19/01/01(火)23:56:28 サキと... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1546354588444.jpg 19/01/01(火)23:56:28 No.558913289
サキとさくらと姐さんお手製の御節に舌鼓を打ち、共用部屋で胃を休ませていると、リリィの提案で幸太郎から与えられていた百人一首に興じる事になった。 上下の句が結び付かないサキの様な人でも楽しめる様坊主めくりではあるが。 ルールは至って簡単で、和歌の風情を嗜む事も生まれて死んで此の方一度たりとも無かったものの、十二分に盛り上がった。サキが元からそう言う性、というのも大きかった所為でもあるのかもしれないが。
1 19/01/01(火)23:57:06 No.558913460
「にしても…どやん意味があんのや、こん和歌いうんは?」 「確か殆どが愛の歌だって聞いた事はあるけんど…意味まではよう分からんね…」 「え?何?」 「いや、愛ちゃんの事じゃ無いよ?」 素っ頓狂な声を上げる愛を遠くにサキは思慮に耽る。成る程、これらは愛情を詠んだ歌であったのか。小さな謎が解けたと同時に感嘆も漏れる。『好き』を伝えるだけなのにこれだけの表現がある、意味はさっぱり判りかねるが。 最近マシになってきたと自負してはいるものの、まだ恥じらいと下らない意地が、彼への想いの伝達を妨害する。 もっと素直になりたい。誰に向けたでも無い微かな溜息と共に、札を片付けようと一枚の読み札を取り上げる。
2 19/01/01(火)23:57:53 No.558913718
『忘らるる 身をば思はず ちかひてし人の命の 惜しくもあるかな』 ……さっぱり分からない。果たしてこれも愛を詠んだ物なのだろうか。 「なあ姐さん、こん歌どやん事言っとると?」 どれどれ、ゆうぎりはサキからそれを受け取り、暫く目を細めた後優しく微笑んで答えてくれた。 「……ごめんなんしょ、サキはん。あっちにこの歌の想いは測りかねるでありんす」 「生きとった時代が近いけん、姐さんなら知っとると思ったけんど…」 分からない事もあるのか。たが大した疑問でも無し、そのまま気に留める必要も無いだろう。 「幸太郎はんはああ見えて物知りでありんすから、返すついでに訊いてみてはどうでありんしょ?」 含みを持たせた口調で提言する。確証も何も無いが、確かに幸太郎なら知っていても驚かない、そんな気がした。
3 19/01/01(火)23:58:32 No.558913911
「和歌の意味だと? なんじゃい藪から棒に」 「分からんならいい。別にアタシもそこまでして知りとう訳じゃないけん」 こう言うと幸太郎は眉を吊り上げ、ムキになるのも慣れたものだ。 「分からん訳あるかい! 丸っと知っとっと!」 「……もうええ、そがんマジにならんともええ」 こんな事に一々ムキになる彼の姿に馬鹿馬鹿しくなったサキは、必要の無い渋りを見せる。 「……良いから、見せてくれ」 こう言われてしまうと見せない訳には行かなくなる。サキは箱を開け、一番上に待機させておいた件の札を指差した。 永く感じた一瞬の静寂の後、幸太郎は徐に口を開いた。
4 19/01/01(火)23:59:31 No.558914211
「貴方に忘れ去られる我が身より、何時迄も私を愛すると神に誓ってくれた貴方の身に天罰が下るのでは無いかと思うと気が気でない」 歌の意味を述べたのは火を見るより明らかなのに、まるで自分に向けられた言の葉の様に語り掛ける彼の穏やかな声色に、かねてより停止していたはずの心の臓が飛び上がるのを感じた。こんな阿呆な惚気話を愛辺りに聞かれれば、何故だか意味不明な怒りをぶつけられる気がした。 「どうした、サキ?」 勝手に一人で盛り上がっている傍ら、幸太郎の穏やかな口調がお腹に響く。
5 19/01/01(火)23:59:56 No.558914316
「なあ……グラサン」 「……何だ?」 「……アタシがそやんか歌みたいに神様に天罰が下されるとしたら、グラサンは悲しんでくれると……?」 うん、何を言っているのだろうかアタシは。これには幸太郎も豆鉄砲を食らった様だ。ご自慢のサングラスが少しズレている……のも束の間、それ越しからでも分かる覇気に背筋が伸びる。 「……何を巫山戯た事抜かしとるんじゃ」 これは…怒っているのか? 静かな言葉の裏にふつふつと怒気が混じっているのが見て分かる。 「……悪い」 「当たり前だ、二度と口にするな」 言われて、アタシは酷い後悔の波に攫われた。愛の言葉を借りたばかりか、過激な喩えで彼を怒らせてしまった。
6 19/01/02(水)00:00:36 No.558914563
彼の好意に傷を付けてしまったと、心中穏やかでないサキに幸太郎は続けてこう言った。 「居るかも分からん神に裁きなんぞ絶対にさせてやらん」 「幸太郎…?」 「お前は前だけを見ていれば良い。もし止まる様な事があれば、あいつらが、俺が、背中を押してやる」 サキは一瞬の硬直ののち、茹で蛸の様になった己の顔を左斜め下に逸らす。しかし、彼の一回り大きな手がそれを許さない。 「神に誓うな、俺に誓え、サキ」 自分の蕩けた声を聞くのは好きでは無いが、彼に包まれるのであれば瑣末な問題であった。 暫くして、嫌に頬を紅潮させたサキが部屋に戻ってきたのを見た或る者は満足に至り、また或る者は激怒した。 おわり
7 19/01/02(水)00:02:33 No.558915171
すばらしい完走だ・・・ あっ100点です
8 19/01/02(水)00:03:06 No.558915376
よか…
9 19/01/02(水)00:03:32 No.558915524
姐さんはやっぱすげえや!
10 19/01/02(水)00:04:03 No.558915650
かの以下略
11 19/01/02(水)00:04:15 No.558915699
>激怒した。 あのさぁ…
12 19/01/02(水)00:04:17 No.558915709
姐さんナイスアシスト!
13 19/01/02(水)00:04:37 No.558915795
>「え?何?」 >「いや、愛ちゃんの事じゃ無いよ?」 吹いた
14 19/01/02(水)00:05:27 No.558916016
特に何もしてないのに愛ちゃんの存在感がすごい
15 19/01/02(水)00:05:49 No.558916126
はいお前の胸から愛の歌響いてる
16 19/01/02(水)00:06:19 [sage] No.558916262
昨年までのまとめ 明けましておめでとうございます http://www.nijibox5.com/futabafiles/tubu/src/su2802607.txt.html
17 19/01/02(水)00:06:37 No.558916330
はー好き…
18 19/01/02(水)00:08:27 No.558916834
>「神に誓うな、俺に誓え、サキ」 これは100回以上です。するわ
19 19/01/02(水)00:09:35 No.558917148
姐さんはそのへんの教養はみっちり仕込まれてるんだろうな…
20 19/01/02(水)00:09:40 No.558917168
>昨年までのまとめ 明けましておめでとうございます よかサキ幸詰め合わせでありがたい
21 19/01/02(水)00:09:52 No.558917220
まあほんとうに神から裁きを受ける側なのは…
22 19/01/02(水)00:11:22 No.558917647
巽は神なんて蹴散らす気概だからな…
23 19/01/02(水)00:11:49 No.558917791
ゆうぎり姐さんには敵わねえや!
24 19/01/02(水)00:12:04 No.558917866
裁きなどさせないからな
25 19/01/02(水)00:15:48 No.558918838
やーらしか…姐さんの確かな仕事
26 19/01/02(水)00:21:34 No.558920315
含蓄ある物語書けるの羨ましい
27 19/01/02(水)00:22:20 No.558920511
イヤリングも好きだけどこの指輪も結構すき
28 19/01/02(水)00:23:58 No.558920905
姐さんはわからないんじゃなく測り知れないのか
29 19/01/02(水)00:26:54 No.558921598
愛ちゃん・・・
30 19/01/02(水)00:33:00 No.558923014
愛ちゃんが頭のかわいい子みたいになっとる!
31 19/01/02(水)00:34:47 No.558923418
>愛ちゃん・・・ >愛ちゃんが頭のかわいい子みたいになっとる! え?何?
32 19/01/02(水)00:36:44 No.558923835
愛ちゃんは座ってて!
33 19/01/02(水)00:37:25 No.558923998
>愛ちゃんが頭のかわいい子みたいになっとる! 優しい言い方!
34 19/01/02(水)00:38:29 No.558924232
神に裁かれるべきは自分と考えているが、彼女たちが裁かれるのは我慢ならない男
35 19/01/02(水)00:51:44 No.558927338
よかったい
36 19/01/02(水)00:55:07 No.558928110
よか…