ボクのトレーナーは厳しい。
今日はプールでのトレーニングで、もうかれこれ2時間くらい泳ぎ続けてる。プールサイドで一緒に歩きながら時々「ノーブレス!」の声が飛んできて、その時は呼吸禁止で半分以上泳がないといけない。
確かに走るよりも脚に負担をかけずに心肺を鍛えられるから、水泳の効果はボクもよく理解してる。けど、苦しいのは当然苦しい。
そしてトレーナーはボクの残り体力でも見えてるかのように、限界ギリギリまでスイムを続けさせるのだ。もう無理、と思った所から少し先にある無理! までぴったり攻めてくる。
「ラスト!」
大きな声だ。他の子も泳いでるけど快適そうで羨ましい。けど、これが帝王のトレーニングなんだ。思い切り壁を蹴って出来るだけ無呼吸で泳ぎ、反対側へゴール。
「はぁっ、はぁっ、おわりっ……?」
息も絶え絶えにトレーナーを見上げると、手元のバインダーに何か書き込みながら無表情に頷いた。褒めてほしいけど、この程度じゃ褒めてくれないのがちょっとだけ寂しい。
わかってる。トレーニングは凄い事じゃない。出来て当たり前のラインだ。だから褒めない。とても解りやすい人だ。
21/05/06(木)23:02:07
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