鼻歌を口ずさみながら、リコは手にしたお玉で、火にかけられた鍋の中身をぐるぐるとかき混ぜた
ふつふつと煮立つ鍋からは白い湯気が立ち上り、それと共に、芳しい香りが部屋の中に満ちていく
リコは鍋の中身を少量掬い、小皿に注ぐと、それをゆっくりと一口啜り…そしてにやりと、満足気に口元を緩めた
…リコが行っているのは、妖しげな魔女の薬作り―という訳ではなく
れっきとした、夕食の準備である
普段デートに出かける時は、夕飯は外食で済ませる事も多いふたり
だがのんびりとお家デートを楽しむ時は、みらいちゃんかリコ、どちらかが夕食を作る事になる
今夜の料理担当は、リコ
「今日は、魔法界風スープを作るわ」
…そう言ってリコが調理を始めてから、そろそろ小一時間が経とうとしている
完成はもう間もなく。リコは鍋に調味料を加え、最後の味の調整に入った
そんなリコの背中を、背後のテーブルから見守っているのは、みらいちゃん
みらいちゃんは椅子に腰を下ろし、テーブルの下で足をぱたぱたと遊ばせながら、料理の完成を今か今かと心待ちにしていた
鍋から漂う、美味しそうな匂い
リコの口にした、“魔法界風”という、謎の言葉
17/08/13(日)23:54:12
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