虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。

  • iOSアプリ 虹ぶら AppStoreで無料配布中
  • 「ただ... のスレッド詳細

    削除依頼やバグ報告はメールフォームにお願いします。 個人情報,名誉毀損,侵害等について積極的に削除しますので、メールフォームより該当URLをご連絡いただけると助かります

    22/07/25(月)23:18:43 No.953109938

    「ただいま、トレーナーさん」 「おかえりなさい、スズカ」 "異次元の逃亡者"サイレンススズカ。人々の記憶に焼き付いたその呼び名に違わぬレースは今でもウマ娘、そしてそのファンたちの間では語り草らしい。彼女が引退した後も黄金世代と呼ばれるウマ娘たち、更には世紀末覇王まで現れ、ターフの上でいくつもの感動的な物語を生んでいる………らしい。 らしいというのはその話をテレビや雑誌からでしか知らないからだ。誰もが息を呑んだ秋の天皇賞、そこで競技者として致命的な怪我を負ってしまったスズカを追うようにして俺はトレセン学園を退職したのであった。実際にはスズカに辞めさせられたようなものだが。 「その雑誌………またレースの事を調べてたんですか?もう必要ないのに………」 「そうは言ってもなぁ………このまま無職ってわけにはいかないだろ」 「無職じゃなくて、私の専属トレーナーじゃないですか。お給料もちゃんと渡してますし………」 「言っとくけど、まだ1円も使ってないからね。何もしてないのに受け取ったお金は使えないよ。君からのなら尚更ね」

    1 22/07/25(月)23:19:02 No.953110073

    「もう!そうやってまた意地を張って…トレーナーさんが居てくれるだけで私は満足なのに………」 ………………………………………………………………………………………… レースが終わった翌日、彼女と再開したのは病室だった。 「トレーナーさん、1つ、わがままを聞いてくれますか?」 「もちろん、君のためなら出来ることは何でもするよ」 「私が引退した後も、私と一緒にいてください。二人で同じ景色を見ていたいんです」 もちろん断る理由はなかった。もし自分が走ることができなくなった彼女の生きる理由に少しでも関わることが出来るなら、そう思ったからだ。 それから数週間、毎日彼女の見舞いに行き、今後のことや彼女の友人のこと、他愛のない世間話などを繰り返し話した。走れなくなってしまった彼女がどうなってしまうか、不安で仕方がなかったが、話している間は自然と笑顔も見え、普段通りの彼女にさえ見えた。

    2 22/07/25(月)23:19:47 No.953110384

    「その………トレーナーさん、お仕事をお休みしてくれませんか?」 そうスズカから提案があったのは彼女が退院する3日前だった。 「お休みって………お金がないと困るだろ」 「トレーナーさんも知ってるじゃないですか。私、賞金とかたくさん貰ってますから、男の人1人養うくらいできますよ」 「なんで俺が養われる前提なんだ………?」 「それにトレーナーさん、私の怪我のせいで色々言われてるんじゃないですか?何も知らない人たちにトレーナーさんを悪く言われるのは、嫌です」 彼女の言う通り、優秀なウマ娘の脚を壊した………とまではいかなくても守れなかったトレーナーに対しての世間の評価は厳しいものだった。連日テレビで取り上げられ、週刊誌は原因について様々な憶測記事を書き…… 仲の良い同僚からは励ましの言葉を貰ったが、トレセンに勤めている人間がすべてそうであるわけではない。彼女を慕うウマ娘から、どうにか出来なかったのかと責められることもあった。こちらの精神的にも限界で、一度休職することに抵抗はなかった。 養う云々は彼女の冗談だとして、一旦仕事から離れて彼女と過ごすのもいいだろう。

    3 22/07/25(月)23:20:35 No.953110680

    そう思っていたのだが………彼女が退院する頃には既に根回しが終わっていたようだ。 「なぁスズカ………どうして俺が退職することになってるんだ?」 「私が理事長にお願いしたんです。戻りたくなったらいつでも歓迎するとおっしゃってましたし、お休みと変わりませんよ」 「このタイミングで退職なんかしたらそれこそ何を言われるか分かんないぞ………それにこれからどうやって生活していくんだ」 「だから私が養うって何度も言ってるじゃないですか………それに、退職という形にしておかないと、トレーナーさんも気が休まらないと思って」 「無職でいるほうが休まらないよ………どうするんだ、同僚たちもすっかり俺が退職するつもりでいるみたいだし」 「だったら、私がトレーナーさんを雇います。これなら無職じゃありませんよ」 「無茶苦茶な事を言うなぁ………スズカ、もしかして君は俺に仕事を辞めてほしいのか?」

    4 22/07/25(月)23:20:56 No.953110838

    「………はい。心配なんです。私が見ていない所でトレーナーさんが辛い思いをしてるって考えたら。ずっと私のそばでゆっくりしていて欲しいですし、私からトレーナーさんに恩返しもしたいんです。ですから、一度お仕事を辞めてくれませんか?」 今考えれば、彼女の独占欲の現れだったのかもしれない。しかし精神的に疲弊しきっていたこと、更にスズカへの罪悪感もあり結局俺は彼女の要求を受け入れることになったのだった。 スズカが退院して数日後、病室で交わした約束を守るため、彼女のご両親に報告をしに行った。殴られることまで覚悟していたが、意外にも二人はむしろ同居することを歓迎しているようであった。 「とっても広い家………これなら二人で暮らすのに不便は無さそうですね」 「スズカ、やっぱり家のお金くらいは払わせてくれないか?罪悪感がすごいよ………」 それからはまるで入念に計画されていたかのように話が進んだ。いつの間にか家は彼女の名義で用意されていたし、退職の手続きはあっさり終わり、彼女の送別会が終わるとそのまま二人で新居に引っ越すことになった。おそらく、入院中から色々と根回しをしていたのだろう。

    5 22/07/25(月)23:21:16 No.953110987

    「駄目です。恩返しがしたいって言ったじゃないですか」 「いや、でもこれじゃヒモだよ……」 「いいじゃないですか。ちゃんとお給料は貰うんですし」 「それ、実質スズカからのお小遣いでしょ。悪いけど受け取れないよ」 「私、トレーナーさんのおかげで賞金がいっぱい入って、お金持ちなんですよ?あんまり気にされると私も不安になるので、受け取ってください」 結局そのままスズカに流されるような形で同棲生活が始まってしまったのであった。

    6 22/07/25(月)23:21:47 No.953111201

    同棲を始めてから1ヶ月。人間とは恐ろしいものでいけないと分かっていても心も体もヒモ生活に慣れてきてしまったのであった。スズカはというと、レースの賞金などを元手にブランドを立ち上げ、かなり好調らしい。仕事のことを聞いてもあまり教えてくれないので詳しくは分からないが……… 一度、アルバイトを探しているのを彼女にバレたことがあった。その時、彼女は泣きついてまで俺を止めようとした。曰く、自分のいないところでトレーナーさんに何かトラブルがあったら耐えられない、ずっと一緒でいたいのに居なくなってしまいそうで怖い、ということだった。 その時、やっと俺はスズカが立ち直ったわけではないことに気がついたのであった。走ることが出来なくなった彼女は代わりに俺を生きる目的として選んだようだった。明らかに不健全で、脆い理由だ。彼女のトレーナーとして、キッパリと断り彼女が一人で歩いていける手伝いをすること、それが俺の為すべきことだったのだろう。

    7 22/07/25(月)23:22:07 No.953111342

    しかし自身も追い詰められていたとはいえ教え子のその様子に気づけなかった俺には、そのまま彼女が望む通り一緒に過ごすことが贖罪なのではないだろうか、そう思うようになってしまった。要するにヒモ生活を許容し始めてしまったのだ。 「私はトレーナーさんと毎日一緒にいられるだけでたまらなく幸せなんです。トレーナーさんはヒモなんかじゃありませんよ。毎日私のために働いてくれてるんです」 「そうかなぁ…………?」 だんだんと彼女の影響を受けて、ヒモであることに対する抵抗が薄れてきているのを感じる。彼女の建前にも違和感を覚えなくなってきた。時々レースに関する雑誌などを読むことで情報を入れたりはしているが、怠惰で甘美なこの生活に慣れつつある自分が復帰できるかは疑問だ。 「ふふっ。悩んでるトレーナーさんも可愛くて好きですよ」 ………もうスズカが幸せそうならいいか、そう結論づけて今日も彼女と何をするわけでもなく1日を過ごすのであった。

    8 22/07/25(月)23:22:41 No.953111530

    ウマ娘に養われたいので書きました パーマーが引けたらパーマーでも書きたい

    9 22/07/25(月)23:24:50 No.953112385

    こういう時こそメジロがなんとかしてくれないんですか…

    10 22/07/25(月)23:25:44 No.953112739

    いい…

    11 22/07/25(月)23:25:50 No.953112783

    男に仕事させないで死ぬまで一緒にいる妖怪玉藻午前みたいなスズカさんだ

    12 22/07/25(月)23:26:22 No.953113007

    途中であっこれヤンデレ路線になる奴だ思ったら絶妙なしっとりさで終わった

    13 22/07/25(月)23:30:57 No.953114788

    (これもまた一心同体ですわ…)

    14 22/07/25(月)23:35:46 No.953116679

    家事を頑張ると喜んでくれそう

    15 22/07/25(月)23:37:05 No.953117212

    でも指切ったら包丁所持は禁止にしそう

    16 22/07/25(月)23:59:31 No.953125478

    子作りという仕事があるだろう

    17 22/07/26(火)00:19:15 No.953133207

    いい…

    18 22/07/26(火)00:19:54 No.953133477

    >子作りという仕事があるだろう 一発百万ですね。