────くちゃり。
そんな水音を聞いたのは偶然だった。その日は何故か寝付けなくて、ふらりと夜空を眺めようと思った。音を立てないように部屋から抜け出し、ふらりと屋敷を歩くとそんな水音が響いていた。
なんの音か、気になった。
向かうと、明かりの着いた部屋があった。そして、扉は少しだけ空いていた。
────くちゃり。
小さな水音は、その部屋から出ていた。隙間から部屋を覗く。
そこでは、紺野純子と巽幸太郎が抱き合っていた。
────くちゃり。
何が起きているのか信じられなかった。何が目の前で起きているのか理解したくなかった。
目の前の現実を受け入れたくないのに、目の前の現実から目をそらすことすら出来なくて。
水音が聞こえる。水音が聞こえる。
小さな喘ぎ声が隙間から聞こえてくる。荒い息使いが耳に入る。
なぜ、彼女と彼が。なぜ、なぜ、なぜ。
目の前が真っ暗になる気がして、頭が痛む。喉の奥から吐き気が襲い掛かり、必死に口元を抑えた。
19/01/08(火)23:47:36
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