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21/03/21(日)23:52:05 むかし... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1616338325963.jpg 21/03/21(日)23:52:05 No.785665421

むかしむかし─────とある小さな村でのお話です。 「おハナさん…」 「ダメよ。それにあなた、こないだ奢った分だって返してないじゃない」 痩せぎすな男の人が、一見するとキツめな女の人に金の無心をしていました。 女の人が男の人からお金を貸してくれと頼まれたことは、一度や二度ではありません。 そう、女の人は男の人に少なからず好意を持っていました。 それでなくても甘い一面がありましたから、男の人をつけあがらせてしまったんです。 「そう言わずにさ」 「いや…こないだの分は、もう返さなくていいわ」 「えっ」 「手切れ金よ。私、結婚することにしたから」 女の人は才色兼備でしたので、当然引く手あまただった訳です。 それでも結婚の申し出をなるべく断っていたのは、たとえお金にだらしがなくても、痩せっぽちで頼りがないと周りから評されていても、そんな男の人が好きだったから。 「いい加減、待つのには疲れたの。きっといつかあなたがいい男になるって信じてたわ。でもそれには私が邪魔なんだってこと、今になってようやく受け入れられそう…さようなら」 こうして男の人はフラれてしまったんです。

1 21/03/21(日)23:52:23 No.785665520

「はぁ…」 男の人は打ちひしがれていました。 ダメだと分かっていても、女の人からの好意に甘えてつけあがってしまっているのを止めるに止められなかった結果今があるのだということを、ちゃんと分かっていたからです。 「俺はダメダメだなあ」 けれど根性が足りなかったようですね。 誰かに甘えてしまうと、それだけダメになりやすい気質なのもよくなかったのでしょう。 なんにせよ、男の人が心の支えを失ったことに変わりはありません。 このままだとますますダメになってしまうのは間違いないのですが、かといってまた誰かが助けてくれるわけでもありません。 そもそも助けられてしまえば、男の人は助けてくれた相手に甘えてしまうでしょう。 悪循環でした。 「うん?」 そんな彼に転機が訪れます。 「こんなに傷付いてかわいそうに…ああ、きっと元気にしてやるからな」 その小鳥さんは鮮やかな黄緑色をしていて、暗がりでも一目で分かるくらいの美しさでした。 しかし男の人はそれよりもまず、小鳥さんの翼が痛々しいくらいに傷付いていることを気にしたんです。それからただ一心に小鳥さんを助けようと必死になりました。

2 21/03/21(日)23:52:36 No.785665603

男の人は、女の人に甘えていた頃が信じられないくらいの勢いでそれはもうがむしゃらに働きました。 そうしなければ食べていけないというのもありましたが、小鳥さんを助けられないからです。 まして小さな村、当然ヒト以外に診察や治療をするお医者さんもいませんから、男の人は色んな治療法を調べて回り試行錯誤していくしかありません。 小鳥さんは怪我をしていましたから、当初はただ一方的に男の人からの厚意を受け入れるしかなかったのですが、日々の中で男の人が真摯に自分を助けようとしていることを確信したのか、いつしか男の人の帰りを玄関で出迎えるほど懐くようになったのです。 「ただいま、スズカ」 そんないじらしい態度に心打たれたのか、男の人は小鳥さんにスズカという名前を与え、よりいっそう可愛がるようになりました。 人と鳥。 どうあっても隔たりはあるはずなのに、それを感じさせないくらいのふたりなのでした。 「ようやく見つけたぞ」 けれど、そんな穏やかな日々に暗雲が立ち込めてきたのです。 「な、なんだ!?」 ドアを蹴破って、筋骨隆々の半裸なグラサン男とウマ娘がふたりの元を訪れました。

3 21/03/21(日)23:52:51 No.785665688

「返してもらうぞ、その小鳥…スズカを」 「ちょっと待て!なんでお前がコイツの名前を…」 「…とんだ偶然もあったもんだ。何も知らないだろうアンタが、そいつにスズカって名前をつけるとはな…ブルボン!」 「はい、マスター」 ブルボンと呼ばれたウマ娘は、あっという間に男の人を制圧してしまいました。 「クソッ!離せ!」 「悪いが仕事なんでな…アンタ、運が悪かったんだよ」 「運が悪かっただって!?バカ言え!俺はスズカに出会ってから運が上向いてる!それにまだこれからなんだよ、俺たちは…!」 「…仲睦まじいのはいいことだ。しかし驚いたなスズカ。お前は小鳥の姿になっても、誰かを魅了する力に長けている…やはり逃げ切りシスターズのセンターに相応しい」 男の人は、逃げ切りシスターズという名に聞き覚えがありました。 近頃津々浦々に周知されているほどのアイドルグループで、その人気は国家を揺るがすくらい容易く出来るほどの力を持っていたんです。 男の人は小鳥さんを助けるのに一所懸命でやや世事に疎かったのですが、逃げ切りシスターズのことはよく知っていました。 センターの人に焦がれていたんです。

4 21/03/21(日)23:53:07 No.785665778

サイレンススズカ。 儚げなその姿はまさに幻想が人の形をしたものと称され、ついには永遠のヒロインとまで評されたウマ娘です。 男の人は、そんな彼女の走る姿が大好きでした。一応、歌って踊る姿もいいものだとは思ったようですが、彼は何よりずっと先頭を走り、そのままどこまでも遠くまで行ってしまいそうな彼女に恋をしました。 とはいえ逃げ切りシスターズは歌って踊るのが主で、走る姿を目に出来る機会はそう多くありません。 その少ない機会を、男の人はまだヒモだった頃に女の人のお陰で得られたのです。 …ひょっとしたら女の人が男の人を諦めたのは、スズカさんが理由なのかもしれませんね。 そんな男の人が、 「スズカって名前はな、あのサイレンススズカにあやかってつけたんだ。いつかお前が飛べるようになった時、スズカみたいに速く飛べますようにってさ」 小鳥さんにその名を与えたのは、何の偶然でしょうか。 アイドル活動に忙殺されたスズカさんは十分に走れず、強いストレスになっていました。 そんなある日、 「ふむ、疲れているようだねスズカ。そんな君にこれをあげよう」 彼女は怪しげな薬を貰ったんです。

5 21/03/21(日)23:53:25 No.785665875

「タキオン…これは?」 「鳥になれる薬さ。ほら、見てごらん私の背中を…まだ少し効き目が残っているだろう?」 タキオンと呼ばれたウマ娘さんの背中には、小さな翼がふたつ生えていました。 薬の信頼度はともかく、スズカさんはつい飲んでしまいたくなったんです。 籠の中の鳥になっているのなら、いっそ本当の鳥になってしまえたらと思ってしまいましたから。 「近頃姿を見せないなと思っていたら、そういうことだったのね」 「フフ…私の場合、元に戻るまで3ヶ月はかかってしまったよ…実際楽しかったが危険は多いから、薬を試すならどうか気をつけ…」 タキオンさんの言葉を待たずスズカさんは薬を飲み干していて、さっさと飛び立ってしまっていたのです。 速く飛ぶのが余程楽しかったのか、スズカさんは数日の間鳥になってからの生活を満喫していました。 元いた場所に戻ってしまえば本当に籠の中の鳥ですから、あちこちを飛び回っていたんです。 (あっ…) 小鳥であっても目立つ姿です。それに小鳥とは思えないほどの速度で飛び回っていれば、周囲から目をつけられてしまうのは当然のことと言えました。

6 21/03/21(日)23:53:40 No.785665956

隼に襲われたスズカさんは翼に大きな怪我をしてしまい、それでもどうにかほうぼうの体で安全な所に着陸したのです。 そのままでは座して死を待つしかない状況で、男の人が助けに来てくれたんですね。 「頼むからしっかりしてくれよ…助けてやるから…」 物珍しさからか、あるいは同情からか。なんにせよスズカさんには男の人がどう思ってるか知る由はありませんでした。 元気になったらすぐに出ていこう。そんなことさえ考えていたんです。 けれど、 「お前が元気に飛び回る姿を、いつか見てみたいからな…」 常々親身になってくれる彼に、いつしかスズカさんは絆されていき、 「遅くなって悪かったな…眠かったら寝てくれてもよかったんだぞ、俺は大丈夫だから」 鳥の姿でなければもっと色々出来ることがあるだろうにと思いながら、彼の帰りを待ったり、 「スズカの走る姿はスゴくカッコいいんだぞ!ああ、お前にもいつか見せてやりたいな…」 (サイレンススズカ。) ついにはかつての自分に嫉妬してしまうことすらありました。 彼の一番になりたいのにというスズカさんの願いは、皮肉にも自分自身が阻んでしまったのです。

7 21/03/21(日)23:53:57 No.785666060

さて、話はスズカさんを連れ戻しに来た二人が現れた所に戻ります。 男の人には何も出来ませんでした。悲しいかな、ウマ娘とそうではない人とでは身体能力に彼我の差があります。 まして相手はサイボーグと称されるミホノブルボンさんですからね。 「マスター…」 「ああ、分かってる。スズカはまだ怪我が完治していないようだから、確保は慎重に行う」 「…はい」 どうもブルボンさんはそうじゃないと言いたげな様子でしたが、唐変木のマスターさんには分かりません。 ジリジリと距離を詰めるマスターさん…怪我をしたスズカさんでは、到底太刀打ち出来ません。 (…彼と過ごす日々を失いたくない!) それでもスズカさんはハッキリと拒絶の意志を目で示しました。 「…逃げ切りシスターズにはお前が必要だ。少なくともブルボンがお前を超えるまでは、絶対に辞めないでいてもらう」 そんなマスターさんの言葉を聞いたブルボンさんは、思わず拘束の手を緩めてしまったんです。 「スズカ!」 男の人は拘束を振りほどくとそのまま一目散にスズカさんの元まで向かい、庇うようにして立ちはだかりました。

8 21/03/21(日)23:54:17 No.785666215

「永遠のアイドルを自分だけのものにしたいか。まあ、気持ちはわからなくはない」 「違う!」 「何が違う。事情は…うん、俺たちもアグネスタキオンという前提がなければ理解出来かねるものだが…」 「そうじゃねえ!俺はたとえスズカが小鳥のままでも、ずっと一緒にいたいんだ…!」 男の人は気迫に満ちた様子でマスターさんを睨みつけましたが、厳つい姿に違わぬ歴戦の猛者である相手には通用しません。 「マスター…」 「気にするなブルボン。俺がカタをつければ済む話だ…っ!」 そんなマスターさんでしたが、ブルボンさんの不意打ちには対処出来なかったんです。 「…えっ?」 「ミッションの続行は困難と判断。ミホノブルボン、これよりマスターと帰投します」 どうやら男の人の態度や発言がブルボンさんの心情と合っていたようです。 気合十分、いい顔してますね! 後には呆気にとられた男の人とスズカさんだけが残りました。

9 21/03/21(日)23:54:33 No.785666304

「…スズカ」 男の人が呼びかけると、スズカさんは翼を羽ばたかせて彼の肩に乗りました。 「なんだよお前…もう飛べるようになってたんじゃねえか」 死に瀕した経験はスズカさんから飛ぶ力を奪っていたのですが、トレーナーさんの想いを知った後ではそういう訳にはいかなかったのでしょう。 「偶然にしちゃ出来すぎてるが…なんにしてもお前はお前だよ、スズカ。お前が一々こっちの心をくすぐることばかりするから、お陰で俺は手放すだなんて言えなかったし言いたくもなかった…まあ、とにかくだ。これからもよろしくな、スズカ」 ───はい。 その時スズカさんが人の言葉を発せたわけはないんですが、男の人は確かに聞いたんです。 ───これからも、よろしくお願いします。 そう、確かに。 それからしばらくして、逃げ切りシスターズは解散してしまいました。 スズカさんは行方知れずになり、ブルボンさんはマスターさんとの結婚を電撃発表して追及から大逃げしてしまったんです。

10 21/03/21(日)23:54:47 No.785666390

「はは、まさかこんなことになるなんてな」 「ふふ…そうですね」 あれから少しして、小鳥さんだったスズカさんはいなくなってしまいました。 その後ひとりのウマ娘が彼の元に現れ、仲睦まじく暮らしているということです。 めでたし、めでたし。

11 21/03/21(日)23:57:23 No.785667374

スレ画スペちゃんだからスペちゃんヒロインかと思ったらスズカさんがヒロインだった

12 21/03/21(日)23:57:39 No.785667475

書き込みをした人によって削除されました

13 21/03/21(日)23:57:43 No.785667500

誓ってブルボンには手を出していません

14 21/03/21(日)23:59:11 No.785668008

何故スレ画をスペに....?

15 21/03/21(日)23:59:39 No.785668147

大長編すぎる…

16 21/03/21(日)23:59:59 No.785668273

これもしかしてひとりのウマ娘がスズカさんではなく…

17 21/03/22(月)00:00:39 No.785668507

>これもしかしてひとりのウマ娘がスズカさんではなく… スペシャルウィーク。

18 21/03/22(月)00:02:21 No.785669115

なんだこの…なんだ…

19 <a href="mailto:sage">21/03/22(月)00:03:01</a> [sage] No.785669321

今日の私は単なる語り部です!そういう日もあります!

20 21/03/22(月)00:03:28 No.785669468

>何故スレ画をスペに....? >これもしかしてひとりのウマ娘がスズカさんではなく… あっ…えっ…あっ…

21 21/03/22(月)00:05:01 No.785669966

よかった…ハッピーエンドだ…

22 21/03/22(月)00:05:02 No.785669974

よかった…金をせびるクズ野郎はもういないんだね…

23 21/03/22(月)00:05:02 No.785669978

ウマ娘昔噺

24 21/03/22(月)00:09:01 No.785671378

唐突に挟まる解説フレーズでダメだった

25 21/03/22(月)00:09:26 No.785671531

スペちゃんが創作してスピカや学友のみんなに聞かせてみせたおとぎ話かもしれない

26 21/03/22(月)00:09:53 No.785671668

ああ小学生の時書かされたな創作絵本

27 21/03/22(月)00:10:05 No.785671756

>「スズカの走る姿はスゴくカッコいいんだぞ!ああ、お前にもいつか見せてやりたいな…」 >(サイレンススズカ。) >ついにはかつての自分に嫉妬してしまうことすらありました。 駄目だった

28 21/03/22(月)00:11:53 No.785672495

なんか人生の墓場にぶち込まれた人がいた気がするがまぁ些細なことだろう…

29 21/03/22(月)00:11:53 No.785672496

なんかしれっと一人取っ捕まってる…

30 21/03/22(月)00:12:42 No.785672805

なにこの…なに…?

31 21/03/22(月)00:17:03 No.785674608

他のシスターズ可哀想じゃない?

32 21/03/22(月)00:17:04 No.785674621

ライスちゃんの絵本にありそうは話

33 21/03/22(月)00:17:27 No.785674766

二次創作におけるタキオンが晶葉や志希のような便利キャラとして不動の地位を築きつつある…

34 21/03/22(月)00:18:53 No.785675305

つべこべ言わずに継承しなさい!

35 21/03/22(月)00:20:47 No.785676095

ライスちゃん結構大人な絵本読んでるんすね…

36 21/03/22(月)00:21:13 No.785676247

ブルボンのトレーナーに東城会四代目みたいなこと言わせんじゃあない!!

37 21/03/22(月)00:21:51 No.785676510

はい!!!絵本代3000円です!!!!かと思ったら違った

38 21/03/22(月)00:22:03 No.785676586

いい話っぽい中で自分の欲望に忠実すぎるブルボンはさぁ…

39 21/03/22(月)00:25:24 No.785678191

スぺちゃんはおとぎ話だったら欲張って身を滅ぼす方の人になりそう

40 21/03/22(月)00:25:26 No.785678199

書き込みをした人によって削除されました

41 21/03/22(月)00:30:40 No.785680556

このマスターはもうブルボンに頭上がらずに生きてくんだろうな… それもまあ、幸せなことだろうけども

42 21/03/22(月)00:31:32 No.785681022

ウワーッ!なんか長い!

43 21/03/22(月)00:32:04 No.785681507

マスターはブルボンにスズカさんを超えてほしいっていう結構綺麗な理由だったのに…

44 21/03/22(月)00:32:28 No.785681764

ライスには…ちょっと難しかったかな… …もう1回読もうかな

45 21/03/22(月)00:33:31 No.785682309

当て身(四の五の言わずに抱け、の意)

46 21/03/22(月)00:35:55 No.785683367

>マスターはブルボンにスズカさんを超えてほしいっていう結構綺麗な理由だったのに… 関係ありません。 マスターはこれから逆うまぴょいされるのですから。

47 21/03/22(月)00:39:02 No.785684660

てっきり鶴の恩返しver.umaだと思ってた

48 21/03/22(月)00:43:49 No.785686980

>ライスちゃん結構大人な絵本読んでるんすね… みんな幸せになってるからライスちゃんも満足!

49 21/03/22(月)00:47:51 No.785688725

幸せな2人が2組もできたよ!ってライスは喜びながら言うんだな

50 21/03/22(月)00:50:14 No.785689890

>幸せな2人が2組もできたよ!ってライスは喜びながら言うんだな まさに結婚式なんて幸せの象徴だしライスの憧れの原点だろうしな

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