私は言語学的調査の為に南太平洋に浮かぶ島、プラナウ島を訪れた。
仏領ポリネシアの東に位置するプラナウ、そこで話されるプラナアン語には品詞が二つしかない(プラナアンとは我々の言葉という意、つまり冗語)。
すなわち名詞と前置詞である。プラナアン語は梵語以上に高度に複合語が発達しており、その組み合せで複雑な内容を表現できるのだ。
少々話がそれた。私が船でIles Raeffsky環礁群の間を抜けた頃から徐々に嵐が巻き起こってきた。
そして島に辿り着いた時には豪雨がどうどうと甲板を、砂浜を、そして森の茂みの屋根を打っていた。
だがその夥しき雨の下に、土人達が仰ぐ様な祈りの姿勢で群れていたのだ。
彼らは降り注ぐ雨をも厭わず天へ向かって口を開き、叫んだ。
"Krinsannen, kadouche karinkan!"
(神よ、我に力を与え給え!)
ふと面白い悪戯を思いついた。
私は見得を切って空へと飛び上がり、黒雲の切れ間から後光を伴って彼らの中心へ舞い降りる。
"Kio, kio!"彼らは両手を差し上げ喜びの声を上げながら駆け寄ってくる。
神と誤認したのだ。
私は素晴しい歓迎を受け、豪勢な魚料理やヤシ酒を振舞われたが激マズだったので島ごと吹き飛ばした。
17/11/01(水)11:41:44
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