むかしむかし─────とある小さな村でのお話です。
「おハナさん…」
「ダメよ。それにあなた、こないだ奢った分だって返してないじゃない」
痩せぎすな男の人が、一見するとキツめな女の人に金の無心をしていました。
女の人が男の人からお金を貸してくれと頼まれたことは、一度や二度ではありません。
そう、女の人は男の人に少なからず好意を持っていました。
それでなくても甘い一面がありましたから、男の人をつけあがらせてしまったんです。
「そう言わずにさ」
「いや…こないだの分は、もう返さなくていいわ」
「えっ」
「手切れ金よ。私、結婚することにしたから」
女の人は才色兼備でしたので、当然引く手あまただった訳です。
それでも結婚の申し出をなるべく断っていたのは、たとえお金にだらしがなくても、痩せっぽちで頼りがないと周りから評されていても、そんな男の人が好きだったから。
「いい加減、待つのには疲れたの。きっといつかあなたがいい男になるって信じてたわ。でもそれには私が邪魔なんだってこと、今になってようやく受け入れられそう…さようなら」
こうして男の人はフラれてしまったんです。
21/03/21(日)23:52:05
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