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22/05/30(月)01:13:45 細く高... のスレッド詳細

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22/05/30(月)01:13:45 No.933036970

細く高い音が聞こえたかとおもうと、星空に炎の花が咲いた。 不本意ながらもいつもの四人と呼ぶ、同じ世代で争ったメンバーたちと私は祭りへと来ていた。山の中腹あたり、広い原っぱの中を詰めるように座って、涼し気な夜風と共に花火を見上げるともう少しで夏が終わることを直感的に感じ取ってしまう。 「ハーッハッハッハ! いかに美しい光と言えど、ボクに見られているということに照れてしまって一瞬で消えてしまう! なんと罪な夏の夜のボク!」 「そ……そうだったんですかぁ……!?」 「でも、綺麗ですね! ホントに……とても凄い綺麗です!」 花火の音より騒がしい人たちの中で呆れたように笑えば、どこか気持ちが安らぐ気がする。遠く遠く、静かに波を立てている海の音も色も、上を向けば見えないし聞こえない。 あの人も花火をどこかで見ているのだろうか? いや、見ていないだろうきっと彼はまだ海を見ている。ただ一人、ただ孤独に。 「アヤベさん……?」 「えっ? あ、そうね……綺麗だわ……」 いけない。忘れよう、思い出さずにいようと思っていたのに、隙を見せれば心の奥底から彼の記憶が昇ってくる

1 22/05/30(月)01:14:06 No.933037061

未だに慣れない痛みが私の胸を押し付けて、肺から悲しみの言葉を吐き出させようとしてこらえるのに精いっぱいになる。本当にこの痛みを日常として生きることができるのだろうか。あぁ、あの時ああすればと後悔を語れる日が。あの人は私の中で思い出になってくれるのだろうか。 花火が上がる音がまた聞こえて、鮮やかな光の数秒後に音がやってくる。その時私に影が落ちて、やっと自分がまた俯いて考えてごとをしていたことに気づいた。 「オペラオー?」 私の前に立っていたのはテイエムオペラオーだった。自身に満ち溢れた笑顔をこちらに向けて、腰に手を当てている。どうせボクが眩しすぎて俯かせてしまったかな。なんていうに違いない。たまには愛想笑いで返してやろうかとも考える。 「アヤベさん。どうして自分のトレーナーさんと会おうとしないんだい?」 氷でできた短剣が胸に刺さったような感覚が広がって、私は瞳を震わせた。それくらい彼女の声は花火の中でも鋭く真っすぐに届いた。 周りが驚いてこちらを見る中で、私は冷たい肺の空気をやっと押し出すようにして震えながら声を出せた。

2 22/05/30(月)01:14:31 No.933037165

「それは……私の勝手でしょう……放っておいて」 「あわわわ、お、オペラオーさん!?」 「オペラオーさん、それは…‥!」 「アヤベさん、後悔をしているね」 周りの慌てる声も聞こえないようにオペラオーは続けた。 「君は良く笑うようになった! 今まではボクのオペラオースターストーリ-を無慈悲にしかし正確に訂正していた君が、ただそれも良いと笑うようになった。ドトウにも、トップロード君にも! 他の子達にも! 君にカルメンが乗り移ったのかと思ったよ、アヤベさんは周りに無条件で愛を振りまく人ではなかった」 「……人を暗に冷徹ウマ娘と言ってないかしら」 「いや! アヤベさんの優しさはいわば星の光だった! 静かに夜を照らしてくれる優しささ! だが今は仮面に善意と好意を塗りたくり、それを自分だと偽りながら、笑顔の裏には後悔と懺悔が渦巻いている」 「貴方だけの勝手な妄想よ、私はなにも偽ったりしていない、なにも……後悔なんてしていない」 「果たしてボクだけかな?」

3 22/05/30(月)01:15:10 No.933037335

その言葉に周りを見渡すと、ドトウもトップロードさんも心配そうな顔をこちらに向けている。平常に、平常にを心掛けていたはずなのに、結局カレンさんだけではなく周りにもバレてしまっていたらしい。私は役者にはなれそうもない。 「ごごごごめんなさい! でも、アヤベさんいつも海の方を気にしていて、トレーナーさんと話さなくなって……!」 「トレーニングも、カレンさんと一緒にするって聞いて……あんなに仲が良さそうなのにって……」 両脇に挟まれるようにして同時に腕も掴まれる。潤んだ瞳で見つめられて、これでは逃げようにもしらばっくれることもできそうにない。まったく私はつくづく、そう、生まれた時から孤独とは無縁な人生らしい。いつだって、どんな時だって、誰かが支えてくれた。あの人も、そうだった。 「分かった……分かったから、話すわ。話すから……泣きそうな顔をやめてちょうだい」 観念したようにため息を吐くと、おずおずと隣の二人は離れて、オペラオーも静かに座った。 そしてすべてを喋った。あの日の夜、二人の男の人の出来事、恐怖、そしてあの人から逃げたこと。

4 22/05/30(月)01:15:36 No.933037454

話し終わった時にはもう花火は終わっていて、暗い闇の中で私たちはただ寄り添っていた。 「……聞かない方がよかったでしょう。こんなこと」 「いいえ! そんなことはありません! その、何と言ったらいいか……言葉が見つかりませんが……」 「もう、トレーナーさんとは仲直り出来ないのですか……? もう一度、お喋りだけでも……」 「私は逃げてしまった。逃げて、彼を孤独にしてしまった……いまさら何を話せばいいの。もう彼の姿を見ることさえ恐いのに」 「どうして恐ろしいんだい? 」 オペラオーの言葉にそっと顔を上げる、彼女は星を見ていた。 「それは……言葉にできないわ。あの人の眼を見るたびに、違う人間のようで、彼の全てが分からなくなるような気がして……いえ、きっと彼のことを何も知らなかったと思い知ることが一番怖い……んだと思うわ……」 「で、でも! あ、アヤベさんといた時間はう、嘘だったんでしょうかぁ……」 「えっ?」 ドトウが慌てながらでも必死に考えてくれながらそういった。」

5 22/05/30(月)01:17:26 No.933037917

「きっと、その……アヤベさんが知らないことがいっぱいあっても……アヤベさんと笑ってたトレーナーさんが嘘つきだってその、思えないというか……ごめんなさいお役に立てません~!」 「でもドトウさんの言う通りですよ! 私もトレーナーさんがアヤベさんを騙してたとか、そう思えません! だからアヤベさんのトレーナーさんのことをもう一度改めて知るんです! そうしたらもう一度話し合えると思います!」 「そんな……無理よ。彼のことをどうやって知るの……あの人の前に出ることだって……」 そう、私もそれは幾度も考えた。でも助かめる術がない。今になっては全てが遅すぎる気がする、いまさらどうやって確かめればいいというのだろう。 「ならば、彼のことを知る人から聞けばいい!」 「だから、カレンさんのトレーナーさんにだって、あの人は本心を明かすことは滅多になくて……」 「友人でダメなら、家族さ!」 オペラオーが何を言っているのか理解できないでいると、突然星空から一つの星がゆっくりとこちらに降りてきた。けたたましい音共に。 やがてライトがこっちを照らしてきて、すぐにそれがヘリコプターだと分かる。待って、ヘリコプター?

6 22/05/30(月)01:18:35 No.933038211

「ちょうどいいタイミングで来たようだ!」 いきなりのことで放心している私たちを他所にオペラオーが手を振ると、すぐ近くにヘリコプターが着地してその中から彼女のトレーナーが降りてきた。待ってほしい理解が追い付かない。 「トレーナー君! まさしく君はセビリアの理髪師だ!」 「それはいいが、次からはもう少し早めに言ってくれ。ヘリ買うにも面倒な手続きが多いから近くの会社を丸ごと買う羽目になった。家からどやされる」 「ボクの一生のお願いを君に捧げたんだ! 笑って許してほしい!」 「こんなことに一生のお願いなんて使わなくていい。それよりもアヤベさん、乗るんだろ?」 「え……え?」 「ほら、アヤベさん!」 困惑する私の手を取って、オペラオーが私をヘリに乗せる。続いて残りのメンバーも続く。いったい何が起こっているのか分からない。 「ど、どこに行くの……?」 「彼の事を知りたいんだろう? 彼の故郷なら調べた、ボクのトレーナー君が! あとは君が決断するだけだ」

7 22/05/30(月)01:18:56 No.933038303

無茶苦茶だ。こんなことをして学園に知られたら、というか確実に知れ渡るだろう。停学で済めばいいが、悪ければ退学だ。しかし、オペラオーは笑っている。周りの皆も驚きながらも笑っている。 思わず脳が理解を拒否したのか、少しだけ笑みが漏れた。まったく、どうかしている。 「ボクたちの人生に、後悔なんて無用だ! 深い悲劇もね」 オペラオーに静かに頷く。心は決まった。すぐに地面が遠くなった。

8 <a href="mailto:s">22/05/30(月)01:20:06</a> [s] No.933038575

調子に乗って書いた続きの続きの続きの続きの続きですとても許してください あと今までのまとめです許してください fu1115196.txt

9 22/05/30(月)01:21:39 No.933038919

駄目だ完結させるまでは許さないのでどんどん続きを書くんだ

10 22/05/30(月)01:23:07 No.933039283

まさかこの連作の中でthe青春な気分を味わえるとは思ってなかったな 素敵だ...

11 22/05/30(月)01:23:23 No.933039352

王の器すぎる

12 22/05/30(月)01:23:50 No.933039468

>私は役者にはなれそうもない。 ここ好き

13 22/05/30(月)01:24:50 No.933039724

>「ボクたちの人生に、後悔なんて無用だ! 深い悲劇もね」 いい言葉だ

14 22/05/30(月)01:24:58 No.933039755

しれっとヘリ操縦してるオペトレはなんなんだよ!

15 22/05/30(月)01:27:13 No.933040333

>しれっとヘリ操縦してるオペトレはなんなんだよ! その前にヘリを所有会社ごと買い取ってる所が

16 22/05/30(月)01:28:01 No.933040545

とりあえず前の読んでみるか そうすればオペトレのこの金持描写もわかるはず…

17 22/05/30(月)01:34:38 No.933042046

うるさい アヤベさんが救われれば何でもいい

18 22/05/30(月)01:35:15 No.933042197

ヘリの操縦くらいなら民間人でもできるさ 会社の買取はちょっと待て

19 22/05/30(月)01:37:37 No.933042736

実際育成内でオペトレは謎の人脈を出してくる 何者?

20 22/05/30(月)01:42:31 No.933043747

あれなんか今回爽やかだな ってことは次が…

21 22/05/30(月)01:45:22 No.933044373

ヘリ…?ヘリ…!?

22 22/05/30(月)01:50:04 No.933045417

来たか…地獄… いや…覇王世代!

23 22/05/30(月)01:50:56 No.933045590

>とりあえず前の読んでみるか >そうすればオペトレのこの金持描写もわかるはず… 残念だがこの作品世界でオペトレがこんな感じなのは初出だ でも違和感無いな!

24 22/05/30(月)01:51:39 No.933045734

今回は割と短めに纏まりそうで安心している さぁ頼んだよ覇王世代!

25 22/05/30(月)01:53:23 No.933046092

欝フラグブレイカーであったか…

26 22/05/30(月)01:55:00 No.933046433

トレーナーがあんだけ壊れてると娘の教育にかなり熱心だった母も大概壊れてそうで怖いんだが

27 22/05/30(月)01:55:26 No.933046533

トレーナー君!ボクのライバルであり無二の親友であるアヤべさんのために、行方をくらました彼女のトレーナーのご実家を探し、ついでにヘリを用意してボクらを運んでくれないか!

28 22/05/30(月)01:56:40 No.933046797

>トレーナーがあんだけ壊れてると娘の教育にかなり熱心だった母も大概壊れてそうで怖いんだが 絶対めちゃくちゃになった家庭環境で寒暖差つけてくるぜこの女神…

29 22/05/30(月)01:57:02 No.933046859

>トレーナー君!ボクのライバルであり無二の親友であるアヤべさんのために、行方をくらました彼女のトレーナーのご実家を探し、ついでにヘリを用意してボクらを運んでくれないか! 無茶言うな!…できたわ

30 22/05/30(月)01:57:03 No.933046864

>トレーナー君!ボクのライバルであり無二の親友であるアヤべさんのために、行方をくらました彼女のトレーナーのご実家を探し、ついでにヘリを用意してボクらを運んでくれないか! しかもサラッと一生のお願いとして友を救うために使うしオペトレもそんなのに使うなって言う お似合いカップルか?

31 22/05/30(月)01:57:20 No.933046915

>トレーナー君!ボクのライバルであり無二の親友であるアヤべさんのために、行方をくらました彼女のトレーナーのご実家を探し、ついでにヘリを用意してボクらを運んでくれないか! 気軽に言ってくれるなあ! 8時間くれ

32 22/05/30(月)01:58:13 No.933047122

ヒソヒソ…あれが覇王の伴侶よ…

33 22/05/30(月)02:00:15 No.933047551

カレトレも大変だけど新ドレスで元気だしてくれ…

34 22/05/30(月)02:01:57 No.933047879

>ヒソヒソ…あれが覇王の伴侶よ… ハーッハッハッハッ!その通りさ!

35 22/05/30(月)02:03:02 No.933048090

>「で、でも! あ、アヤベさんといた時間はう、嘘だったんでしょうかぁ……」 みんな言葉が詰まりそうなのに、弱腰だけど絶対引かないドトウが好き

36 22/05/30(月)02:04:44 No.933048456

アヤベさんのデウスエクスマキナ テイエムオペラオー

37 22/05/30(月)02:04:48 No.933048465

>>ヒソヒソ…あれが覇王の伴侶よ… >ハーッハッハッハッ!その通りさ! 止せ、まだ婚姻届は書いたまま出していないんだ

38 22/05/30(月)02:05:55 No.933048673

爛れてるわ…

39 22/05/30(月)02:06:29 No.933048776

その影でこっそりと物欲しげにがっしりトレーナーの裾を摘まんでるドトウ

40 22/05/30(月)02:07:06 No.933048900

まあ育成でもオペトレこんな感じだし…

41 22/05/30(月)02:08:51 No.933049209

オペラオー本編でもトレーナーのこと理髪師って言ってるけどオペラのセビリアの理髪師というのは喜劇の登場人物のフィガロのことでこいつは理髪師と一緒に街の何でも屋やってる器用万能なやつなんだ

42 22/05/30(月)02:14:35 No.933050233

登場させるのにカロリーが高いオペラオーをよくここまで書けるな…

43 22/05/30(月)02:24:03 No.933051846

オペトレはオペラ像見てもそれはそういう物って一瞬で納得する男だからな…

44 22/05/30(月)02:30:35 No.933052833

溺愛する娘を助けず生き残った息子って時点で嫌な予感しかしない

45 22/05/30(月)02:58:06 No.933056490

この味付けの濃いトレーナ描写凄い見覚えあるんだ!

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