17/11/02(木)01:03:54 「酒と... のスレッド詳細
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17/11/02(木)01:03:54 [1/3] No.463019184
「酒と女と歌を愛さぬものは、生涯愚者である」。この言葉の信憑性は定かではないが。 しかし愛もまた、時として人を愚かにする。とりわけ酒と異性に関しては。 「それでもう私がドイツに行った時はね~……──」 夜のバー、時刻は0時を回った。店内の他の客足も、先程から減り始めた頃合いだ。 カウンター席で俺の隣に座っている芽衣子さんは、先ほどから延々と旅行の思い出話に話を咲かせている。 と言っても俺はほとんど聞いているだけで、彼女が一方的に話しているだけなのだが。 上機嫌で酒が進んだせいか、芽衣子さんは完全に酔ってくだを巻いている。 「もービールがすごく美味しくてね、はしごしたせいで全然観光できなくて……」 俺はそこでこのままだと永遠に続きそうな彼女の言葉を遮る。 「芽衣子さん、飲み過ぎだ。それに時間ももう遅い。そろそろ帰ろう」 「えぇ~、そんなことないってば~… まだ大丈夫だよ…」 「ダメだ」 大丈夫と言いつつ、芽衣子さんのその口調は若干呂律が回っていない。 何故人はわかっていても飲み過ぎてしまうのか。酒を愛していない者には理解できない話だ。
1 17/11/02(木)01:04:17 [2/3] No.463019233
「…プロデューサー、お願いだから"アレ"は言わないで…」 芽衣子さんが訴えかけるような瞳でこちらを見つめてくる。 しかし俺は彼女の言葉を聞き流し、バーテンダーに注文をかける。 「彼女にワン・モア・フォー・ザ・ロードを」 「あう~…」 横でうなだれる芽衣子さんの声が聞こえる。そのお酒が出る事は、この時間の終わりを意味するからだ。 家路に着くための最後の一杯を、「ワン・フォー・ザ・ロード」と呼ぶ。 このカクテルはそんな一杯になるように、と願いを込めて作られた。 バーテンダーがリキュールのボトルを開けると、杏の甘い香りが少しだけ漂ってくる。 酒はあまり好かないが、香りを楽しめるこの瞬間は嫌いではない。 「ねえ、なんでプロデューサーは飲まないの?たまには一緒に飲もうよー」 「酒は好きじゃないと言ってるだろう。それに俺が飲んだら誰がこのあと君を寮まで車で送るんだ」 「誰かに迎えに来てもらうとか…、タクシーとか…」 「こんな時間に誰かに来てもらうのも忍びない。余計な出費もしたくない」 「むぅ~~。まだ話し足りないし、飲み足りないし、遊び足りないよ~」
2 17/11/02(木)01:07:28 [3/3] No.463019711
彼女はそう言って顔をしかめて口を尖らせてみせる。 芽衣子さんは酒も歌も愛しているが、賢者には見えない。 だがまどろんだその瞳と薄暗い照明に照らされた横顔は… なんだかいつもより魅力的に見える。 正直な所、俺もこの時間が終わってしまうのは少し惜しい。 酒も飲まずに黙って座って、楽しそうな彼女の横顔を、隣で静かに見つめている。それはなんだか… 嫌なことではない。 しかし長居もしてられない。人は、帰らなければならないからだ。また明日の、新たな出発のために。 それは旅行の終わりも、一日の終わりも同じ。どれだけ楽しくとも、時には勇気を持って、帰らなければならない。 そしてグラスに注がれたキャラメル色のカクテルが、彼女の前に差し出される。 「それは俺が奢る。さあ、覚悟を決めてその一杯に口をつけるんだな」 「………。 はぁ~あ…、わかりました…」 始まりはリキュールの甘い口当たり。一口飲めば、ブランデーの暖かさに包まれる。 まろやかなカルーアミルクが喉を潤せば、後味に残る、コーヒーの香り。 ワン・フォー・ザ・ロード、今日という旅を終える最後の一杯は、とろけるように甘く 少だけ ほろ苦い。
3 17/11/02(木)01:11:07 No.463020292
ちょっと大人なデートいいよね…
4 17/11/02(木)01:21:17 No.463021812
おしゃれだ
5 17/11/02(木)01:37:52 No.463024003
待ってたぜ これで眠れる
6 17/11/02(木)02:09:57 No.463027009
リクエストあったお酒の話にしてくれたのか
7 17/11/02(木)02:14:41 No.463027415
バーでデートいいよね