22/06/19(日)00:20:30 瞼の裏... のスレッド詳細
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22/06/19(日)00:20:30 No.940085930
瞼の裏にまで届くような眩しさに目を覚ます。 うめき声を上げながら体を起き上がらせると、そこは故郷のあの崖だった。いつからこの遠い故郷にいたのだろうか、自分は合宿所の海にいたはずなのに。崖から墜ちて、そして……。 分からぬまま崖を下り、砂浜を歩いていく。雲一つない青空で太陽は眩しく、海は日光を反射して煌めている。 「ああ、どうもすいません。今崖の方にいましたよね、あそこ立ち入り禁止なんですよ」 その途中で、海で泳いでいる少年たちの保護者だろうか、老人が崖からきた自分を見つけて声をかけた。自分でもどうやって来たかわからないので、言い訳のしようもなくただ謝るしかない。 「あぁ、すいません。いつの間にか迷ってしまったみたいで」 「あそこは昔、子供が溺れてしまいましてね。仲のいい兄妹だったのですが……妹さんを助けるためにお兄さんの方がなくなりに……」 挨拶をしてその場を去ろうとした体が固まる。男の子が死んだ? 女の子ではなく? では今ここにいる自分はなんだ?
1 22/06/19(日)00:21:07 No.940086209
思わずその子の名前を聞いたが、名前まで一緒で、時期も同じだった。顔を青くした自分を心配して老人が声をかけたが、無視しながら速足で歩き去る。世界がひっくり返ったように頭が混乱して、ちゃんと真っすぐ歩いていられるかさえ分からない。 太陽の熱さからとは違う汗が全身から流れでて、喉が渇いていくのが感じられた。たまらずに見かけた海の家へと入った、何か飲み物を飲んで考える時間が欲しかった。ここが夢なのか現実なのか、現実としてじゃあ自分は何なのか。 「すいません、何か適当に飲み物を……」 店員も入ってきた客の顔の青さに驚いたのだろう、慌ててサイダーを持ってきて塩味の飴までくれた。熱中症と思われていたらしい。 サイダーを流し込んで大きく息を吐くと、冷たさが体に行きわたるようで少しだけ落ち着ける。周りを見ると、他の客たちは大きなテレビの前に集まっていた。画面にはトレセン学園と共に一人の生徒が映っていた。なにか見覚えがある、とても懐かしい、どこかで見たような……葦毛のウマ娘。 「あの、何があってるんですか?」 店員を呼び止めて聞いてみる。相手は知らない方が可笑しいというような目でこちらを見ながら答えた。
2 22/06/19(日)00:21:45 No.940086503
「この街出身のウマ娘さんの特集があってるんですよ。もうトゥインクルシリーズで大活躍で、覇王世代の一員って言われているんです! 街の誇りで……」 元気よく教えてくれている途中で、その店員はうろたえたような表情を見せた。それもそうだろう、いきなり相手が泣き始めたのだから。 しかし、抑えようとしても抑えきれなかった。あぁあの子だ、あの子なんだ。あの子が生きて笑顔でテレビに映っている。生きている、生きている。成長したらそんなに綺麗になるのか、そんな眼になるのか、そんな背に、そんな髪型に。 いくら見たくても見れなかったものがそこにあった。あぁ自分に翼が生えていたら、画面越しじゃなくて今すぐに会いに行くのに。例えあの子が俺を知らなくても。 「トレセン学園を目指したきっかけは?」 画面の中のインタビューでは、そんな質問が出ていた。あの子は少し考えた後、口を開いた。 「私には、幼いころ兄さんがいました。どんな時でも味方でいてくれて、クラブでの成績が悪くてもきっとなれるって応援してくれていたんです。でも、兄さんは死んでしまって……だから天国のお兄さんに見せてあげたくて」
3 22/06/19(日)00:23:03 No.940087046
どうやら、自分は本当に死んでしまっているようだった。だが、あの子が生きているならそれでもいいと思う。きっと今までは儚い夢で、神さまがほんの少しこの世に返してくれただけだとしても。 あの子が笑っていられる世界が一番正しいのだ。 「素晴らしい決意です。これからもテイエムオペラオー、メイショウドトウ、ナリタトップロードたち覇王世代の一員として、今度の――」 「お客さん、大丈夫ですか……?」 あんまりに泣きすぎたので店員が心配して次はタオルを持ってきてくれた。でも抑えきれないことは仕方ない。あの子は立派に夢を叶えた、あの両親の期待も応えた。自分とは大違いだ。やっぱりあの子が生き残るべきだったのだ。譲られるべきではなかった。 「す、すいません。ちょっと感極まっちゃって……タオルありがとうございます」 涙を拭きながら、変人を見るような顔の店員に笑顔を返す。その中で、少しだけ疑問が浮かんで親切に甘えてさらにそれを口にすることにした。
4 22/06/19(日)00:24:00 No.940087455
「覇王世代というと、アドマイヤベガの名前が出てきませんでしたね」 「アドマイヤ……? あぁ、あの子ですか」 その相手の、一瞬その存在を忘れていたような答えに心の中で不安が波を立てる。そしてそれはすぐに荒波に変わっていった。 「あの子はもうずいぶん前に引退したし流石にメディアも取り上げないんでしょう。足の不調さえなければなぁ」 「アドマイヤベガが……?」 「あれ、お客さん知らなかったんですか? もしかして海外に出張中だったとか?」 「違う、アドマイヤベガの不調は完治したはずだ! あの子は、周りの友人たちの支えもあって今でも走っている! 天皇賞やジャパンCだって……!」 机を叩くようにして立ち上がる。そんなはずはない、あの子は自分の人生を見つけ出したはずだ、赦されたはずだ! 友と笑い、妹と語り合うために自分のために走れるようになった! 「いったい何の話を……新聞にだって載りましたよ。これがあの子の運命だったんですよ」 「違う、その運命はあの子の妹が持って行ったはずなんだ、あの子は……」
5 22/06/19(日)00:24:28 No.940087647
声を上げてから、周りの人間の全員がこちらを見つめていたことに気づく。テレビの中のあの子でさえ。 「ねぇ、お兄ちゃん。お兄ちゃんが変わってくれるだけで、私はこんなに笑えるんだよ、こんなに楽しいの!だから」 呆然と立ち尽くしている自分に、テレビの中の妹は言った。 「使わないなら、変わってよ」
6 <a href="mailto:s">22/06/19(日)00:25:14</a> [s] No.940088006
調子に乗って書いた続きの続きの続きの続きの続きの続きの続きの続きの続きの続きの続きですすべて許してください ついでにまとめも許してください fu1175867.txt
7 22/06/19(日)00:30:04 No.940089974
そろそろ自分を許してやれよ
8 22/06/19(日)00:46:41 No.940096505
気になる所で終わった そりゃ泣く…
9 22/06/19(日)00:55:51 No.940100082
でも変わったらアヤベさんを救えないぞ
10 22/06/19(日)00:59:42 No.940101462
アヤべさんシナリオでも自分を責める幻影の正体は…だったな
11 22/06/19(日)01:00:48 No.940101850
自分の姿は自分がよく見ているから だからこそ許すのが難しい…
12 22/06/19(日)01:05:42 No.940103473
ずっと前から解ってた 自分のための世界じゃない 問題無いでしょう 一人くらい 寝てたって
13 22/06/19(日)01:13:17 No.940105864
最後の許してくださいってトレーナーのだったのか
14 22/06/19(日)01:36:21 No.940112854
前回の岩持って追いついてきたカレンちゃん最高にカワイイだった
15 22/06/19(日)01:41:05 No.940114125
カレンチャンは合気やってるからな