送り火を焚こうと屈んでいる逝きさんの後ろから「」は声を掛けた。
「――ねぇ逝きさん、たまには僕にもその火を点けさせて下さいよ」
「あは!?」 「マッチってあんまり使う機会がないんですよね…」
逝きさんと花火する時も、大抵は彼女が準備万端にしてしまってる。
人間というものはやらないと能力はどんどん失われていくものだし。
時々マッチぐらい擦っておいた方が良いと思うのは「」だけだろうか?
「あはは!!…良いですけどこれ湿度が高すぎるマッチですよ!?」
「…どうして」 「あは!最近虹裏で流行っていたようなので女の子から購入しておきました!!」
「マッチ売りぃさん…」 「あははは!!雪がお手伝いしますから一緒に点けましょうよ!!」
8月も半ば。2018年も残りが少なくなって来て… でも「」は以前ほど焦る気持ちも無くなってきた。
焦ったほうが良いのか、しかし焦りは禁物とも言うし、良くわからない。ただ「」には虹裏がある。
逝きさんがいる。それだけで十分だ。夏の夕空へと昇り立つ白煙を見上げながら「」はそう考えた。
暦の上では少なくなってきた夏を思いながら、「」と逝きさんは今しばらく手を合わせている。
18/08/15(水)23:56:40
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