虹裏img歴史資料館

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22/09/25(日)01:07:49 頭が痛... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1664035669457.jpg 22/09/25(日)01:07:49 No.975273221

頭が痛い。目の前もモヤモヤしてよく見えない。 体中が痛くて寒い。なのにお風呂に入りすぎた時みたいに熱くてしんどい。 体が浮いているようなふわふわしているし、息をすると鼻水がグズグズと音を立てて気持ち悪い。 「ううっ……」 なんだかぜんぶが嫌になって、涙が出てくる。 「ぐすっ……ひぐっ……」 「お嬢様。もうすぐ旦那様と奥様も帰ってこられますから」 お手伝いさんはそう言って涙と鼻水を拭いてくれるも、お父様もお母様もお仕事で帰ってくるのはいつも夜遅く。お兄様とお姉様も学校だ。 だから、家にはお手伝いさんと私と妹しか居ない。

1 22/09/25(日)01:08:14 No.975273364

遠くで扉が開いて閉まる音がするのが聞こえて、お手伝いさんがどこかへ行ってしまう。 「お帰りなさいまし」 「ルドルフの具合は?」 お父様の声? 「熱は38度7分、スポーツドリンクとアイスクリームをお召し上がりになりました。解熱剤もその時に」 「わかった、ありがとう。あとは私たちが看るよ」 お父様とお手伝いさんがなにか話しているのが聞こえる。お父様、お仕事で居ないはずなのに。

2 22/09/25(日)01:08:40 No.975273518

「ルドルフ」 目を開けると、お父様が見える。夢なのかな。お父様は「ルドルフ」と私の名前を呼んで、頭を撫でてくれる。 「もうすぐお母様も帰ってくるよ」 「お母……様……?」 お父様は、「そうだよ」と言って私の頭を何度も撫でてくれる。 「今日はずっと傍に居るから、安心して眠りなさい」 私の手を、お父様がギュっと握ってくれる。硬くて、大きくて、あたたかい手。お父様が居て手を握ってくれて、お母様も帰ってくる。 それがわかるとほっとして、私はいつのまにか眠ってしまいました。

3 22/09/25(日)01:09:04 No.975273675

情けない。 日頃、皇帝などと言われている私が風邪で休んでしまうとは。 体調管理も仕事のひとつ、生徒会が忙しいだとか何の言い訳にもならないと言うのに。 ……それにしても風邪で寝込むなんて、何時ぶりの話だろう。 幼いの頃にはあったけれど、帝道を目的とした時から、病気などしないように心がけてきたのだから。 これが学園内で、流行性感冒でも流行しているのならまだしも(いやそれでも、か?)、なんでもない風邪で休むなど両親が知ったら叱責することだろう。 それにしても、ほかの皆が学業にあるいはトレーニングに励んでいるなか、一人風邪で寝込んでいるというのはどうにも心が落ち着かない。 トレーナー君もエアグルーヴも1日くらい何もかも忘れて休むようにと言うが、ただ大人しく寝ているだけというのがこれほど苦痛だなんて。

4 22/09/25(日)01:09:27 No.975273820

「はぁ」 自分に呆れてため息をつくと、それほど大きい音ではないはずなのに部屋中に響き渡る。 元々この部屋も相部屋ではあるのだが、私と部屋を共にする生徒が居ないため一人部屋になっている。 いささか複雑な気分ではあるものの、一人で使えるのは気楽さもあった。 だが、今日ばかりは。 やはり病気の時に独りなのは心細い。 たかが風邪とはいえ、体が弱っているせいなのだろうな。 そういえば、昔風邪をひいた時も、"寂しい"って思ったこともあったか。 たしかあの時、傍にはお手伝いさんが居て、それでも――――。

5 22/09/25(日)01:09:44 ID:.Fe/j96c .Fe/j96c No.975273900

スレッドを立てた人によって削除されました ウマムスマー乱立中

6 22/09/25(日)01:09:45 No.975273905

コンコンコンとノックが軽やかに三度鳴る。 「会長?入っても良いかい」 美浦寮の寮長、ヒシアマゾンの声だ。 どうぞ、と答えると扉が開いて入ってくる。 「失礼するよ会長」 「会長に見舞客だよ。具合が悪そうなら追い返すけど、どうする?」 「いや、大丈夫だ。見舞客とは……一体誰だい?」 テイオーかエアグルーヴだろうか。 独りは心細いだなんて思いつつも、正直なところ誰にも会いたくないというのも本心のひとつだった。 風邪で弱って寝ているところなど、友人や後輩に見られたくはない。 「会長のトレーナーだよ」 「は……?」 トレーナー君?なんで、どうして。思わず頓狂な声が出そうだった。

7 22/09/25(日)01:10:02 No.975273988

今朝方、学園に病欠の連絡を行うのと同時に、彼にも風邪で休む旨は伝えていた。 それ以来、連絡を取っていないから心配したのかもしれない。 気にかけてくれるのは嬉しいけれども……そもそもどうしてヒシアマゾンは彼を寮に入れたんだ。 どうしよう、帰ってもらおうか。それもなんだか悪い気がする。いつもなら即断即決できるのに。 「……とりあえず、彼を入れてくれ」 ヒシアマゾンは「あいよ」と言うと、振り向いて首を縦に振り、寮では決して見ることのない人間――トレーナー君が部屋に入ってくる。 「お、お邪魔します……」 「それじゃ用が済んだら受付に電話しておくれよ」 ヒシアマゾンはそう言い残すと、足早に去って行ってしまった。

8 22/09/25(日)01:10:23 No.975274121

パタンと扉が閉まる音が部屋に鳴る。 なるべく、彼と顔を合わせないように、布団を被って出来るだけ顔を隠す。 「あー、その、ルドルフ……?」 「ウマ娘寮が、君たちトレーナーの立ち入りを禁止していることは承知の規則だと思うが」 まず礼を言うべきなのに、思わずつっけんどんな言い方をしてしまう。 だが、実際のところウマ娘寮はトレーナーの立ち入りを原則として禁止している。私は間違ったことを言っているわけではないのだ。 本来ならば、私のトレーナーであろうと、贔屓することなく原則に乗っ取り即座に退出するように言うべきなのだろう。

9 22/09/25(日)01:10:39 No.975274188

「それに、規則以前に訪ねに来るなら、一言くらい私の連絡を入れるべきだよ」 「今の私は、人に見せられない姿をしていて……君の知っている私は、そんな姿を他人に見られたい思うだろうか」 規則も勿論だが、個人的にはこれが一番の理由かもしれない。 髪の毛はぼさぼさ、体は汗ばんでいるし、顔は火照っているだけでなく浮腫んでだっているかもしれない。 ここがもし、寮ではない一人暮らしの部屋だったとしても、風邪をひいて身だしなみを整えていない姿なんて、他人には見せたくないものだ。 トレーナー君が相手だと尚更そう思ってしまう。

10 22/09/25(日)01:11:00 No.975274306

「……そうだな、ルドルフの言う通りだよ。ごめん」 彼は、数秒ほど無言になった後にばつの悪そうな顔をして、手に持っているショッパーを私に見せるように差し上げる。 「その、差し入れを持ってきたんだ。これだけ冷蔵庫に入れさせてくれないか?そうしたらすぐに退散するよ」 「そうしてもらえると助かるよ」 莫迦。何を言ってるんだ私は。 誰も来てほしくないけれど、独りは嫌だったんじゃなかったのか。 いくら風邪で寝込んでいる見られたくないからって、テイオーやエアグルーヴ相手に、同じことを言っただろうか。 私の許可を得た彼は恐る恐る、しずしずと部屋に入ってくる。

11 22/09/25(日)01:11:24 No.975274442

「冷蔵庫、これで良いの?」 「えっ?ああ……」と返すと彼は冷蔵庫を開けて持ってきたものを入れていく。 彼を引き止めないと、このまま帰ってしまう。 あんなこと言って、一度帰ってくれと言った相手に、やっぱり帰らないで。なんてなんてわがままなんだろう。 「……トレーナー君」 「その、すまなかった。お見舞いに来てくれた君に取るべき態度ではなかった」 「来てくれて、ありがとう」 「まあ、ルドルフの言ってることの方が正しいから。ただ……」 「LANEでは、ただの風邪で校医に診てもらったし心配はいらないとあったけど、ルドルフはどうしてるんだろうって気になってさ。入れてもらえないだろうと思ってたけど来てしまったんだ」

12 22/09/25(日)01:11:53 No.975274621

「でも、ルドルフが見られたくないとか、そこまで思い至らなかったよ。ごめん」 「俺は気にしないけどさ、確かに女の子だったら見られたくないとか、あるよな。部屋とかも」 「その、だよ。トレーナー君」 顔を隠していた布団をゆっくりと下ろし、手ぐしでボサボサであろう髪の毛を梳いてなんとか整える。 彼は気にしないと言ったけれど、恥ずかしい。 「トレーナー君に時間があれば、だけれども。今の私は……暇を持て余しているんだ」 彼は、「そっか」と言うと、ベッドの横に椅子をおいてそこに座る。

13 22/09/25(日)01:12:25 No.975274834

「具合はどう」 「朝方は38℃ほどあったが、医者の処方してくれた解熱剤を飲んでからはずいぶんと楽になったよ」 「それは良かった」 「情けない話だよ。私が風邪で休んでしまうとは」 「人間、誰だって風邪くらいひいて――」 トレーナー君は言いかけた途端、顎に手をあてて俯いてしまう。 「……いや、それだけ熱が出る風邪なら、昨日のトレーニングの時点で俺が異変に気が付いていないといけないな」 「これは私の自己管理の範疇の話だよトレーナー君」 彼はトレーナーとしての責任感ゆえか、納得いかないという面持ちで「だが」と言いかけて口をつむぐ。 「とにかく、症状が治まったからと言って無理はしないことだよ」 「明日はトレーニング無し、もう1日しっかり休んだ方が良いよ。病み上がりに普段と同じように動いたら、また体調を崩しかねない」 「本当は授業も出ない方が良いけど……。生徒会はエアグルーヴ達に任せてさ」 「……そうだね、生徒会はエアグルーヴに任せておくよ」

14 22/09/25(日)01:12:45 No.975274942

「念のために、聞いておきたいことがあるんだが」 「どうやって寮に入ったか、を?」 首を縦に振って答える。ヒシアマゾンが案内していたとはいえ、生徒会長である私にとってはもっとも気がかりな件だった。 「当然、ヒシアマゾンには駄目だって言われたよ。『会長のトレーナーであろうと、特別扱いはできない』って。」 「それはそうだろうね」 「でも」 「ヒシアマゾンとは時々頼み事とか受けたりするからね。日頃の行いというか、貸し借りの一環としてヒシアマゾンに入れる理由を作ってもらったんだ」 予想はしていた回答に、思わずうめき声が出てしまう。 ……原則というものには例外がある。だから、原則立ち入り禁止でもトレーナー君は私の部屋にお見舞いに来ることが出来た。 それは嬉しくてありがたいけれど、それでもどこか生徒会長である私にとっては納得し難い話だった。 相反する二つの感情に困った私は、"寮長たるヒシアマゾンが、許可を出した"という結果から彼女の良識を信じることにして、この問題をゴミ箱に捨てることにした。 彼は、そんな私のわだかまりを察したのか、話題を変えてくる。

15 22/09/25(日)01:13:09 No.975275076

「それよりさ、買ってきたお菓子、どう?プリンとかアイスとか。栄養ドリンクとかもあるんだけど」 「これノンカフェだから寝る前でもいけるやつ」だとか、持ってきたものをひとつひとつ指を折って数えながら紹介してくる。 「ずいぶんたくさん買ってきてくれたんだね」 「何を買えばいいのかわからなくてさ。食事とか薬は学園が用意してくれるから、お菓子かなあって」 「ちょうどおやつの時間帯だし、食欲があると良いんだけど」 「それじゃあ頂こうかな」 彼が冷蔵庫に入れたものに、ケーキ箱があったことを思い出す。 どこか洋菓子店で買ってきてくれたのだろうか。 「ケーキ箱の……」 「ああ、プリンね」

16 22/09/25(日)01:13:33 No.975275205

トレーナー君は冷蔵庫を開けて紙箱からプリンを取り出すと、私に手渡してくれる。 「ありがとう」 「このプリン、駅の……」 「そうそう、あそこのなめらかプリンってやつ」 プリンをすくったスプーンを口に含むと、甘い口どけなめらかなプリンが喉を刺激せずに通り越していく。 まだ熱の残る火照った体に、冷たいプリンが心地いい。 「美味しい」 「それは良かった」 お昼は薬を飲むために少し食べたくらいだから、空腹状態なのもあって自然と手が進んで――。

17 22/09/25(日)01:13:56 No.975275342

視線を感じて手が止まる。黙々とプリンを食べる私の姿を、トレーナー君が緩んだ顔で見つめてくる。 「そんなに見つめられると食べにくいよ」 「ああ、ごめん」 「ルドルフが美味しそうに食べているから、つい」 嫌ではないけれど、子供扱いされているみたいでなんともこそばゆい。 まあ、彼は私より年上だから、子供扱いしてくるのも仕方がないのかもしれないけれども。 妙にニコニコしながらこっちを見てくるので、なるべく多くプリンをすくって食べ終えてしまう。

18 22/09/25(日)01:14:23 No.975275500

「じゃあ、俺はそろそろ帰るよ」 トレーナー君は、私が食べ終えるのを見るとゆっくりと立ち上がり、椅子を片付けようとする。 「もう帰ってしまうのかい」 「良くはなったのだろうけど、まだまだ君は体を休めないと」 気が付くと、彼と小一時間ほど話していたようだった。 いくら許可を得ていても、いつまでもトレーナーがウマ娘寮に居てはいけないだろう。 でも、帰ってほしくない。 話をしなくたってもいい。 子供扱い。 そうか、子供になったら。

19 22/09/25(日)01:14:48 No.975275655

「トレーナー君」 「うん?」 「帰る前に、ひとつ私のお願いを聞いてくれないかな?」 「いいけど、なに?」 「手を出してほしいんだ」 トレーナー君は「手?」と不思議そうな顔をしつつも、素直に手を出してくるので、その手を握ってみせる。 男性らしい、節くれ立った関節が浮きだっている手。 玩ぶように握ったり離したりしていると、あることに気が付く。 「トレーナー君、意外と手が小さいんだね」 彼の手が小さいというより、私の手が大きいのかもしれないが、つまり言いたいのは、私とそう変わらない大きさの手なのだ。 彼は困ったような顔をして肩をすくめる。 「手が小さくて得したことは無いな」 「私にとっては握りやすくてあたたかい良い手だ」 ぎゅっと彼の手を握ると、彼もまた握り返してくれる。

20 22/09/25(日)01:15:08 ID:xyxCEw0g xyxCEw0g No.975275738

スレッドを立てた人によって削除されました え?ムスマーどした?

21 22/09/25(日)01:15:08 No.975275742

「子供の頃の話だ」 「今日と同じように熱を出して寝込んだことがあってね」 「熱でうなされて苦しい時に、誰かが私の手を握ったんだ。硬くて大きい手だった」 「父だった。仕事で居ないはずの父が、私の手を握ってくれていたんだ」 「その後は母も帰ってきて……。両親が傍に居てくれると思うと、不思議と安心して眠ることが出来た。幼少期の思い出のひとつだよ」 「優しい思い出だ」 「うん」

22 <a href="mailto:おわり">22/09/25(日)01:15:34</a> [おわり] No.975275932

「私が眠るまでの間で良いんだ。君の手を借りていたい」 彼が微笑む。 「そういうことなら。君が望む限り」 そうか。私が望む限りか。 ならば、明日の朝までこの手を離さないでおいてやろうか。 硬くて小さいあたたかい手を握りながら、私は瞼を閉じた。

23 <a href="mailto:s">22/09/25(日)01:17:04</a> [s] No.975276443

風邪ひいてボロボロな姿見られたくない!ってなる会長が見たかった

24 22/09/25(日)01:17:17 No.975276524

弱々しい皇帝いいよね...

25 22/09/25(日)01:19:31 No.975277285

育成の時点でもう既にボロボロな姿見られたくない!というかこれではふさわしくない…で折れかけてたからまぁこうなるのも想像に難くないよね… それはそれとして周囲に支えられてる会長も良いものだ

26 <a href="mailto:s">22/09/25(日)01:22:59</a> [s] No.975278514

会長も化粧水とか使ってるし結構ちゃんと女の子やってるから 女の子としてなんの手入れもやってない姿見られたくない思っちゃうの だいぶあると思うんですよ

27 22/09/25(日)01:24:04 No.975278829

あーいい…普段つよつよなカイチョーがトレーナーにだけ見せる弱さがいい…

28 22/09/25(日)01:29:25 No.975280442

読んでてやっと理解した ルドルフのトレーナーは「(ルドルフ相手でも)普通の感性」が1番の武器なんだな…

29 22/09/25(日)01:35:08 No.975282262

等身大に接し合える二人いいよね……

30 22/09/25(日)01:36:05 No.975282589

>これが学園内で、流行性感冒でも流行しているのならまだしも(いやそれでも、か?)、なんでもない風邪で休むなど両親が知ったら叱責することだろう。 こういう時は普通に心配するだろうしそういう所だぞカイチョー

31 22/09/25(日)01:39:09 No.975283598

素直にデレてイチャつくカイチョー好き

32 22/09/25(日)01:44:18 No.975285181

与えられた立場故に背伸びしてそれを完璧に演じ切っている女の子がちょっと休憩して普通の女の子に戻るのいいよね...

33 22/09/25(日)01:49:55 No.975286789

カイチョーそこそこ足大きいから 女の子基準でお手手もそこそこ大きそう

34 22/09/25(日)02:04:27 No.975291221

良いものを読んだありがとう

35 22/09/25(日)02:13:55 No.975293696

トレーナー君にツンツンなのも甘えてるんだよね

36 22/09/25(日)02:13:59 No.975293722

会長の「自分が悪い」病はトレーナーくんがつきっきりで治してあげないといけないからな…

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