21/12/31(金)19:28:51 「トレ... のスレッド詳細
削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。
21/12/31(金)19:28:51 No.882128020
「トレーナーさん、また来年もおねがいしまああああす!!」 「エールちゃん、そろそろバス行っちゃうよ!」 正月の間は実家に帰省するソングラインとメイケイエールが2人並んでトレーナー室を出て行った。 2人が揃って出て行って一気に部屋が静かになる。 「あー、やっと静かになったわね。エールがいるとほんと五月蠅いったら」 「でもエールのおかげで賑やかな1年やったな」 「あまりウチにいないタイプだからオルフェが怯えっぱなしだったけどね」 「今は結構な仲良うなったみたいだし問題ないやろ」
1 21/12/31(金)19:29:39 No.882128337
静かになったトレーナー室の、サブトレーナー用のデスクである私の席に座ってパソコンに向かい合う。 未整理のファイル群に若干のめまいを覚えてきた。 「まったく、ほかのメンバーはもう正月休みに入ってるっていうのに今年中の仕事片付いてないってどういうことよ!」 「いや、やろうやろうとは思っとたんや」 「その結果出来てないじゃないの! ほら、私だって休みたいんだからさっさと片付けちゃうわよ!」 完全にてんでバラバラのフォーマットで入力している今年中のレース結果やトレーニング記録をまとめていく。 まだデータになっていればいいのだが手書きだと余計に手間だ。 (デュランダルもいい加減手書きはやめてほしいわね……) ここにいない、久しぶりに帰省しているもう一人のサブトレーナーに対しての愚痴が口に出そうになった。
2 21/12/31(金)19:30:23 No.882128614
トレーナーのデスクからもタイプ音が聞こえてくる。 こちらはこちらで金杯に関した事務手続きに追われている。 クラシックは不本意な結果に終わったヴィクティファルスの雪辱戦でもあるから気合が入っている。 (それにしても……) 今年のチーム成績はあまり良くなかった。 ここ最近は必ずG1ウマ娘を出していたのに今年はG2がふたつ。 こうやって今年の記録をまとめていると否が応でもそれを突き付けられた。 「ねぇ、アンタさ」 「うん?」 「もしかして、今年の記録を振り返るのが辛かったの?」
3 21/12/31(金)19:31:02 No.882128867
タイプ音が止まった。 軽い沈黙の後、ため息が聞こえる。 「やっぱわかる?」 「わかるわよ。何年の付き合いだと思ってんのよ」 「……今年はみんなを勝たせてあげられへんかったって思うと、どうしても手が進まんくて」 「で、こうやって貯めこんじゃったと」 こうやってサブトレーナーになってからコイツのこういう一面を見るようになった。 だらしなくてガサツでウマ娘に対して一生懸命な現役の時に見たアイツじゃなくてこうやって弱みを見せてくるアイツ。 最初は驚いたけど不思議と不快ではなかった。
4 21/12/31(金)19:31:50 No.882129192
「トレーナーってG1一度も勝てないままキャリアを終えるケースだって珍しくないのよ?」 「あぁ」 「あまり勝てなかったって言ってもチーム全体の勝率がそこまで下がったわけじゃないんだし」 「わかってるけど……」 「来年はきっとソングラインやエールがやってくれるわよ。特にエール。アンタが連れてきたんでしょ?」 そこまで話してようやくアイツの顔に笑顔が戻った。 「そうだな。連れてきた当初はスイーピーに散々文句言われたけど」 「アンタね、タダでさえ変人しかいないって言われてるチームが率先してそういう子取ってきたら言いたくもなるわよ!」
5 21/12/31(金)19:32:27 No.882129400
「素質は十分やったし。それに、ああいうウマ娘がいてもいいって、誰かさんが教えてくれたしな」 ニヤニヤしながらアタシを見てくる。 出会った当初、ワガママ放題だった自分を思い出す。 雪が降る中トレーニングを嫌がってお互い立ち尽くしたり。 坂路を逃げ回るアタシにほうき持ったアイツが追っかけてきたり。 レース前に駄々こねて動かなくなるアタシを引っ張りまわしたり。 「一応聞くけどそれ誰のことよ?」 「さぁ、誰やろうなぁ」 腹が立つ対応だ。 だからと言ってここで別の子の名前を出されるともっと腹立たしいんだけど。 そんな複雑な胸中を抑えてアタシは仕事に戻った。
6 21/12/31(金)19:32:58 No.882129568
「終わったあああああああああああああ!」 「こっちも終わったわよ。あー疲れた」 時計を見るともう23時を過ぎている。 ギリギリ年内に片付いたのが幸いだった。 「スイーピーホンマに助かったわ」 「……別に。それより、ねぇ」 「うん?」 「お腹、空いたんだけど」
7 21/12/31(金)19:33:34 No.882129778
「えっ?」 「なんにも食べずに仕事してたからお腹空いたんだけど」 法律的にはもう大人なのに具体的にどうしてどうしてほしいとは言えないのは私がまだ子供だからだろうか。 それともアイツが相手だからだろうか。 「……そうやな。蕎麦でも食べに行くか」 「お蕎麦ねぇ。まっ、いいわ。付き合ってあげる!」 コートとマフラーを身に着け準備を整える。 ゆるむ口元だけは絶対アイツに見られないように。
8 21/12/31(金)19:34:14 No.882130018
「そうだ、ついでに初詣も済ませとくか」 「えー。寒いからあんまり外出たくない」 「まぁまぁ。金杯に出るヴィクティファルスの願掛けもせなあかんし」 「まぁヴィクティのためなら……しょうがないわね」 2人揃ってトレーナー室を出る。 廊下に出ただけなのに差すような寒さだ。 少しの間、この部屋とはお別れだ。 「スイーピー」 「なぁに?」
9 21/12/31(金)19:34:41 No.882130186
「今年1年、いろいろありがとうな」 「何よ急に」 「ほんといろいろ助かってる」 「……」 「来年も、よろしくな」 こんなに寒いのになぜかカッと暑くなった気がする。 だけどそれを悟られたくはない。 こんなヤツに照れたりしたくなんかない。 思い通りになんてなるもんか。 だからこう返してやるんだ。
10 21/12/31(金)19:34:54 No.882130254
「ヤダ❤」
11 21/12/31(金)19:35:52 No.882130620
終わり 実在の人物には関係ありません 今年1年ありがとうございました 来年もチームikzeの怪文書は垂れ流していきたいと思います