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22/01/29(土)23:59:01 「どう... のスレッド詳細

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22/01/29(土)23:59:01 No.891878376

「どうしましょう……」 「どうしようか……」 私とトレーナーは、異国の地で困り果てていた。 初の海外遠征として選んだドバイシーマクラシック。初めての海外に浮足立つ気持ちと、知らない土地で無事に走り勝てるのかと言う不安がない混ぜになった私達を待ち受けていたのは、世界規模の新型感染性ウイルスによる様々な弊害だった。 まず海外からの渡航が制限されたために減便した飛行機の都合により、例年より1週間ほど早く現地入りする事に。しかも時間があるからと言って無闇に外出も出来ない。開催側から感染防止としてトレーニング以外の外出自粛を要請されたのだ。 更に加えて。

1 22/01/30(日)00:00:14 No.891878823

「クロノと部屋が同じって、どういう事ですか!?」 血相を変えてホテルのロビーで現地スタッフに電話するトレーナー。空港から現地スタッフに取って貰ったホテルに来てチェックインをしてみれば、なんと私とトレーナーが同室で予約されていたのだ。慌てて確認するトレーナーに現地スタッフは。 『どうやらこちらの手違いで……申し訳ありません……』 「手違いって……今から予約の取り直しは出来ないのですか?」 『ホテル側に確認した所、感染防止のために宿泊客を減らしていて他の部屋は埋まっているらしく……』 「そんな……彼女は未成年で、女性ですよ!?男の自分と同室だなんて!自分は郊外のホテルで構いませんから……」 「それが今からだと他のホテルも予約が一杯で……申し訳ありませんが了承して頂く他……」 「では、自分がそちらの事務所で……っ!」 「トレーナー」 どうやらトレーナーは女性である私を心配して同室を拒んでいるらしい。ありがたい事だが、このままでは堂々巡りだ。電話先へ更に詰め寄ろうとしたトレーナーを手で制す。

2 22/01/30(日)00:01:00 No.891879147

「私は、トレーナーと同室で構わない」 「え、クロノ……!?」 「知らない土地で1人過ごすのは正直心細い。レース前に調子を崩してしまうかもしれない。慣れない所で1人で過ごすより、トレーナーと一緒に過ごす方が良い」 「だけど……」 「それに私は、トレーナーと一緒の方が気が休まる」 そこで私は一息ついて、先程から思っていた不安を口にする。彼と3年を共にして知り得た教訓、行き詰まった事態を前に進める為の一歩。共に歩む者に、思う事は胸に秘めず伝える事。 「それともトレーナーは、私と一緒は嫌、か……?」 「っ…………嫌じゃ、ない」 「なら、決まりだな」 「……はぁ、分かったよ……」 納得し切れない、という表情のトレーナーだったが、電話口に承知しました、と渋々ながらという声色で引き下がった。

3 22/01/30(日)00:01:21 No.891879290

こうして私達は異国の地で1週間、トレーニング以外に外出する事もなく同じ部屋で共に過ごす事になったのだった。

4 22/01/30(日)00:01:39 No.891879392

紆余曲折あり通された部屋は広々としたツインルーム。予約されていた部屋はダブルルームだったのだが、トレーナーがこれだけは譲れないと鬼気迫る勢いでホテル側と交渉し貰い替えて貰っていた。私は構わないと言ったのに。 ビジネスユース向けのモダンでシックなホテルといえど調度品の所々にアラビアンな装飾がなされ、日本から遠い異国の地に来たのだ、と実感させる。 陽光が差し込む、大きな一枚ガラスの窓に近付き外を眺めれば、高層階のこの部屋からはドバイの街並みが一望出来る。夜になればきっと絢爛の街ドバイの名に相応しい煌びやかな夜景が観られるだろう。 「とても良い部屋だな」 「理事長とURAに感謝しないとな」 思わず呟いた独り言にも近い感想に、早速椅子に腰掛けノートPCを開いたトレーナーが返事を返す。全世界規模のパンデミックの中、海外に遠征するトレセン学園のウマ娘を鼓舞しようと理事長自らURAに働きかけてくれたのだ。「必須ッ!感染予防として長期間滞在しなければならないならウマ娘とそのトレーナーのストレスを僅かばかりでも解消してあげなければならないッ!」とか。

5 22/01/30(日)00:01:58 No.891879508

「何か飲むか?」 「ありがとう。何があるかな」 「ちょっと待ってくれ」 私は備え付けられた冷蔵庫へ向かう。開ければ多種多様なドリンク。それでもまだスペースはあるので事前に送っておいた私用のスポーツドリンクも後で入れるとしよう。 「直ぐ飲めるのはミネラルウォーターとよく分からないジュースと、後は、それぐらいだな」 「それ?」 此方を見た彼に私はソファ横のテーブル上を指差す。置かれているのはシャンパンクーラーと対のグラス。恐らくは、ウェルカムドリンク。

6 22/01/30(日)00:02:18 No.891879618

「開けるか?」 「開けれるの?」 「大丈夫だ」 クーラーの中からボトルを取り出してシールを切り金具を外す。ボトルを立てたまま栓の部分を握り、ボトルをゆっくり回していけば、コルクが圧で自然に持ち上がってくる。後はコルクを押さえながら静かに抜いていけば。ポン、と、小気味良い音と共にコルクが抜けた。 「すごい。良く知ってるね」 「父から教わったんだ。母が好きでな」 「そうだったんだ。クロノがやると似合ってて格好いいよ」 「む……その、ありがとう」

7 22/01/30(日)00:02:36 No.891879734

返した2つのグラスに注ぎ入れた液体は薄金色に輝き、中で無数に立ち上る気泡は小さな夜景の煌めきの様で。 「ちょ、ちょちょちょっ!クロノは飲んじゃダメでしょ!?」 「大丈夫だぞ?」 「大丈夫じゃないでしょ未成年でしょう!?君に飲酒なんてさせたら怒られるのは俺なん」 「ん」 彼にグラスを手渡すついでにボトルのラベルを見せる。正しくはそこに書かれた文字を。 「『Non-Alcohol Sparkling Wine』……」 「大丈夫だろう?」 「ハイ……」 アルコールに厳しいイスラム教国らしいウェルカムドリンクと言えよう。

8 22/01/30(日)00:04:19 No.891880274

「はぁ、びっくりした……」 「ふふ、すまない」 「……クロノも意外とお茶目なんだな」 「そうか?ブーケには良く「お堅い」と言われるんだが」 「そうなのか?十分びっくりさせられたけどなぁ」 「では、気を取り直して」 「?……!あぁ。そうだな」 彼はグラスを目線の高さまで持ち上げて、私も彼に倣ってグラスを上げてお互いのグラスを向き合わせる。 「長旅お疲れ様。クロノ」 「こちらこそ。トレーナー」 彼は私の目を見て。私は彼の目を見て。

9 22/01/30(日)00:04:31 No.891880393

「「乾杯」」 チン、と。乾いた気持ちの良い音が鳴った。

10 22/01/30(日)00:04:51 No.891880538

私は窓横に置かれたソファに座り、時折りグラスを傾けながら美しいドバイの街並みを眺める。 「疲れてないか、クロノ」「大丈夫だ。機内でゆっくり寝れたからな」 思い返せば、こうして彼と共にゆっくりと時を過ごした事はなかったと思う。顔を合わせれば常にレースについて協議し、トレーニングで研鑽を重ねてきた。 「あの耳栓と枕すごい良かったな。教えてくれたディアドラには感謝しないとな」「ああ、ディアドラ先輩にもヴィブロス先輩にもお土産を買っていかないと」 気分転換の外出も、気付けばカフェで今後のトレーニング理論やレースへの思いを語り合い数時間経っていた事もあった。彼とは常に先を見据えていて、今を共有する事は少なかった。 「ディアドラには、やっぱりバナナかな?」「どうだろう。ドバイ産のバナナでもあればいいんだが」 暖かな陽射しと、彼の奏でる小気味の良いタイプ音。他愛もない会話。私と彼の間には、初めて穏やかな時間が流れていた。

11 22/01/30(日)00:06:27 No.891881054

っていうクロノ兄貴とトレーナーの海外1週間ラブラブ生活が読みたいです

12 22/01/30(日)00:06:36 No.891881131

ウイルスが結果的に気ぶってる…

13 22/01/30(日)00:07:29 No.891881449

すごいのが来たな…

14 22/01/30(日)00:07:41 No.891881532

ペット来たな…

15 22/01/30(日)00:08:48 No.891882030

他にすることなかったから厩舎でイチャイチャしてたカップル来たな…

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