ、私達の部屋には置いてなかったよね?」 「どうでしょう?これもハロウィンの戦利品かもしれませんよ?」 私がいたずらっぽくそう伝えると、ドゥーチェは堪えきれず「ふふっ」と笑いを漏らしてしまう。 「驚かせる事が出来たな。イタズラとお菓子、両方をお前たちにプレゼントだ!」 「じゃあ皆さん、ドゥーチェから手渡ししますから並んでくださいね」 最初に受け取ったペパロニさんの後ろに綺麗な列を作り、目を輝かせながら受け取る一年生たち。 「ありがとうございます」とお礼を言った後に横にずれた一年生たちがドゥーチェコールを始め、受け取り終えた一年生たちがコールに参加をしていく。 私はそんな光景を見ながら、ふとペパロニさんが静かな事に気が付く。 「うめぇー!」 そのペパロニさんは集団から外れ、一人クッキーを食べていた。

    5 17/11/02(木)00:37:24 [5/6] No.463014672

    ドゥーチェは全員に食後の歯磨きを厳命し、小さなお祭り騒ぎはお開きとなった。 ドゥーチェは私室へと戻り、私は一度自室に戻り櫛と小さな袋を手に私室へと入る。 「あー、疲れた。まさかあんなに喜んでもらえるとはな」 ドゥーチェは椅子に座りながら背筋を上に伸ばし、そうこぼす。 「やった甲斐がありましたね。それじゃあ髪を解きますね」 「ああ、頼む」 それから今日の事を中心に雑談をしながら髪を解き、ヘアオイルを伸ばしていく。 「はい、終わりましたよ」 「ありがとう。いやーしかし無事に終わって良かった。慣れないイベントだからアンツィオで上手く行くか心配だったんだ」 「どういたしまして。ペパロニさんの先導もあって皆楽しんでましたね」 「あのお菓子の山をどうやってもらったのかは心配ではあるが、とりあえず今日は楽しんでおこう」 髪を解いたドゥーチェはベッドに腰をかけながらそう答える。

    6 17/11/02(木)00:37:39 [6/6] No.463014720

    一仕事を終え休んでいるドゥーチェに私は小さい袋を出す。 ドゥーチェは目線で「これは?」と伝えてくる。 「ドゥーチェは何も貰えてないじゃないですか。だから、私から驚かせる為のイタズラです」 袋を開けて中に入れておいた飴玉をひとつ取り出し、口に含んだドゥーチェは満足そうにコロコロと転がす。 「ありがとう。こんな時はどう答えたらいいんだ?」 「ハロウィンなんですから、ハッピーハロウィンでいいですよ」 「そうか、ハッピーハロウィン。じゃあ私からもトリックだ」 そう言うと、ドゥーチェも引き出しから袋を取り出す。 「ありがとうございます。案外考える事は同じなんですね」 中に入ったキャラメルを取り出し、私もひとつ口に含む。 「それだけ私の指導が浸透しているということかもしれないぞ?」 わざとらしく胸を張り冗談を言うドゥーチェを見て、私は声を出して笑いだす。 「ハッピーハロウィン」 お互いにもう一度そう伝えあい、和やかに笑いあった。

    7 17/11/02(木)00:38:16 No.463014846

    途中で増えた…!?

    8 17/11/02(木)00:38:51 No.463014985

    分母は増えるもの

    9 17/11/02(木)00:40:28 No.463015334

    いい…みんなかわいい…

    10 17/11/02(木)00:41:09 No.463015472

    アンツィオの生徒は毎日が楽しそうだな…

    11 17/11/02(木)00:41:10 [sage] No.463015476

    >途中で増えた…!? >分母は増えるもの 割りとよくやらかすひとです…

    12 17/11/02(木)00:43:17 No.463015936

    久しぶりにみれた 今回もよかった…

    13 17/11/02(木)00:45:03 No.463016252

    やっぱりドゥーチェはアンツィオのお母さんだと思う

    14 17/11/02(木)00:47:06 No.463016617

    このスレ画をどれ程待ち望んでいた事か 身体はもういいのかい?

    15 17/11/02(木)00:50:44 [sage] No.463017209

    >このスレ画をどれ程待ち望んでいた事か そこまでの頻度じゃないけどそう思ってもらえるのはありがたい… >身体はもういいのかい? 波はあるけど落ち着いてはきてるよ!次の診察次第で軟膏も処方終わるかもしれない

    16 17/11/02(木)00:52:12 No.463017457

    髪を解いた時のドゥーチェめっちゃ美人なんだろうな…カルパッチョの役得か

    17 17/11/02(木)00:53:15 No.463017607

    偽ドゥーチェはボインちゃんだから簡単に見分けが付くな…

    18 17/11/02(木)00:53:56 No.463017718

    >そのペパロニさんは集団から外れ、一人クッキーを食べていた ペパロニはちょっと涙ぐんでいると思う

    19 17/11/02(木)00:54:36 No.463017830

    増えた分母こそがトリックだったと

    20 17/11/02(木)00:55:24 No.463017950

    戦車の名前がP4になっとるな…

    21 17/11/02(木)00:56:19 No.463018073

    >ドゥーチェじゃなくて、憧れのドゥーチェ・アンチョビになりたかったんじゃないでしょうか ここ好き

    22 17/11/02(木)00:56:34 [sage] No.463018104

    >戦車の名前がP4になっとるな… mjk mjd フォルダに入れる方では修正しとくんぬ ありがたい

    23 17/11/02(木)01:13:34 No.463020668

    >P4の修理もあるから駄目だ。無駄遣いしたら来年使えないだろう おのれ格言キューリ!!

    24 17/11/02(木)01:17:45 No.463021278

    いい...

    25 17/11/02(木)01:19:36 No.463021561

    いい話が読めた これで今夜も安らかに眠れる

    26 17/11/02(木)01:24:31 No.463022331

    賑やかだし楽しい… でも少しだけ淋しさがあるよね…来年はチョビがいない事をペパロニが実感してそうで だけどそこも含めて暖かい話に仕上げてるのはさすがだと思う 今回も良かった また書いて欲しいけど無理はしちゃダメよ