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2019-01-01のスレッド一覧 5883件

青天を見るのはどれ程ぶりのことだろう。影は雲ばかりの空を見て、レイは溜息を吐いた。 「どうした、考え事か?」 「司令官殿」 彼女より10上の男は、その細肩に軍服を靡かせる。嘗ては誰もが振り向く整った顔は深い皺と右目付近の火傷後に酷く潰れていた。 「らしくない。……まあ、お前の気持ちも分かる。正直この基地もいつまでもつかは分からない。国民には我々の快勝だと伝えられているが、正直なところ軍部は全てお前任せ……っと、士気に関わるかな」 軽い調子で、けれど一点の視線も逸らすことはない。 「いえ、分かっていることですので。それに──」 考え事は別にあった。凪のような一時の平和はレイの心に不可避の疑問を投じるのだ。それは波紋のように広がり、消そうと手を突っ込むと余計に広がってしまう。厄介極まりない謎であった。 「あー、司令官殿は、ここに来る前は何を?」 「何だ、急に?俺の家は小さな本屋さ。楽しいぞ、儲からないけどな」 そう言って彼は笑った。酷い傷跡の中ですら、それは綺麗に見えた。少なくとも、レイには。それはあるいは、羨ましかったのかもしれない。 「お前はどうなんだ?」 男はそう言い、すぐに理解した。

19/01/01(火)21:10:53

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