ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
22/01/29(土)23:49:52 No.891875201
バサッ、ぱふ、ぱたん 今日も今日とてトレーナーさんの家でコタツにありつくべくお邪魔すると、なにやらの申請書類が一つ抜けていると連絡が入ったとのことで急遽学園へ走った彼の家に一人取り残されてしまった。 することもなく手持ち無沙汰なので、無卿を慰めるべく干しっぱなしの洗濯物を取り込んで片端から畳んでいたのだが。 「ふいー、これでおしまいっと。あの人料理はするけど他の家事あんまり好きじゃ無いからすぐ溜め込むなあ。えっとタオルは三段目～っと」 畳んだ大量のタオルやシャツを仕舞おうとタンスの引き出しを開けると引き出しの奥に茶封筒が一つ。 おそらく何かの拍子に仕舞われてそのまますっかり忘れられてしまったのだろう。 すわ彼のへそくりかと思って取り出してみるとどうにも紙幣や硬貨の類ではなさそうな重みを感じる。 「いや～、見るのはダメだよね流石に」 なんて言いながらひとまずコタツの上に置き、洗濯物をしまう作業を再開する。 数分後、洗濯物を片付け終わり暇を持て余したアタシは、コタツに潜り茶封筒に手をかけていた。
1 22/01/29(土)23:50:50 No.891875557
「いやまあコレは落とし物だし、持ち主の特定の為にも中身の確認は必要ですよね」 筋も何も通らない誰も聞いていない言い訳を重ねながら「ごめんね！トレーナーさん！」と心の中で謝って中身を取り出すと、コタツの天板には十数枚の写真が広がった。 「これは……トレーナーさん？」 そこにいたのは今よりずっと若い、ともすれば今のアタシと同じくらいの歳の彼の姿。 今より髪は少し長くて背は少し低く、友人らしき男の子達に囲まれて笑っている。 「こっちは運動会、これは部活かな？」 あっちもこっちも男の子ばかりで馬鹿騒ぎしている様子の写真だらけで、とても楽しそうだ。 「ふーん、こんな顔してたんだ。ふふっ」 一枚一枚がアタシの知らない彼の顔を教えてくれて、嬉しくてちょっと寂しい。同じ学校に通っていたら、なんて詮ないことを考えながら写真をめくっているととある一枚で手が止まる。
2 22/01/29(土)23:51:35 No.891875809
「…………女の子？」 黒髪ロングにカチューシャをつけて、緩やかなニットを着て肩にストールを巻き付けたいかにも大人しそうな女の子が一人で写っている。 前髪で隠れて目はよく見えないが、鼻立ちとにっこりと笑った口元で美人とわかる。 そこだけ見れば可愛い女の子の写真なのだが。 「なんで女の子が写ってるのがこの一枚だけなんだろう……」 他の写真には彼と友人らしき男の子達ばかりなのに、何故この子だけ？ それもこの子しか写っていないという事はトレーナーさんがわざわざ撮らせてもらったという事なのだろうか。 「初恋の人とか……まさか、彼女……？」 彼も成人男性だ、いい年して交際経験の一つもないとは考えにくい。人当たりはいいし顔だって少し童顔だが悪くない、まして中央のトレーナーになる程の才人だ、放っておかれた訳がない。
3 22/01/29(土)23:53:09 No.891876384
「そりゃそうだよね、トレーナーさんカッコいいもん。アタシみたいなのとは違ってキラキラな青春してたんだろうなぁ……」 アハハ、と一人で笑うアタシの声は少しずつ、少しずつ小さくなっていく。 この写真もトレーナーさんがわざわざ撮らせてもらって、今でも写真を持っているような子だ、よっぽど好きだったんだろう。 「……はぁ」 なんだか急に彼との距離を感じてしまい一人萎れていると、ガチャと家の扉が開く音がする。 「ごめんネイチャ、急に出ちゃって。お詫びにお土産買ってきたから勘弁して」 コタツに広げた写真を片付ける前にリビングの扉が開き、アタシはつい咄嗟に手に持っていた彼女の写真をコタツに隠してしまった。
4 22/01/29(土)23:53:49 No.891876615
「お、おかえりー」 「ただいま、これアイスね。あれ？この写真どこにあったの？」 「え、あ、ごめん。洗濯物しまおうとしたら見つけちゃって、その、勝手に見ちゃって」 しどろもどろになりながら弁解すると、彼は怒ることもなく懐かしげな顔で写真を一枚手に取り一言。 「いやいやいいよ、ネイチャが見つけてくれなきゃ出てこなかったんだし。懐かしいな、高校時代のやつだよ」 そのまま一枚一枚大切にめくりながら、思い出を語っていく彼の優しい眼差しにつきりと胸が痛む。 コタツの中に隠した写真を出すべきか迷っていると、彼がこう問いかけてきた。 「これで全部だった？」 息を呑んで隠した写真を持つ手に力が入る。 何の感情も籠もっていないような無機質な表情に、目だけが冷たい光を湛えてアタシを射抜く。 その迫力に思わず肯首を以って返答としてしまった。
5 22/01/29(土)23:55:00 No.891877039
「そっか、ならいいんだ」 そう言って写真を片付ける彼はいつも通りで、先程の顔はアタシの後ろめたさが見せた幻覚なのかと思うほど。 そんなに触れられたくないのだろうか、彼の大事な過去を握り締めながらアタシは惑う。 今更持っていましたと出して軽蔑されないか、勝手に見たことを詰られやしないか、考えることはアタシの都合ばかりでそんな自分が嫌になる。 写真を棚に置いて台所へスプーンを取りに立った彼の背を見つめて、このまま隠していていいのかと己の内が囁く。 それでも結局その日は何も言い出せないまま、彼の部屋を後にしたのだった。
6 22/01/29(土)23:56:43 No.891877635
翌日、碌に寝付けなかったアタシは友人達に心配されながらふらふらと授業をやり過ごし、考えはまとまらないままあっという間に彼との練習が待つ放課後を迎えてしまった。 何時もは羽根のように軽いはずのトレーナー室に向かう足取りが鉛のように重い。 陰鬱な気分が纏わりつく足でノロノロと数歩進んで立ち止まり、また少し進むことを繰り返し、やっとの事でトレーナー室に到着した。 「…………」 普段のようにノックしようと上げた手は動かない、どうせならこのまま踵を返してしまおうか。この期に及んで彼から逃げることばかり頭に浮かんでくる自分に涙が出る。 扉の前でただ俯いていると、向こう側から扉が開いた。 「ネイチャ？」 アタシの名前を呼んでくれた彼の顔と声は、いつも通りの優しいもので。 情けないことに泣き出してしまったアタシはおろおろと慌てる彼に迎え入れられて、泣き止むまで子供のように背中を叩いてもらう事になった。
7 22/01/29(土)23:57:24 No.891877881
「落ち着いた？」 「うん……」 小さくしゃくりをあげながら彼の胸に預けていた頭を離す。 彼の胸元はアタシの涙でシミが出来ていて、また罪悪感が湧き出してくる。 「昨日から様子がおかしかったけど、何かあった？」 「！！」 既にアタシの胸中が見透されていたことに驚き、同時に言い出すのはここしかないと直感する。 「あのね、実は……」 そう言いながら昨日持ち帰ってしまった写真を取り出して彼に返す。 どんな罵倒も甘んじて受け入れるつもりだけれど、契約解除なんて事になったらどうしよう。それでも仕方ない、アタシは彼の過去に土足で入り込んだのだ。また込み上げる嗚咽と涙を捩じ伏せて、頭を下げる。
8 22/01/29(土)23:58:32 No.891878238
「ごめんなさい……アタシ、これ……」 「あー……見ちゃったか……」 頭を下げている為に顔は見えないが、聞こえた彼の声色からは落胆と諦めが察せられて、アタシの胸は凍りつく。やっぱり、取り返しのつかない事をしてしまった。 「ほんとうに、ごめんなさい……トレーナーさんの大事な人の写真、盗むような真似をして」 嗚咽と涙声を乾き切った喉から搾り出し、彼の沙汰を待っていると、肩を掴まれて顔を上げられ目元を優しく拭われた。 「んー、何かちょっと勘違いしてない？」 少し待っててね、といって簡易キッチンに立った彼は、蜂蜜入りのホットミルクを淹れたマグを片手に戻ってきた。
9 22/01/29(土)23:59:52 No.891878635
「熱いからゆっくり飲んでね」 アタシは促されるままにマグに口をつけて、少し舐める。優しい味と温度がじんわりと広がって、ささくれ立った心が落ち着いていく。 「まずさ、俺は別にこの写真を持って行ったことは怒ってない。昨日も言った通りネイチャが見つけてくれなきゃ失くしてたようなものだし」 確かに勝手に持って行ったのは良くないけどね、と彼は言葉を続ける。 「で、この写真を見られたくなかった理由は……」 何とも言いづらそうな沈黙を挟んで、微妙な表情をしながら口を開く。 「これ、俺」 たっぷり三分ほど時間をかけてその言葉を咀嚼し、それでも理解出来ずに彼の顔と写真を交互に見合わせると、彼は苦々しげにもう一度。
10 22/01/30(日)00:00:32 No.891878953
「俺なの、その写真に写ってるの」 俺、彼、トレーナーさん、この子が？ 何でそんな嘘をつくのか、そんな嘘をつくくらいアタシに教えたくないことだったのだろうか。そう思って彼の顔を見ると、恥を自ら晒してしまったというような諦めの顔。 本当なのだろうか、この美少女が目の前の成人男性？ 「え……？ほんとに……？」 「あ、信じてない？まあそうだよね、じゃあ最終手段取るか……」 本当に嫌そうに呟くと彼はどこかへ電話をかけ始めた。 「あー、忙しいとこ悪いね、久しぶり。え？うんそう、おお、今トレセンだよ。そっちは仕事中？え、休みなの？ごめんごめん、ちょっと頼みがあってさ、高校の時のあの動画まだ持ってるよな？ちょっと送ってくんない？あ？うるせーよバカそんなんじゃないって、ああ、頼むわ。うん、また近いうちに、それじゃよろしくー」
11 22/01/30(日)00:01:14 No.891879228
仕事中の彼からは想像ができないほど気安いノリの会話が終わり、次いで彼のスマホがピロリとデータが送られて来た事を告げる。 苦々しげに彼が見せてくれた動画には、若い彼が美少女に変身するまでの一部始終がおさめられていた。 「何撮ってんだバカヤロー！」 「いやー似合ってるね、いいよいいよー」 「うるせー！来年こそはお前にやらせるからな！」 「男子校でミスコンとか正気の沙汰じゃねえと思ったけどお前普通にいけんじゃね？一般参加の他校の女子より可愛いぞ？」 「人数合わせの女装野郎に票入れるアホいるわきゃねーだろ！」 「はい、優勝おめでとう」 「バカしかいないのかこの学校……」 「普通に票集まってたな、一般客からも」 「トロフィーもらえて良かったね、どこに飾るの？」 「こんなトロフィー欲しくなかった……」 「あ、後で写真焼き増ししてばら撒くからよろしく」 「うわぁぁぁぁぁぁぁ！！！！」
12 22/01/30(日)00:01:55 No.891879492
「とまあこんな感じで……若気の至りでね。これをネイチャに知られたらと思うとちょっと耐えられなくて……」 遠い目をしながら全てを諦めた口調で嘆く彼に、アタシは慌てて謝罪を入れる。 「あの、ごめんね？聞かれたくない話聞いちゃって」 「いやいいよ。どうせそのうちばれる運命だったんだ、気にする事はない」 「でも……」 「良いって、その写真だって笑い話になって報われたさ」 それよりも、と大きく伸びをして彼が席を立つ。 「もう今日は練習にならないな、何しようか？」 優しく此方を見る彼の笑顔が、写真の美少女と重なる。アタシの知らない幾つもの彼の過去は、一つアタシの知るところとなった。 少しぬるくなったホットミルクを一啜りして、こくりと飲み込む。
13 22/01/30(日)00:02:46 [ｵﾜﾘ] No.891879787
「トレーナーさんの昔話、聞きたいな」 「えぇー……楽しいもんじゃないぞ、やめようよー」 「だめ、ですかね？」 我ながら本当にめんどくさい女だ。 めんどくさくて、嫉妬深くて、その癖自信がなくてすぐ逃げる。 「うーん、まあいいか……本当に面白くはないよ」 「ううん、大丈夫」 そんな自分が、どこまでも優しい彼のことを知っていきたいと思うのは我儘なのだろうか。 「アタシが聞きたいの」
14 22/01/30(日)00:03:08 [s] No.891879905
ネイチャに昔話を強請られたい人生でした
15 22/01/30(日)00:07:32 No.891881468
抱きついて泣いてる！！！
16 22/01/30(日)00:07:41 [ｵﾏｹ] No.891881530
「へぇー、これがネイチャのトレーナーなんだ。すごいね、女の子にしか見えないよ」 「キチンとお化粧もされているようですわね……」 「なんかクラスにいた凝り性さんがどこかから覚えてきたらしいんだよね」 「ヒトに歴史ありとはこの事ね、アイツもそんなおもしろエピソード持ってるのかしら」 「でもネイチャのトレーナーさ、今でもこういう格好したら案外人気増えるかもね」 「え？」 「いや若い頃これってことは今でもちゃんとお化粧すればこういう風になるんじゃない？」 「確かに、特別背の高い方でも体格のいい方でもありませんものね」 「いいじゃないネイチャのトレーナー改造計画、面白そうだわ」 「だ、ダメ！」 「なんでさ？」 「人気者になっちゃったらアタシが困っ……う、うにゃぁぁぁぁぁぁぁ！！！」 「あ、逃げた」 「珍しいパターンですわね」
17 22/01/30(日)00:08:12 [ｵﾏｹﾉｵﾏｹ] No.891881713
「次のファン感謝祭の演目にトレーナー主体で何か、ですか？」 「まあ笹針レースの後にトレーナー達のウィニングライブとかで良いと思うんだけどな」 「その辺りが無難だよね」 「あんまり奇をてらいすぎると碌なことありませんからね……」 「そういえば昔ミスコン出たんだって？」 「どこでそれを」 「テイオー経由」 「こっちはマックイーン」 「嫌ですよやりませんよあんなの」 「大丈夫だミスコンなんかやらないから」 「ちょっと君だけ勝負服着て踊ってもらうだけだよ」 「うわぁぁぁぁぁぁぁ！！！」
18 22/01/30(日)00:08:48 No.891882024
いい…
19 22/01/30(日)00:08:54 No.891882079
男性トレーナー限定ミスコンやるか…
20 22/01/30(日)00:09:51 No.891882426
>「大丈夫だミスコンなんかやらないから」 >「ちょっと君だけ勝負服着て踊ってもらうだけだよ」 >「うわぁぁぁぁぁぁぁ！！！」 これ絶対ネイトレだけじゃ済まなくなるな…
21 22/01/30(日)00:09:54 No.891882444
>「人気者になっちゃったらアタシが困っ……う、うにゃぁぁぁぁぁぁぁ！！！」 これを見に来た ありがたい…
22 22/01/30(日)00:11:37 No.891883096
>「なんかクラスにいた凝り性さんがどこかから覚えてきたらしいんだよね」 ライスのトレーナー…
23 22/01/30(日)00:11:53 No.891883176
>これ絶対ネイトレだけじゃ済まなくなるな… マクトレは逃げ出した！しかし回り込まれてしまった！ テイトレは逃げ出した！しかし回り込まれてしまった！
24 22/01/30(日)00:11:57 No.891883211
>男性トレーナー限定ミスコンやるか… 担当バの勝負服でな
25 22/01/30(日)00:12:19 No.891883320
ノリノリで女装するタイトレ
26 22/01/30(日)00:14:18 No.891884000
まだ脇が見えたりハイレグだったりする勝負服じゃなけりゃどうにかなる
27 22/01/30(日)00:15:03 No.891884250
>まだ脇が見えたりハイレグだったりする勝負服じゃなけりゃどうにかなる ブルボンのトレーナーを名指しで殺すのはやめろ
28 22/01/30(日)00:15:30 No.891884432
>>男性トレーナー限定ミスコンやるか… >担当バの勝負服でな フジトレが一番マシかな…
29 22/01/30(日)00:16:00 No.891884646
>>まだ脇が見えたりハイレグだったりする勝負服じゃなけりゃどうにかなる >ブルボンのトレーナーを名指しで殺すのはやめろ バクシンオーやライスやハヤヒデも割と辛く無い？
30 22/01/30(日)00:16:07 No.891884685
しれっと笹針レースするな
31 22/01/30(日)00:16:09 No.891884700
ペアルックで目に見えてご機嫌になるルドルフトレ
32 22/01/30(日)00:16:27 No.891884800
>ペアルックで目に見えてご機嫌になるルドルフトレ ミニスカきつくない？大丈夫？
33 22/01/30(日)00:17:18 No.891885122
モルモットくんはなんとかなるな
34 22/01/30(日)00:18:06 No.891885481
>ミニスカきつくない？大丈夫？ キツくないくらい優男だったら？
35 22/01/30(日)00:18:14 No.891885551
下半身タイツだけはヤバくないかな…
36 22/01/30(日)00:18:33 No.891885684
デジトレあたりが一番ひどい
37 22/01/30(日)00:19:08 No.891885894
>「へぇー、これがネイチャのトレーナーなんだ。すごいね、女の子にしか見えないよ」 こいつちゃっかり女装写真貰ってるぞ！
38 22/01/30(日)00:20:27 No.891886419
>モルモットくんはなんとかなるな 下タイツだけだぞあいつ…
39 22/01/30(日)00:20:39 No.891886488
>モルモットくんはなんとかなるな えー！？ 流石に下まで同じは勘弁してくれおくれよー！？ 私のイメージにも差し支え…モルモット君も何残念そうにしてるんだい！？！？！？
40 22/01/30(日)00:22:37 No.891887341
ばんえいササバリィンクル枠暫定一位タイトレ 女装タイトレをお姉様と密かに慕うスプリンターが増えたとか何とか
41 22/01/30(日)00:23:31 No.891887822
タイトレが一番マシかな…