虹裏img歴史資料館

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22/09/25(日)01:12:27 「えっ... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1664035947493.png 22/09/25(日)01:12:27 No.975274847

「えっとぉ……ワガママかもしれないんですけど、お願いがあるんです……」 彼女がそう切り出したのは週末の練習終わり、いつの間にか日課になっていた彼女を撫でる時間の最中であった。 「そのぉ…今もこうしてトレーナーさんにご褒美として頭を撫でてもらってる上にお願いするなんて、おこがましいとは思うんですけど…」 「いやいや、ドトウはいつも頑張ってるんだから、これくらいならお安い御用だよ」 「ふわぁ……撫でられてるときに褒められると…キャパオーバーで……頭がぽわぽわしますぅ………じゃなくって!あの、明日……よろしければ、なんですけど…トレーナーさんと、お出かけ…したいなって」 当然断る理由はない。それに彼女から積極的にこちらを誘うのは大きな成長と言えるだろう。以前の彼女であったら自分のドジに他人を巻き込むことを恐れて休日に人を誘おうとしなかったはずだ。 「もちろんいいよ。会う場所と時間を決めておこうか」 「その、それももう決めてあって……」

1 22/09/25(日)01:12:56 No.975275002

翌日、ドトウが待ち合わせ場所に指定したのはトレセン近くの駅前広場。周りにはショッピングモールやカラオケ、ゲームセンターなどもあり学生が遊ぶにはうってつけと言える場所だ。待ち合わせの時間は11時、休日ということもあり辺りは人で賑わっている。 ……しかし、肝心の彼女は約束の時間の30分を過ぎても来ない。例のごとく、なにか不運に巻き込まれているんだろうが心配である。 「ト、トレーナーさぁぁぁぁん!ぜぇ……ぜぇ……遅刻して、ごめんなさいぃ…昨日の夜、髪の毛とか、まとめてたんですけど朝起きたら爆発しちゃってて……あと、カラスにびっくりして転んじゃったり…とにかく色々ありまして……」 「君が無事ならそれで良かったよ。それで、どこに行くの?」 「あ、えっとですね……とりあえずお買い物にいきませんか?あそこのショッピングモール、色々あって楽しめると思うので…」 「いいよ。案内してくれるかい?」 「はい!もちろん………あ、手……握ってもいいですか?はぐれちゃうと嫌ですし……安心、しますし…」 「もちろん、どうぞ」

2 22/09/25(日)01:13:08 ID:RRJ5LJj6 RRJ5LJj6 No.975275061

削除依頼によって隔離されました ウマムスマー乱立中

3 22/09/25(日)01:13:12 No.975275090

彼女に手を引かれながら人混みをかき分けてショッピングモールへ向かっていく。彼女の瞳はさながらレース中、何かを必死に目指しているようだ。そうして人に揉まれながら辿り着いた先はショッピングモールの中、全国に展開しているいわゆるチェーンの書店であった。 「トレーナーさん、お好きな本や漫画を探してください。なんでも私が買わせていただくので……」 「うーん、あまり漫画とか読まないんだよな……それに、欲しい物があるなら自分で買うから大丈夫だよ」 「うぅ……!それなら別の所へ……」 「あっ……ドトウが表紙の雑誌だ。この間の取材のやつだね。これ買っていくよ」 「え、えぇー!?わ、私が載ってるものを……?」 「そりゃもちろん。君の担当トレーナーでもあるしファンでもあるからね」 「そう言ってくれるのは……嬉しいんですけどぉ…これだと…」 雑誌を買い終えたら何やら一人で悩んでいるドトウの手を引いて書店を出る。どうも、このお出かけにはしっかりとした計画や目的地があるわけではないようだ。

4 22/09/25(日)01:14:09 No.975275406

「それで、次はどこへ行こうか。」 「えぇっと……次は………こっちに行ってもいいですか…?」 ドトウに連れられて訪れたのはショッピングモールの奥、女性用下着を売っているランジェリーショップだった。 「ドトウ、ここはその……」 「ちょ、ちょっと恥ずかしいですけど……トレーナーさんが選んでくれるなら私、買いますので…」 「いやいや、流石にそれは…」 「うぅ……やっぱりトレーナーさん、嬉しくも楽しくもないですよね……こんな私の下着を決めるなんて…」 「いや、というより恥ずかしさが大きすぎるというか……社会的にもちょっと…別の場所に行こうか」 「あぁ……さっきからやっぱりダメダメですぅ……」 ランジェリーショップの前で会話しているだけでこちらとしては冷や汗もの。特にドトウの方は何度も重賞レースで善戦している有名人。もしこの場面をそれを知る誰かに見られたらと思うと居ても立っても居られない。とりあえずこの場を移動しようとした矢先、彼女の腹が大きな音を立てて二人の会話を遮った。 「あっ………ひぅっ……あのっ…どうか……お気になさらずにぃ……」

5 22/09/25(日)01:14:55 No.975275682

彼女は涙目になってそう訴えるがちょうど自分もお腹が空いた頃、ここはどこかでお昼ごはんを食べようということになった。 「えっと……トレーナーさんが食べたい所でいいのでぇ…選んでください」 流石は駅前の商業施設。案内を見ると様々な料理店、フードコートの店などが多く存在する。これが一人ならばどこにするべきか悩んだだろう。しかし今日は彼女と来ている。ならば…… 「えぇー!?ここでいいんですか?その……いつでも食べられるお店、だと思いますけど…」 「この前ドトウがシャトルと行ってたのを思い出してね。好きなんだろう?ここが」 「好き……ですけど…私のことはいいんです!トレーナーさんが喜んでくれないとこのお出かけの意味が……」 「ドトウの嬉しい様子が見れればこっちも楽しいからさ。さっきから色々こっちを気遣って回ろうとしてくれてたんだろう?」 「はい……今までのお礼とかにもしたいし、トレーナーさんが喜ぶところを見たくて…」 「それならさ、ドトウが無理とか我慢しないで楽しんでくれたら僕も楽しめるよ」

6 22/09/25(日)01:15:20 No.975275822

話しながらたどり着いたのは有名ファーストフード店、彼女の言う通り食べようと思えばいつでも行けるような店だ。 「並んでるね……まぁこの時間ならそうか。僕らも並ぶ?」 「もちろん、トレーナーさんがいいなら一緒に並びますけど……本当の本当に今日は私も楽しんじゃっていいんですか…?」 「もちろん。君も僕の喜んでいるところが見たかったんだろう?僕も同じ気持ちってことだよ」 「そっか……そうだよね、うん!それじゃ、並んでる間、おしゃべりしてもいいですか……?」 そのまま列が気ままに進むのに合わせて、僕らも他愛のない話を楽しんだ。話題はもっぱら、彼女の同期であるオペラオーやアドマイヤベガ、ナリタトップロードとの日常だ。どこか緊張していたさっきまでの彼女から一転して、笑顔などが見える普段と同じの様子にこちらも嬉しくなる。 「それで、オペラオーさんはやっぱりすごくて、扉が開くまで二人でオペラをやってたんですぅ……」

7 22/09/25(日)01:15:21 ID:M6t6.X7o M6t6.X7o No.975275837

削除依頼によって隔離されました ムスマー急にどした?マジで

8 22/09/25(日)01:15:46 No.975276001

彼女の話を聞いてるうちにカウンターの前まで順番が回ってくる。遠慮がちな彼女に好きなだけ食べなよと促すとこちらの注文の倍以上の量を頼んだ。我慢しない彼女の姿を見ているとこちらも気分がいい、そのことを改めて伝えて唯一空いていた狭い二人席に座り込んだのだった。 「モグモグ……ハムッ……おいひいれふ!ふぉれーなーふぁん!」 「落ち着いて食べていいからね。美味しそうに食べるドトウを見てこっちも楽しい気分だよ」 「……ぷはぁー……あの、トレーナーさんが嫌じゃなかったら…なんですけど、このハンバーガーとっても美味しいので…その、私がちょっと食べちゃってるんですけど…一口、いかがですか……?」 「いいのかい?君がいいなら、いただくよ」 「はい!どうぞ………」 彼女が注文したバーガーは新発売のスパイシーを謳う一品。普段は辛いものをあまり頼むことはないが彼女が差し出したそれはそんな自分でも美味しいと感じる絶妙な辛さで間に挟まれている溶けかけのチーズも相まって非常に病みつきになる味だった。 「美味しいね、これ!ドトウもこっちのバーガー食べなよ」

9 22/09/25(日)01:16:19 No.975276204

「いいんですかぁ……?はぐッ………ふわぁ……トレーナーさんの味………あぁぁぁ!すみません違うんです気持ち悪いですよねごめんなさい!」 慌てる彼女をなだめながらバーガーを食べ進めていく。彼女のトレーに積まれていたものはみるみる無くなっていき、二人とも自分の腹を満足に満たすことが出来たようだった。 「お腹いっぱいになったし、次はどこへ行こうか」 「あのぉ……カラオケ、とかどうでしょうか……?私、上手く歌うのは苦手ですけど歌うことは好きですし……トレーナーさんも楽しめるかなぁって」 「いいねぇ。それじゃあカラオケに行こうか」 ショッピングモールにファーストフード店、カラオケなど学生時代を思い起こさせる日だな、と思うのと同時に彼女が学生であることを思い出す。変に背伸びをするより、これくらい等身大に楽しく過ごしている方がこちらも日常を忘れられるというものだ。 「うまうまうみゃうにゃ3,2,1,fight!……噛まずに言えましたー!」 「ドトウ、ちゃんと続きも歌わないと!」

10 22/09/25(日)01:16:39 No.975276303

流石は何度もライブをこなしているだけあり、彼女の歌は上手いと言う他なかった。更には英語やドイツ語の歌まで詰まること無く歌い上げていく。……半分くらいは童謡ではあったが、彼女の新たな一面を垣間見ることができて非常に楽しい時間を過ごすことができた。 「たくさん歌ったね。そろそろ遅くなってきたし、帰ろうか」 「あっ……最後にどうしても行きたい場所があるんですけど、一緒に来てくれませんか……?」 そう言う彼女の瞳は、今日一番の自信に満ち溢れていて。何か話しかけることもできず人がまばらになり始めた暗い街を彼女に手を引かれながら進んでいったのだった。 彼女が進んだ先はトレセン学園の近くにある山道、ウマ娘がトレーニングに使うこともある山の中であった。 「えぇっと……こっちで合ってる?よね……」 何やら不安げな彼女の様子を見て何か手助けができないかと思案するが、すぐに彼女が見せた決意を感じさせるあの顔を思い出し彼女に任せようと決める。そもそも、今日一日の出来事も彼女の提案から始まったものだ。どんな意図かもわからないが、今はドトウを信じよう。 「あっ……こっちです!こっち!」

11 22/09/25(日)01:16:55 No.975276389

彼女が指差す方向には、木々が開けちょうどその場所から街を見下ろせるような崖になっている部分があった。見る人が落ちないように柵が置いてあるところから考えると、山道を作る時に一緒に用意されたのだろうか。 「ここ……凄く景色がキレイで……練習してるときにここを見つけて、トレーナーさんと一緒に見たいなって思って……それで、私がドジしちゃってトレーナーさんが落ちないように柵を持ってきて用意したんです」 「この柵、君が用意したのか……」 「はい!なので安心してトレーナーさんと景色を見れます」 彼女の言う通り、人工の灯りが一つもない山から見下ろす光に満ちた街は、まるで海のようだった。この海の中で、無数の人がまだ眠らずにうごめいてることを考えると自分もそれらと同じ小さな存在だと思えてくる。 「どうでしょうか……?私はこの景色、凄く好きなんですけど……」 「いいね、この景色。きれいだよ」 「よかった………それで、この場所でお伝えしたいことがありまして…」 景色からこちらに顔を向ける彼女の顔は、再び決意と自信に溢れていた。

12 22/09/25(日)01:17:13 No.975276491

「こんなこと、言われても迷惑だと思いますし……トレーナーさんが駄目だって言っても私、諦めが悪いので困らせちゃうとは思うんですけど、だけど、絶対にこのことは伝えなくちゃって思うから……フクキタルさんの占いとか、アヤベさんのアドバイスとかも聞かないで、私だけで頑張って今日ここまで来て………途中で空振りしちゃったりもしたけど……だけど伝えたいことがあるんです!」 「うん。聞かせてくれないか」 「私がレースを引退したとしても……卒業したとしてもトレーナーさんとは一緒にいたいんです。こんな私ですけど、トレーナーさんと何度も起き上がって進んでいきたいって、トレーナーさんが好きでいてくれる私でいたいって思うんです。だから………私をあげます!なので……トレーナーさんを私にください!」 まっすぐこちらも思いを返さなきゃな。そう思ってしまうほどにひたむきで、強い想いのこもった告白だった。大人として、指導者としてではなく、一人の人間として答えなくてはならない問いだった。そうであるならば、答えに悩む必要はない。 「こちらこそ、こんな僕ですが。よろしくお願いします」

13 22/09/25(日)01:17:25 No.975276563

そのままその日はお互いに顔を赤くして大したことを話せずにそれぞれの帰路へと着いた。具体的に何が変わったと説明することはできないが、別れ際に名残惜しそうにお互いの手を握りあったのは今までになかったことと言えるだろう。 翌日、トレセン学園に出向くと道行くウマ娘が自分を見ては何かを噂している。どういうことか分からぬままトレーナー室を目指していると呆れた顔をしたアドマイヤベガが噂の出処と内容を教えてくれた。なんでも昨晩、ドトウと僕がお互いを捧げあったという話が本人から語られトレセン学園中大騒ぎらしい。教室のスピーカーから流れる理事長からの呼び出しを聞きながら、これから待ち受けるだろう数々の困難と彼女のことを思い、嬉しいような疲れるような微妙な感情を抱きながら理事長室へ向かうのだった。

14 22/09/25(日)01:19:48 No.975277390

甘々ドットさんを書きたいので書きました。 あと、リアルタイムでは見れなかったのですが怪文書感想スレで作品がいくつか話題に上がっててとても嬉しかったです。読んでくれるだけじゃなくて好きだと言ってくれてありがとう。 モチベになります

15 22/09/25(日)01:21:55 No.975278145

全うにいい話いい文章で「」向けじゃねえぜPixiv辺りに投げたほうが評価もらえる

16 22/09/25(日)01:24:05 No.975278832

これはありがたい…

17 22/09/25(日)01:25:54 No.975279356

尊い…ただそれに尽きる

18 22/09/25(日)01:25:57 No.975279372

イチャイチャデート良い…

19 22/09/25(日)01:26:44 No.975279599

ヒソヒソ…覇王世代は進んでるわね…

20 22/09/25(日)01:29:15 No.975280381

割と理想のドトウとトレーナーがくっつくまでの流れで素晴らしい…

21 22/09/25(日)01:32:53 No.975281486

「ください」が言えるまでかなりの時間を覚悟を要したんだろうな…

22 22/09/25(日)01:48:54 No.975286481

端々まで可愛くて幸せな気持ちになった ありがとう…

23 22/09/25(日)01:54:08 No.975288111

これは良き…ありがたい…

24 22/09/25(日)02:00:05 No.975289951

伝言ゲームがすごい

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