『あなた達は先に次のジムに行きなさい』
そう告げた時の二人の顔が脳裏に焼き付いています。
驚き、動揺。それらがないまぜになったような表情は、私の胸に刺すような痛みを与えました。
それに耐えられず、私は逃げるようにその場を去りました。
走って、走って、転んで、走って、躓いて。
気が付いたとき、私はエンジンシティの入口、その階段に座り込んでいました。
いつのまにか日は沈み、月がその顔を出しています。
「……何をしているのでしょうね」
自嘲と共に、私は手持ちのポケモンたちを外に出します。
しばらく、スボミーインに戻る気は起きないでしょう。
ならば、彼らに息抜きをさせておきましょう。すると、バチンキーがわたくしの隣でピアノを弾き始めました。
「あなた随分とそれがお気に入りですのね」
エンジンシティで購入したトイピアノ。わたくしから見ればただのおもちゃなのですが、それを楽しそうに奏でるバチンキーの姿が微笑ましくて、
「わたくしの屋敷にはもっと立派で、大きなピアノがありますの」
ピクリと、バチンキーが反応します。
20/01/18(土)23:50:43
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