22/08/27(土)23:12:43 そよ風... のスレッド詳細
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22/08/27(土)23:12:43 No.965468062
そよ風よりも幾分強く吹きつける空気の流れ。 肌に感じるその感触のこそばゆさと心地よさで目が覚める。 「……ふあ」 ゆっくり体を起こすと、鉄枠のとっても古い扇風機がそれでも力強く緑の色の羽を回していた。 すっかり日に焼けた畳の四畳間。敷布団にタオルケット。 カーテンの隙間から射し込む朝陽は透き通った薄いレモン色をしていて。 「ん~~~~っっ!」 伸びをしてやる気を引き出し、お布団を畳んで一階へ。 誰もいない居間からサンダルを履いて土間に下り、流し横の小さな洗面台で顔洗い。 とっても冷たくて透明感の強い水。この家で使ってるのは井戸水なんだって。
1 22/08/27(土)23:12:58 No.965468176
パッチリ完璧に目を覚まして横を見ると、勝手口は開け放されていた。 年期が入って黒ずんだ木造の天井と壁、それと日陰で暗く縁どられた中で、 四角い外の景色が眩くカラフルに光ってる。 まるで絵本の表紙みたい──。 足を向けて飛び込めば、いつもの日常とは全然違う世界が目の前に広がる。 土の地面に並ぶ飛び石。一面の田んぼと畑。山に囲まれた、ふるさとの夏の気配──。
2 22/08/27(土)23:13:13 No.965468289
強化合宿も終わって、夏休みもあと僅か。 お兄様の考えで、残り一週間は完全な休暇として過ごすことになった。 「ライスは家に帰るの?」 「うん……どうしようかな……」 帰ってもお父様はお仕事で海外。お母様と過ごすのはもちろん楽しいけれど……。 「お兄様は?お兄様も実家に帰るの?」 ふと気になって訊くと、お兄様は首を横に振る。 「いや、避暑をしに山奥の村に。昔親戚が住んでた家がまだ残っててね。 毎年別荘代わりに使って、のんびりと過ごすことにしてるんだ」 それを聞いたライスの胸に、一つのわがままが芽生えた。 きっと迷惑だろうし、図々しい。 けど、それでも。望むのなら言葉にしなきゃって思った。 勇気を出して一歩踏み出さなきゃ、変われない。 お兄様と歩んできた日々の中でそう学んだから。
3 22/08/27(土)23:13:28 No.965468414
「……あの、ね。一緒に行ってもいい?」 「えっ!?」 「ライスもそこに行ってみたいの。……ダメ、かな……」 「いや、ダメってわけじゃないけど……」 お兄様はちょっと困り顔になる。 「本当になんにもないところで、家もボロ家だよ?思い描いてるようなバカンスにはならないかも……」 迷惑に思って言ってるんじゃない。ライスにちゃんと楽しい休暇を過ごして欲しいからこそ、困ってる。 お兄様のそんな優しさが伝わってきたから。 だからライスも、はっきりと伝える。 「それでもいいよ。ライスね、今年の夏はお兄様と過ごしたいの!」 直射日光が当たってるみたいに、ほっぺがジリジリ熱くなってくる。心臓もレース直後みたいに波打って。 会話の途切れが永遠に続くように感じたけど──……お兄様は柔らかな笑顔で頷いてくれた。 こうしてライスはお兄様と二人、山奥の村で夏のひと時を過ごすことになったの。
4 22/08/27(土)23:13:44 No.965468513
「──あ」 思い返していると、車の音が近付いてきて止まる。 そして斜面からお兄様の頭がひょこっと出てきて、ライスに気付くと笑顔になる。 「起きてたんだ」 「おはようお兄様。その袋……」 「うん、今朝の分」 掲げてこっちに差し出すのはベーカリーの袋。中には焼き立てのロールパンが入ってる。 ライスは朝食にはパンが好き。けど、この村にはお店が一軒もない。 だからお兄様は毎朝片道30分かけて、山向こうのパン屋さんにまで買いに行ってくれる。 「ごめんね、ライスのために……」 「いやいや。おかげでこんな美味しいパン屋が近くにあることが知れたし。毎年の定番にしたくなったよ」 言いながら、お兄様はもう一つのビニール袋も見せてくる。 「帰り道でタクさんに出会って、ほら!またトマトとキュウリお裾分けしてもらった」 「あ、じゃあライスがサラダ作るね!卵も焼いて、ウインナーも!」
5 22/08/27(土)23:13:59 No.965468620
二人で朝食を作って食べ終わると、そのまま居間でゴロゴロ。 「ライス、着替えないのか?」 「ん~……もうちょっとこのままでいるね」 寝る時に着たままのランニングシャツにショートパンツ。 普段なら絶対にこんなだらしない格好を、ましてやお兄様の前でするなんて考えもしないけど。 ここでの日々はいつもと全然違うもので──その時間の感覚が、ライスの気持ちにも変化を与えてくれてる。 「横着だなあ」 「そう言うお兄様だって、似たような恰好。ふふっ」 笑い合ってると、縁側から影が音もなく押し寄せてきて──雨が降り始めた。 バラバラバラバラッッ!!! 屋根瓦に大きな雨粒の当たる音が途切れなく続いて、透き通っていた外の光がくすんだものになる。 いつものライスだったら、せっかくの夏のお休みなのにって落ち込んじゃうような空模様。 でも大丈夫。ここではこういう降り方は珍しくないし、すぐに通り過ぎるってもう知ってるから。
6 22/08/27(土)23:14:12 No.965468708
それに……こうして雨で外と中とが遮られると、ここだけ世界から切り取られたようで。 どれだけ雨脚が強まっても慌てないで、二人してただぼんやりと外を眺める。 ざあざあ ざあざあ、雨の音。そして観てるわけでもないのにつけているテレビの音。 音楽でもないその不規則な音がどうしてか優しくて、緩やかに心に響いて。 時間が止まりかけのようにゆっくりと流れていく。 平坦で退屈なひと時。でもそれがうれしいの。 もう何年もこうしてお兄様と暮らしているみたいな……そんな気分になれるから。 そうして耳を傾けてる間にも、だんだんと雨は弱まり遠ざかっていく。 お日様のきらめきがさざ波のように縁側を伝って、また部屋に戻ってきた。 「雨、やんだね」 「ちょっと歩いてみようか」 「うん!」
7 22/08/27(土)23:14:26 No.965468799
お昼が近付けば、二人で村の一番奥にある山道を登って渓流に。 沢の大きな岩の上にフリースのシートを敷いて、座って読書。 木の緑がアーチを作ってくれているから、ここは他よりも涼しいの。 「……──ふう」 パタン、と静かに本を閉じる。 ロブロイさんが勧めてくれた物語。結構なぶ厚さのある長編だったけど、夏休み中に読み終えることができた。 とっても明るく賑やかで、ハラハラドキドキの展開があって…… でもエピローグはゆったり穏やかで、本を置いた後でも胸に余韻が残る──そんな素敵なお話だった。 そんなお話を読み終えた後は、胸に小さな寂しさと切なさが引っかかる。 もっとこの物語の世界に浸っていたかった。ずっと読み続けていたかったって。 でもそれは叶わないから──心の中の切なさをそっと抱きしめて、「ありがとう」って気持ちに変えるの。 それに、物語の終わりは新しい本との出会いでもあるから。 きっと次の本もライスを物語の世界に引き込んでくれるはず。帰ったらどの本にしようかな。 考えながら立ち上がって、沢になった場所で釣りをするお兄様のところへ行く。
8 22/08/27(土)23:14:41 No.965468919
「お兄様、釣れた?」 「…………いや」 苦い声で引き上げる釣り糸の先は、風でプラプラと揺れて身軽そう。 「おっかしいなあ、イワナがいるはずなのに……。いつも釣ってるのに今年はさっぱりだ」 恨めしそうに見る地面には、石と枯れ枝を集めて準備しておいた焚火。 初日にお兄様が作ったそれはまだ一度も出番なし。 「じゃあ、今日のお昼もおにぎりだね」 出る前に二人で握ってきたおにぎりをクーラーボックスから取り出して、さっきのシートまで戻る。 「ごめん……釣りたてを焼いて食べさせたかったんだけど」 「ううん。……よかったのかも。お魚さんが食べられなくてすんだから」 「なるほど……そっか」 頷いたお兄様だったけど、 「…………ううぅ~~~~ん??」 やっぱり苦い顔で首を傾げる。 そんなお兄様のリアクションに、ライスはつい声を出して笑っちゃった。
9 22/08/27(土)23:14:55 No.965469022
お休みの最終日も、そんなふうに変わらない一日で過ぎて。 こうして田んぼのあぜ道を歩く家までの時間も今日でおしまい。明日は寮に帰る。 「そういえば、昨日ここでニンジンみたいなオレンジのトンボを見たよ。なんて名前なのかなあ?」 「それってアキアカネじゃない?」 「え?それって赤トンボのことだよね。でも見たのはそんなに真っ赤じゃなかったし……」 キョトンとするライスに、お兄様は笑いながら説明してくれた。 アキアカネは最初は麦わら色で、夏の暑い時期は山の方で過ごすんだって。 そして涼しくなったら里に下りてきて、少しずつ体が赤くなって…… 「ここは山が近いから、もう下りてきたんだなあ」
10 22/08/27(土)23:15:09 No.965469115
お兄様のつぶやきを聞きながら、昨日トンボが飛んでいた空を見上げる。 「────…………」 そこには雲一つなくて、端の方が夕陽で淡く染まったぽっかりと青い広がりがあるだけ。 周りを囲む山もいつの間にか深く暗い緑に色が変わって、ヒグラシの鳴き声も無しにシンと静まり返っている。 「夏が、終わるんだね……」 「寂しい?」 「うん。でも──」 寮に戻れば、またいつもの日々が始まる。 ロブロイさんがいて、ウララちゃんやブルボンさんがいて……きっと賑やかでいろんなことが起きて。 それはライス新しい物語の始まり。 楽しみに待てるのは、お兄様と過ごしたこの数日があったから。だから── 「素敵なエピローグをありがとう、お兄様」
11 <a href="mailto:s">22/08/27(土)23:15:25</a> [s] No.965469235
おしまい。特にこれといったテーマとかはなく ただ夏の終わりをライスと一緒に感じてもらえたなら…と
12 22/08/27(土)23:16:22 No.965469664
いい夏休みだ
13 22/08/27(土)23:17:34 No.965470237
ライスと一緒の夏が毎年の定番になれ
14 22/08/27(土)23:17:37 No.965470271
本当に歳の離れた兄弟みたいなのもいいよね…
15 22/08/27(土)23:19:20 No.965471074
健全な関係のはずなのに同時になんとも言えない色気がある
16 22/08/27(土)23:20:05 No.965471400
>ライスと一緒の夏が毎年の定番になれ 毎年こんなふうにライスとの夏を過ごせるならそれを支えに頑張れる
17 22/08/27(土)23:40:52 No.965480709
ライスとははしゃぐよりもこうしてまったり過ごしたい
18 22/08/27(土)23:46:37 No.965483376
だらしないライスもいいね…
19 22/08/28(日)00:03:55 No.965490902
絵本のような温かい色合いの日常こそライスシャワーに相応しい
20 <a href="mailto:sage">22/08/28(日)00:17:16</a> ID:wr6lJP/U wr6lJP/U [sage] No.965496629
スレッドを立てた人によって削除されました 一応、私はたぬきに関してはあまり嫌悪感を持ってはいなかった。 意思疎通ができるし、見た目もまぁまぁかわいい方だと思っていた。 マスコット的な可愛さという奴だろうか、ともかくそこまで毛嫌いはしていなかった。 そんな私でさえ、”まんし”のたぬきを見たときは正直引いてしまった。 かわいらしいたぬきが、必死に股間をいじりながら奇声を上げていたのだ。 気持ち悪いとしか思えない惨状だった。 「ううう…ちびぃぃぃ!!ちびい!!」 声は次第に大きくなり、手の動きも一層激しくなった。 たぬきの顔は紅潮し、しょんぼりとしたたれ目からは涙が流れていた。 大きく開かれた口からはだらだらと涎が垂れている。 時々のけぞりながら、快楽に身をゆだねていた