22/01/03(月)01:02:34 「折れ... のスレッド詳細
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22/01/03(月)01:02:34 No.883043565
「折れぬものとは痛みを知らないものではなく。傷に塗れても、立ち上がるものを指す」 そんな、陳腐な言葉を。かつての自分を思い出しながら、後輩に告げた。
1 22/01/03(月)01:03:08 No.883043733
──休み明けの最初のトレーニング中に倒れたデュランダル。 足の爪のひび割れと骨へのダメージの蓄積で、上半期のレースは見送るようにと医者に診断されて。 「次のマイルCS。そこを、私のラストランとしたいのです」 病室で顔を合わせた彼女が、最初に口にした言葉は引退の意思表明だった。 「……そっか」 デュランダルのその言葉は、ストンと胸に落ちてきた。 驚きは無い。薄々とそんな気はしていた。 むしろ、彼女の言葉を素直に受け入れることができた自分に驚いているかもしれない。
2 22/01/03(月)01:03:19 No.883043802
「止めはしないのですね。あの時のように」 思い出すのは、彼女のクラシック期。マイルCSの直後に疲労で倒れた時のこと。 あの時も脚へのダメージで倒れて、引退を口にしていた彼女。 でも、あの時と違うのは。 「……君が、本気で言っているから」 諦めではなく、満足からの言葉。 だったらトレーナーである俺に出来ることは、彼女が悔いなく終わりを迎えられるようにする事だけだ。 「……とりあえず、今はゆっくり休んで。長い話は、また今度にしようか」
3 22/01/03(月)01:03:36 No.883043882
病院を後にして、デュランダルよりも一足先にトレーナー室へ。 やる事は沢山ある。デュランダルの休養からの復帰プランや引退にあたっての学園との手続き。彼女がトレーナー室に置いている私物も整理しなければならない。 「……やることが多いなぁ」 デュランダルと一緒にトゥインクル・シリーズを駆け抜けてスプリント路線をぶった斬り、次にスイープがチームに加入してティアラ路線に挑戦した。 その後にドリームジャーニーにグランプリトレーナーの肩書を貰って。 カレンチャンと共にカワイイを極めるべく、彼女をスプリントの女王にして。 そして──共に三冠を掴み取ったウマ娘、オルフェーヴルがやって来てくれた。 「部屋が、広くなるなぁ……」 トレーナーであれば避けられない、担当ウマ娘との別れ。頭ではわかっていたはずだが、いざ目の前にすると── 「……まだまだ、デュランダルと走りたいなぁ」
4 22/01/03(月)01:03:58 No.883043996
我ながら未練たらしいと思うものの、今ぐらいは許して欲しい。 誰にでもなくそんな言い訳をしていると、控えめなノックの音が響く。 「ふぅ……よし」 息を吐き出し、頬を軽く叩く。気分を切り替えてドアを開けると、眉を八の字にしたカレンと目が合った。 「お兄ちゃん、デュランダル先輩は?」 「ああ……暫くお休みだな。スプリンターズSとマイルCSに向けて調整はするけど……」 「……先輩、やめちゃうの?」 「……デュランダルから、聞いたのか?」
5 22/01/03(月)01:04:09 No.883044048
カレンは目を閉じて首を横に振る。 「……先輩は、ズルいなぁ」 「ズルい?」 「ううん……何でもないよ、お兄ちゃん。お別れ会の準備しなきゃ、だね」 カレンが何を言いたかったのか。 掛ける言葉が見つからず、今後について話すべく口を開けると── 「トレーナー! センパイは!?」 「コレ! 怪我が治る魔法薬作ってきたから!」 「チッ……騒ぐんじゃねえよ」 ──残りのチームメイト達が、雪崩れ込んできた。湿っぽい空気も、長続きはしなさそうである。
6 22/01/03(月)01:04:31 No.883044159
光陰矢の如しとはよく言ったもので、デュランダルと過ごす最後の一年は瞬く間に過ぎて行った。 デュランダルのラストラン、マイルCS。 彼女は過去最高の切れ味を見せつけたものの──先頭を捉え切れず、敗退した。 「……トレーナー」 「……ああ」 悔いは無い──と言いたいところだが、正直に言えばまだまだデュランダルと駆け抜けたい。 だけど、それを口にすることはできない。笑顔で送り出してやるのがトレーナーの役割だろうから。 「それで……進路は、考えているのか?」 「はい。私の道はこれしかないと」
7 22/01/03(月)01:04:47 No.883044231
聞きたいような、聞きたくないような。 エンディングは気になるが、終わるのが惜しいから目を背けてしまいたくなるような。 そんな何とも形容し難い気持ちで、デュランダルの言葉を待ち── 「あなたと、共にいたい」 「……え?」 「聞こえませんでしたか。あなたと、共にありたいと」 「えっと……それは……?」 間抜けに聞き返す俺に、デュランダルの耳が倒され、尻尾が忙しなく揺れる。 彼女は目を閉じ、深く息を吸った。何度か繰り返し、耳と尻尾が落ち着いた頃に、再び口を開く。 「……覚えていますか。あなたが、私をスカウトした時の言葉を」 「それは、勿論」
8 22/01/03(月)01:04:58 No.883044282
──君は、剣だ。 ──君は、一振りの名刀だ。どんな相手だって切り裂ける! それが、デュランダルに追込の走りを教えるために、伝えた言葉。 あの日から俺たちのトゥインクル・シリーズは始まった。忘れられる筈がない。 「私の進路。それを、改めて考えた時……あなたの言葉が、真っ先に浮かびました」 「そうか……」 デュランダルの言葉は、指導者としてこの上ない褒め言葉。最高の置き土産だと泣きたいところであるが、彼女の言葉の続きを待つ。 「あなたのように、なりたい。あなたのように、誰かの未来を切り開ける先達に」 「じゃあ……つまり、俺と一緒にいたいっていうのは……」 「……はい。あなたと共に……後輩たちの育成を手伝えたら……と……」
9 22/01/03(月)01:05:08 No.883044331
引退したウマ娘が、形を変えてレースに関わるのは珍しい話ではない。 サポート科に進学し、レースの主役からレースに花を添える立場に転じる子達も多い。 ……その中で。 彼女があえて、俺と共にありたいと考えた意味は。 「……どう……でしょうか……」 珍しく、歯切れの悪い彼女に。 尻尾を揺らめかせる彼女に、気軽に頷くべきではないのは理解できる。 俺が、彼女に返すべき言葉とは──
10 22/01/03(月)01:05:25 No.883044416
「それで、サブトレーナーはどうして立ち上がることができたんですか?」
11 22/01/03(月)01:05:39 No.883044476
──彼の返事。 私が今、ここに立っていること。それが答えだと言っていいだろう。 「……支えがあったからです」 私がサブトレーナーとして受け持っているウマ娘からの質問に、淡々と答える。 素質はあれど、気性に難があるウマ娘。最初は他のチームの所属だったのだが──紆余曲折の末、『私達』で面倒を見ることになった。 「支え? その支えって」 「お兄ちゃんのコト、ですよね☆」
12 22/01/03(月)01:05:56 No.883044546
無垢な瞳を向けて来る後輩に、横合いから可憐な声。 「で、その『支え』とやらはどこで道草食ってんだ?」 続けて、小柄で粗暴な声の持ち主が入室して来る。 「センパイに任せっきりで遅刻っスかね」 それに続けて、栗毛のウマ娘。 小柄な彼女と、栗毛の彼女は苛立たしげに室内を見渡している。 探るような目線。彼女達の目的が何なのか。それは言うまでもないだろう。
13 22/01/03(月)01:06:23 No.883044671
「──フッ」 「あ! 鼻で笑った! 笑いやがったっスよあのセンパイ!」 「騒ぐな愚妹。惨めになるぞ」 『彼』はあの頃よりも大分忙しい。 GⅠ26勝という記録を持った彼は、今や片手の指では数え切れない程のウマ娘を担当している。 アイツ最近来ないな──来ないからこっちから来てやった、概ねそんなところだろうと思う。 「いや……やっぱあの理解者面気に食わねぇ……」 「姉貴、抑えるッス……後輩ちゃんの前ッス……」
14 22/01/03(月)01:06:35 No.883044736
「え、えっと……お兄ちゃんって……チーフトレーナーのことですか?」 置いてけぼりにされていた後輩が瞬きを繰り返し、控えめに上目遣いで聞いてくる。 多くのトレーナーの手を焼いてきた彼女は、レース中でなければ非常に素直である。 素質は確かなものを持つのだから、本番でもその素直さを発揮してくれれば良いのだが。 「……その話はおいおいと。休憩は終わりです。丸太トレーニングを再開しますよ」 彼と共に駆け抜けると決めた以上は、止まってなどいられない。 私は後輩を連れて――最後に棚に飾ってある写真に一瞥して、練習場へと向かった。
15 <a href="mailto:s">22/01/03(月)01:07:30</a> [s] No.883044987
今まで書いた聖剣先輩の流れでサブトレ概念について考えてたらなんか最終回みたいなノリになった 今までの聖剣先輩 fu677142.txt
16 22/01/03(月)01:10:17 No.883045732
聖剣先輩の正妻感が強いのにスレ画の圧が強い
17 22/01/03(月)01:11:00 No.883045925
少年漫画の表紙みたいなスレ画だ
18 22/01/03(月)01:14:42 No.883046874
エールちゃんは果たして聖剣抜刀走法を受け継ぐのか……
19 22/01/03(月)01:15:30 No.883047076
いいッスね…もうカタログで見えたとたん飛んできた
20 22/01/03(月)01:18:15 No.883047740
ikze─────貴方を、愛している
21 22/01/03(月)01:18:55 No.883047909
スピカのスズカ シリウスのマックイーン キボンヌのデュランダル
22 22/01/03(月)01:19:33 No.883048066
>スピカのスズカ >シリウスのマックイーン >キボンヌのオルフェーヴル っスね
23 22/01/03(月)01:20:07 No.883048195
>>スピカのスズカ >>シリウスのマックイーン >>キボンヌのオルフェーヴル >っスね フッ
24 22/01/03(月)01:21:17 No.883048475
これが正妻の貫禄…
25 22/01/03(月)01:22:39 No.883048819
シリウスが即ギスギスになるのにキボンヌだと笑える