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ナックルシティのホテルに滞在してから三日目の朝。
わたくしはいつものようにベッドの上で本を読んでいました。
傍らではバチンキーがトイピアノを奏でています。
そのメロディは時たま音を外しますが、以前と比べるとずっとなめらかで、彼の努力が見えます。
わたくしが指導した甲斐があるというものです。
この音楽に包まれながら、本を読む。
それが、わたくしが今できる唯一の事でした。
『いつまで?』。そんな事を考えなくてすむのですから。
だから、今はただページを次に進める事だけを考えて、文字を追います。
そして、次のページへ行こうと繰った時、バチンキーが奏でるピアノのメロディが突然止まりました。
わたくしは、読んでいた本から目を離しどうしたのですか?と尋ねます。
バチンキーは部屋の扉をじっと見つめ、つられてわたくしもそちらを向きます。
すると、コンコン。とノックが鳴りました。
『お嬢様、私』
20/01/31(金)23:27:41
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