朝と呼ぶにはまだ早い、夜も明けきらない時間に。
なんとも古めかしい外観の屋敷から出てくる人影がひとつ。
見慣れないジャージ姿に、見飽きたサングラス。
その男――巽幸太郎はまず玄関先で眠る愛犬の頭を優しく撫でる。
次に準備運動。適当ではない、きちんと意味を理解した動きだ。
それを入念に時間を掛けて終え、最後に左右を確認すると、ようやく敷地の外に走り出す――
「そこに隠れとるやつ。出てこんかい」
――寸前。アイツは事もなげにそう言った。
「……チッ」
"私"は、企みを看破されたばつの悪さを誤魔化すように舌打ちをひとつ。
そして植え込みから這い出してきた私(Bパーツ)が、木の上から転げ落ちてきた私(Aパーツ)をキャッチする。
「なんなの、絶対バレないと思ってたのに」
泣き別れになっていた首と胴をアイツの目の前で繋ぎ合わせながら、私はいつも通りの悪態をついてみせた。
19/08/26(月)23:56:07
37レス