18/08/15(水)00:31:51 四拍子... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1534260711671.jpg 18/08/15(水)00:31:51 [お久しぶりです] No.526078277
四拍子のリズムで体を前後に揺らす。たまには競技を忘れて人馬一体となり、野山を散策するのも気持ちいい。昔見た西部劇のドラマでは常に荒野を歩き続けて、子供心に馬がかわいそうだと思った物だった。 右後肢、右前肢、左後肢、左前肢、段々山道に入っていく。頭をなでようとしてくる木々の枝にお辞儀をしてよけてみせると、足下で生まれたばかりの水達が大河になるべく小川をなして流れていく。無事にほかの川に合流し海へ向かえ、そして雨になって、また山に戻ってこい。 カコッ、カコッ、カコッ、カコッ、カコッ、ツッ、カコッ、カコッ、カコッ、ツッ、カコッ、カコッ……どうした? 何は堅い物でも踏んだか? 急いで降りると右前肢の蹄を見てやる。綺麗な蹄を確認すると目に入る違和感。足が腫れている。骨折? 早く医者に診せないと……
1 18/08/15(水)00:32:39 No.526078474
急いで森を抜ける、そこは岩砂漠だった。まるで西部劇の舞台みたいで、まさにアメリカはユタのモニュメントバレーを彷彿とさせる奇岩と赤い砂の大地。誰かいませんか? この子の足を治せる人いませんか。そうやって声を上げると頬を涙が伝った。……バル! ……シバル! 起きろ! パーシバル! 「ああ、起きたか。お前大丈夫か? 結構大きな声で寝言言ってたぞ? しかも泣きながら」 「ん? ルク……リリ? お前どうして私のベットにいるんだ?」 ルクリリの軽いチョップが寝ぼけ眼のパーシバルを襲う。 「いてぃ、ああ……私がお前の布団に入ったんだ、すまない」
2 18/08/15(水)00:33:02 No.526078580
「いいさ。寝ぼけてのことだ。だが、誰かと寝ても悪夢は続いたようだな」 ここ数日、パーシバルはまともに睡眠がとれていない。いつも先ほどの夢を見てうなされて起きるのだ。 「なあ、深く考えるなよ。あの子手術終わって今では普通に歩けるんだろ?」 「だが私がもっと早く気づけば休ませてやればそもそも手術をしなくても良かったんだ。ずっと私の愛馬と言っていたのにあの子の変調に気づいてやれなかったんだ。あの子の足は私が壊したんだよ」 パーシバルの頭を抱き寄せるとそのままベットに倒れる。 「自分を責めるな。競走馬失格となったあの子と中学からずっと一緒だったんだろ? お前が乗らないで誰が乗るんだ」 「でも私にはもう乗る資格はないんだ」 「いいから今はねろまだ朝まで少しある」 寝かしつけようと背中を規則的にたたくルクリリの優しさに、パーシバルは目をつぶり寝たふりで答えた。
3 18/08/15(水)00:33:49 No.526078776
ずっと一緒だったのだ。乗馬を始めたときからずっと。人が馬に乗るのではなく、馬が人を乗せるのではない。一人と一頭は合わさって一つの生き物だった。気難しい性格の少女と馬齢若くして競走馬失格の烙印を押された馬とはまさに馬が合った。 出会いは4年をほど遡る。少女は性格故か友も少なく、乗る馬も短い間に幾度となく変えていたため、両親が彼女の性格を受け入れられるような古馬をあてがったがそれでも上手くいかない。少女は親友の戦車乗りにもう乗馬は嫌だと打ち明けた。 「何が嫌なんだ? 始めるときはあんなに舞い上がっていたのに? やっぱ戦車乗りたくなったか?」 後にルクリリと呼ばれる彼女は不思議そうに首をかしげる。
4 18/08/15(水)00:34:47 No.526079021
「先生や他の子が乗ると楽しそうに駆けるのに、私が乗るとつまらなそうなんだ……」 後にパーシバルと呼ばれる少女は感受性が強く、そして優しすぎた。 「ならお前が乗って楽しむ馬探せばいいじゃん?辞めることないだろ」 「もうあそこに私が乗ったことがない馬はいないんだ」 「じゃあ探せばいいんだよ。馬の一杯いるところ行ってさ」 言うなり駆け出す友人について行くといつの間にか近くの幹線道路でヒッチハイクをしていた。大きな画用紙に「馬のいるとことろ」と書いて。
5 18/08/15(水)00:35:12 No.526079122
二人がヒッチハイクしている姿を見た修道服を着た女性は親友のところに行く途中と言い黄色いminiに乗せてくれた。何でもその親友が偶然にも乗馬スクールを経営しているそうでそこになら連れて行ってくれるそうだ。 「それにしてこんなかわいい女の子二人がヒッチハイクだなんて危ないわ。まあ、次からは気を付けなさい」 「あの……これから行く乗馬クラブってそのお友達がやっているんですか?」 「まあそういうことになるわ。女好きだけど悪い子じゃあないの。まあ、結婚しておとなしくなったんだけどね」 「男性なんですか?」 「女性よ。でも女の子が好きなのよ。ああ、結婚相手は男性よ偶然あの子を好きになる物好きがいてね……」 二人がよくわからない顔をすると修道服の女性は苦笑いをする。
6 18/08/15(水)00:35:33 No.526079201
「そういえば二人は何で乗馬クラブに用があるの? もしかして家出だった?」 「違うんです! この子の馬を探してるんです!」 このヒッチハイクの経緯を説明すると修道服を着た女性は少女達に頬笑みかける 「馬じゃなくて戦車に乗るなんてどう?」 「あの! 運転! 前向いてください!」 「あ、ごめんね。戦車も楽しいわよ今なら私が教えてあげるんだけどな」 「おばあさんは戦車道やってたんですか? いったぃ!」 後部座席にいた二人に強めのデコピンをする修道服の女性。 「いたーい! ああ運転! 危ない!」 「もう駄目よ妙齢の女性にそんなこと言ったら」 この後もちょくちょくハンドルから手を離す彼女に二人はヒヤヒヤしながら目的の乗馬クラブへと向かった。
7 18/08/15(水)00:38:09 No.526079853
バックで青い三輪の車を押し出して駐車すると、何事も無いように車のエンジンを止めた。 「着いたわよ」 その一言にほっとしながら車を降りると笑いながら持ち主?であろう乗馬服の女性がやってくる。 「ようこそMr.ビーン! この前黄色のminiで来たとき是非これを買おうと思ってね。船で運ぶ代金の方が高かったぞ」 「旦那に止められなかったの?」 「買ったのは私じゃないぞあいつがイギリスの知り合いに連絡して取り寄せたんだ。ああ、今の駐車見せたかったな……なあ、その子達は如何した?」 大人二人の会話にきょとんとしていたが話を振られたので勇気を振り絞り、ここぞとばかりに話し始める。
8 18/08/15(水)00:38:44 No.526079984
「馬を探してます!」 「迷い馬か何かか?」 怪訝そうに少女達を見る牧場主。 「ちげえよ馬術大会で一番になれるような相棒がほしいんだ。いないか? そんな馬」 「おぉう三つ編みの子は威勢がいいなぁ厩舎に行くか?」 皆で厩舎に向かう。そこには …… …… 夢を見ていたようだ。まだ二人が何物でも無かった頃、ただの少女二人だった頃の。
9 18/08/15(水)00:39:04 No.526080068
空を覆う闇は大方ははけて蒼から青へと変わろうとしている。ああ、行かなきゃあのこのところへ。夢の続きを、あの時初めてあの子にあったあの続きをもう一度。パーシバルは抱きつきながらシャツによだれをなすりつける、共に冒険をした親友を強引に引っぺがして向かう、もう何も怖くないよ。私と貴方はあの時からずっと一緒だったから。 「おはようございますパーシバル様この子ったら言うこと聞かなくて」 「おはようローエングリン。このへそ曲がりの世話ありがとうね」 ローエングリンから餌をもらっていた彼女の愛馬へそ曲がりは彼女を見るとツンと顔を背ける。 「悪かったよ私のグラ―ル。私の大事な聖杯は私を又背中に乗せてくれるかな?」 ご機嫌を取るように頭をなでながら語りかけると反らした顔をパーシバルに向けるグラ―ルをパーシバルは優しく抱きしめた。
10 18/08/15(水)00:39:23 No.526080130
「名コンビ復活ですねパーシバル様」 「名コンビか……ああ、先代にも言われたよ」 「あれ? でもこの子中学の頃から乗っていたって、ある人から譲り受けたってもしかして?」 「みつけたぞ! パーシー! お前人に夜這いをかけただけじゃなく変な時間に起こしやがって!」 「おはようルクリリ。 ローエングリンすまないがこの話は何時かしてやる。まあこの時ルクリリが初めて乗ったマチルダⅡから転げ落ちて大変だったんだ」 「その話ってお前の先代の所にシスターといった話か? あれはお前がマチルダから突き落としたから……」 急に自分にっ話を振られたルクリリはそのことに驚きながら答える。 「おはよーローちゃん今日も手伝うよ……?ルクリリ様? どうしてここに?」 「あ、ニッキーありがとう。それがねパーシバル様がルクリリ様に夜這いして……」 「え……? よ・ば・い・? な・ん・で・?」
11 18/08/15(水)00:40:01 No.526080273
まあこの後簡単に言うと修羅場になったんだが、それよりも一つの人馬の気持ちが戻ったと言うめでたいことの前では些細なことだし、この後ローエングリンが錯乱するニルギリを落ち着かせようとするところで運悪く飛んできたゴットフリードがその場を引っかき回し見事に大騒ぎとなったがパーシバルとその愛馬グラ―ルは何事も無く愛馬の体にブラシをかけていたので混乱のあまりニルギリがバケツを引っかけてすっころんだ事も、ゴットフリードの頭頂部をルクリリがむしってハゲタカみたいになった事も、ルクリリの首筋にゴットフリードの嘴が当たりキスマークのような青あざを作って女子生徒にいらん噂を立てたれたり、それをローエングリンが余計なことを言って騒ぎが大きくなったりしたが、これらのことはパーシバルとグラ―ルにとっては全て些細なことだろう。
12 18/08/15(水)00:47:10 No.526081804
久しぶりだな
13 18/08/15(水)00:47:22 No.526081849
ルクリリさんと馬って似合うよね…
14 18/08/15(水)00:50:45 No.526082549
>久しぶりだな 体感では一年ぶりぐらいに上げたよ 褒めて sq106825.txt まとまった奴ですお納めください
15 18/08/15(水)00:52:01 No.526082818
こうしてパーシバルとルクリリは自分の相棒と出会った パーシバルはグラール ルクリリはマチルダII そしてシスターは相変わらず車の運転は荒い
16 18/08/15(水)00:53:47 No.526083206
>ゴットフリードの頭頂部をルクリリがむしってハゲタカみたいになった事も ひどい…
17 18/08/15(水)00:58:22 No.526084123
>それをローエングリンが余計なことを言って騒ぎが大きくなったりしたが 「ちょっとだけ錯乱しちゃったのよ、ほらあの子ヤキモチ焼きだしいつもルクリリ先輩のこと狙ってるから」
18 18/08/15(水)01:07:56 No.526085964
シスター「」クリリのSSを読むと勿論ルクリリさんやパーシバル達の格好良さも印象深いんだけどそれより気の合う仲間達が楽しげでその雰囲気が何よりも好き ダーさん中心のグループとはまたちょっと違う生き生きした躍動感があるのよね
19 18/08/15(水)01:13:17 No.526087017
さらっとルクリリとシスターの最初の出会いまで書いておる
20 18/08/15(水)01:17:07 No.526087746
ローエングリンとゴットフリードの出会い話も読みたい
21 18/08/15(水)01:28:39 No.526089900
私 このお話好き