22/09/12(月)21:26:51 「かき... のスレッド詳細
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22/09/12(月)21:26:51 No.971042799
「かき氷?」 「うむ!!かき氷だ余!!!!」 9月の空の下、蝉の声。まだ夏の余韻を色濃く残す陽気の中 木陰で本を読んでいたところに突然現れたシャフリヤールが言い出したのは、また突然のことだった 「商店街の端のあたりに、特別美味しいかき氷を出す喫茶店があるという。まだ残暑も酷い、今のうちに行ってみぬか余?」 「ふむ……」 「何だ?かき氷は苦手か?」 「いや、そんなことはない」 本にしおりを差し込み閉じ、立ち上がってズボンについた芝を払う
1 22/09/12(月)21:27:03 No.971042882
「普段、あまり自分から食べようとしていなかったな、と。ふと思っただけだ」 「んー、まあお主はスイーツの類なども自分からは頼みそうにないからな。で、どうなのだ?予定は開けられるか余?」 ……かき氷。イメージだけだと、どちらかといえば喫茶店よりも祭りの屋台などが浮かぶ しかし、特別美味いかき氷だと。氷を細かく砕いた上にシロップやフルーツを乗せたものに、そこまでの差が出る物なのだろうか シャフリヤールの言う通り、幸いというべきか未だにというべきか陽気は酷暑が尾を引いている。食べに行くのであれば今の内、ということか 「今日、今からということでいいのか?」 「うむ!!話が早くて助かる余!!!」 さあさ早くと急かすシャフリヤール しかし、本当に思いついたら即行動というか。こういったところは見習うべきかどうなのか判断に迷う部分がある 普段は頼もしい限りなのだが、それ故の暴走も多々見てきている身としては………まぁ、いいだろう
2 22/09/12(月)21:27:14 No.971042950
「それはいいんだが、一度部屋に戻らせてくれ。財布も何も持ってないんだ」 「おっと、それはすまぬ余。では、三女神の像の前で待ち合わせとしよう!!!」 「そうだな。では、できるだけ早くいかせてもらうが少し待っていてくれ」 ……自分で言っておいてなんだが、本当に近年食べた記憶がない。最後に食べたのはいつだ? どこまで期待できるものなのか計りかねながらも、ひとまず今日の余暇は気まぐれ姫……姫?の、思い付きに付き合う事となった
3 22/09/12(月)21:27:31 No.971043071
● 「それで、その店と言うのは商店街の端……だったか?詳しい場所はわかるのか?」 「余も初めて行くがな、地図はもらってきた余。なんでも、サトノの令嬢が長老を誘って行った店らしい。綿あめのようなかき氷だと長老も満足しておったようだ余?」 「……だからその長老というのはやめてやれ。あの人も気にしてるんだ」 というか、少し前のたい焼きに引き続きまたあの人からか。どれだけサトノ家のお嬢様に振り回されてるんだか 色々と謎の多い年長者の交友関係が気にはなるが、今はそのおススメとやらを確かめに向かうとする 綿あめのような……また妙な表現だ。氷を削りだしたもののイメージとは大きくかけ離れている その辺もスイーツ類を頻繁に食べている層からすれば納得や想像がつく様なものなのだろうか 「お前はそう言った店に頻繁に行くのか?」 「んー、頻繁というほどにはいかぬ余。だが誘われることはあるな。そういった時に行くことはあるが、実は一人で店に入り珈琲や紅茶を嗜むことはそんなにない」 「……なら、お前もこうした甘味類は経験が少ないのではないか?」 「少なくともお主よりはよほどある余」
4 22/09/12(月)21:27:46 No.971043171
返す言葉はない。確かに自分を基準にしてしまえば大半の相手は甘味をよりよく嗜んでいるだろう 「見えてきた余。あの通り沿いの端っこの店で間違いない」 見れば、よく見かける色あせた鍵のマークの看板。なるほど、確かにかき氷ののぼりも出ている しかし見た感じでは特段の人気店舗にも見えないし、実際に並んでいる様子なども無い 知る人ぞ知る隠れた名店、ということなのか?現状では判断できないが 「いらっしゃいませ。二名様でよろしいでしょうか」 「うむ!!」 「こちらのテーブル席へどうぞ。お決まりになりましたらお声がけください」
5 22/09/12(月)21:28:06 No.971043300
店内に入ってみれば、店主らしき女性が一人。使い込まれているが清潔感漂う内装に、小さなカウンター席とテーブル席がいくつか カウンターの中には確かにそれがあった。なかなか年季の入った、やたらと重量感のある手動式かき氷機。あれが今日のメインというわけか 案内されたテーブル席に座り……この、テーブルの隅に置かれたボールはなんだ。星座占い?ルーレット?100円を入れて占いができるということか? ひとまず。目的のかき氷とやらがどのようなものなのか。メニューを見てみればそれはすぐ見つかった。期間限定と銘打たれた手作りらしい一枚のメニュー 「……イチゴやレモン、ブルーハワイなどはわかるが。マンゴーなどもおいてあるのか」 「余はこのイチジクとやらが気になる余。一体いかなるものか」 すると、店主はカウンターでその問いに微笑みと共に返してくる
6 22/09/12(月)21:28:29 No.971043461
「イチジクは白ワインで煮たコンポートにして煮汁ごと果肉を乗せたものになります。マンゴーは100%ジュースとともにシャーベット状にした果肉を乗せ、その上にカットしたものを飾っております」 「……想像していたよりもボリュームがあるのだな」 「うむ。予想外に食べ応えがありそうだ余」 てっきり、シロップのバリエーション程度かと思っていたのだが。他にもスイカやパパイヤなど、おそらくは同じように手の込んだメニューがずらりと並ぶ これは少し侮っていた。たかがかき氷、ではない。相当に拘っているらしい 「…うむ、決めた!!余はイチジクとしよう!!」 「俺は……マンゴーにしておこう。すみません、マンゴーとイチジクのかき氷を一つずつ」 「かしこまりました。少々お待ちください」
7 22/09/12(月)21:28:50 No.971043614
そういうと、店主は一度奥へと入りすぐに戻ってくる。手にしているのは想像より大きな板氷。それをかき氷機で挟み込むようにしてセットする そしてハンドルを回せば……これまた少し、予想と違う。ガリガリとした切削音ではなく、シャリシャリと澄んだ綺麗な音 砕くのではなく擦りおろしているかのような音は耳に触らず、目を凝らせばその下には淡雪のように降り積もる氷の山 手慣れた手つきで二つ分用意した上に具材とシロップが乗せられていく。この甘い香りはどちらのものだろうか 「やはり、思っていたよりも多めに乗っているのだな」 「うむ。この価格帯でこれは少々驚いた余」 そして、運ばれてきたのは……まさに美しい夏のスイーツそのものだった 「お待たせしました。かき氷のマンゴーとイチジクになります」
8 22/09/12(月)21:29:05 No.971043712
…風が吹けば飛んでしまうのではないだろうか。そう思ってしまうほどに見た目からしてきめ細やかな氷 そこに、艶やかな黄色のシロップと、凍ったまますりつぶされたマンゴーの果肉。その上に一口サイズのカットマンゴーが3つ乗って シャフリヤールのイチジクの方は色合いこそ派手ではないが、正面にいてもわかるほどに芳醇な香りを漂わせるおそらく薄紅色のシロップ。その上に載せられたとろりとしたイチジク 参った。先ほどまでの自分に猛省を促したい。これは確かに、素晴らしい品だった 「…っと、見惚れてしまった余。さあ、食べるとしよう」 「ああ。いただきます」 いただきます、と。言うが早いかかき氷にスプーンを入れ、それを頬張るシャフリヤール。1秒後にはその顔は満面の喜悦へと染まり、思わず頬を押さえてしまった 自分もシロップとシャーベットの乗った部分を掬い取って口に入れ……そして、漏れそうになる声を抑えた なるほどこれは……確かに、たまらない。そこまでスイーツにこわだらない自分だったが、これは極上だと自信を持って言えるだろう
9 22/09/12(月)21:29:23 No.971043820
「…美味い!!!!これは余が今まで食べてきた中でも最高のかき氷だ余!!!」 その言葉に思わず頷いてしまう きめ細かく擦りおろされた新雪のような氷は、ジャリッとした食感などなく舌の上にふわりと乗ってさらり溶けていく マンゴーの100%ジュースだというシロップはこんなにも主張が強いと言うのに、この儚げな氷はそれに負けずしっかり受け止め口の中をくどくすることを許さない 加えてシャーベットはかき氷本体と違って粗めにおろされており、食感と味双方ともにいいアクセントとして働いてくれて 濃厚な甘味を堪能したと言うのに、口の中に残るのは爽やかな清涼感だった 「まず氷そのものが違うのだな。今まで食べていたジャリッとしたものとは大違いだ」 「コンポートといったか、白ワインで煮られたイチジクが口の中でトロリと溶けて……これは最高だ余!!!」
10 22/09/12(月)21:29:35 No.971043908
なるほど、あの人がオススメしたというのも頷ける。これは人に教えたくなる極上の甘味だ 期間限定の文字の横の期間を見てみる。…まだもう少し余裕がある。もう一度二度、きてみてもいいかもしれない その時はシャフリヤールをまた連れてでもいいし、本を一冊持ってでもいい 全く、いい店と出会うことができた 「……エフフォーリアよ。お主のそれ、美味しそうだな?」 じゅるり、と。こちらのマンゴーのかき氷に氷が溶けきってしまいそうな熱視線を送ってくるシャフリヤール 意地汚い、とはまた違うが。まあ、その気持ちはわからないでもない。これだけ美味しいかき氷だと知ったなら、他の味も試したくなって当然と言うものだ 「一口、食べてみるか。そのくらいは全然かまわん」 「おお!!!では頼む余!!!」 すっと、かき氷をシャフリヤールの前に出そうと……出そうとして
11 22/09/12(月)21:29:45 No.971043973
「んあ」 …なぜか、眼前で目を瞑り口を開けているシャフリヤールに思わず思考が硬直する まるで親鳥に餌をねだる雛のように口を開けて待っているそれは。つまり、それは 「………シャフリ、やーる」 「ん」 早くしろ、と言わんばかりの催促を一言で済まして それはつまり、そういうことなのかと 自分で取れ、と言うのは簡単だ。だがしかし、なぜかその一言が出てこない。その一言が言えない 数秒か、数分か。自分ではもうどの程度の時間が経過したのかもわからないが……そっと。自分の使っていたスプーンを持ち 「…………」
12 22/09/12(月)21:30:02 No.971044095
ごくり、と。そっとかき氷を乗せてシャフリヤールの口の中へ 舌先にスプーンが触れた感覚に合わせ、パクリと口を閉じる。そのままスプーンを引き抜けば……うっとりとした、艶かしい笑顔 「んん~!!!マンゴー、これも絶品だ余!!!!」 「そ、そう、か。そっれは、よかった」 言葉もおぼつかない。一体、今自分は何をさせられたのか。何をしてしまったのか 新たな味わいにご満悦のシャフリヤールはそんなこと微塵も気にしていないようにも見える。耳は歓喜に揺れ動き、口元をぺろりと舐めて余韻に浸り 「これは長老に感謝せねばならんな!!!こんないい店があったとは……今度はぜひ他のメニューも試してみなければ!!」 「そ、そうだな。その時は、他のメニューを…」 鸚鵡返しのようにしか喋れない。心臓はレース直後のように打ち鳴らされ、呼吸は浅く早くなる そこに、すっと。眼前に突き出されたものが あった
13 22/09/12(月)21:30:21 No.971044226
「お返しせねばな!!!イチジクのかき氷も試してみるが良い余!!」 先ほどまで食べていたイチジクのかき氷をスプーンに山と乗せ、自分へと突き出してくるその姿 今シャフリヤールは自分に何をさせようとしている。否。そんなことは先ほどの例に照らせばすぐにわかる しかしそれを躊躇いなくやれと言われれば……言われれば…… 「………あ」 静かに。口を開き……目を閉じる 再び訪れる時間感覚の歪み。何秒、何分、何時間か。わからない。その歪んだ時間の中で舌先の感覚を待つ そして遂に訪れたそれ。甘いトロリとしたシロップを乗せられた淡雪が口の中に入れられ、また静かに口を閉じる その口からスプーンが引き抜かれた後、目をそっと開ければ……にんまりと。まるで子供のように笑う彼女の姿があった 「ふっふっふ。どうだ、イチジクの方も美味かろう余!」
14 22/09/12(月)21:30:47 No.971044392
味よりも何よりもまず別の衝撃が尾を引いていてそれどころではない 美味しかったのは間違いない。しかし、その。そういう問題ではないというか 自分の手元のスプーンを見つめる。そして、次にシャフリヤールの手にあるスプーンを 今我々は交互に、その。今手に持っているそれで……まるで ……まるで 「さあ、溶けぬうちに堪能するとしよう余!!!せっかくのかき氷なのだ、頭が痛くならぬ程度に早く食べねばな!!」 ニコニコと笑う彼女は再びスプーンを手にかき氷を楽しみ始める そのスプーンは果たして、先ほど何に使われたか。その意味など知らぬとでもいうかのように 錆びついた、いや凍りついたかのようだった腕を動かして再び自分もかき氷を掬い、口へと運ぶ …つい1分ほどか?もっとか?そんなすぐ前に、彼女の口に入ったそれを…自身の口へと
15 22/09/12(月)21:31:06 No.971044515
「先ほど見たが、ここはパンケーキなども美味しそうだ余。これは是非とも今後も通って制覇せねば!!」 「…た、食べすぎないように注意、することだ」 「むむっ。そのくらいは弁えておる余!!」 甘く、冷たく、滑らかで、優しく その感情と記憶は、生憎とかき氷のようには溶けてはくれなくて。溶けないでいてくれて 「どうした、体が冷えたか?この後珈琲でも頼むか?」 「……そうだな。苦い、ブラックがいい」 ……そうだな。深く、苦いブラックコーヒーがいいだろう。とびっきり苦いものがいい
16 22/09/12(月)21:31:19 No.971044606
「んー、この果肉のとろけ方がまた……」 「…ああ、美味いな」 窓からの日差しに照らされるその笑顔 少々自分には甘すぎるそれから目を逸らすようにして、再び夏の甘味を口にした
17 22/09/12(月)21:31:39 No.971044733
以上。ネタをもらったので酒飲んでエフ余した
18 22/09/12(月)21:35:42 No.971046288
エフフくん耐え切ったか…
19 22/09/12(月)21:38:52 No.971047612
間接…で倒れなかっただけよかったとしよう
20 22/09/12(月)21:41:59 No.971048823
本当に美味しいかき氷ってマジできめ細やかだよね
21 22/09/12(月)21:45:32 No.971050227
長老はいつもサトノのお嬢様について回られてるのか…
22 22/09/12(月)21:49:46 No.971051885
最近毎日酒飲んでない?
23 22/09/12(月)21:55:05 No.971054093
またエフ余がスイーツデートしてる…… ありがとう
24 22/09/12(月)21:55:11 No.971054136
肝臓は静かだからセーフ
25 22/09/12(月)21:58:20 No.971055478
喫茶店のかき氷というにはあまりに豪華
26 22/09/12(月)21:58:55 No.971055737
④(もしかしてこいつは俺のことが結構好きなのでは…?)
27 22/09/12(月)22:01:28 No.971056823
舎弟飲みすぎでは?
28 22/09/12(月)22:06:21 No.971058942
エフフくん倒れなかっただけヨシ!
29 22/09/12(月)22:16:29 No.971063636
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
30 22/09/12(月)22:17:36 No.971064197
>No.971063636 おちち!!!
31 22/09/12(月)22:18:42 No.971064719
>1662988589364.png これであーんされたらそりゃもう堪らんわ
32 22/09/12(月)22:20:23 No.971065481
ふぅ余ちち…