虹裏img歴史資料館

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21/12/22(水)00:48:02 誕生日... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1640101682506.png 21/12/22(水)00:48:02 No.878772855

誕生日のことを「また一つ老けてしまう忌むべき日」と言う先輩も(特に女性に多く)居るけれど、ウチにとっては未だに記念すべき日だ。 という訳でもないが、誕生日である。事務所からイベントの打診や友人達から遊びの誘いもあったけれど、結局は全部お断りして、久しぶりのハロンタウンの実家にてお母さんと二人での小規模なパーティと相成った。 今日はウチが産まれた日で、歳を重ねる節目の日でもあって。それと同時に、お母さんがウチを産んでくれた日で、18歳という大人の入口に立つ日なのだ。だから、今まで育ててくれた感謝を伝えたかった。プレゼントを用意して、少しお高めの良いお酒も買ってきて、二人で一緒に料理を作って。

1 21/12/22(水)00:48:12 No.878772920

「……にしても、あそこまではしゃぐとは思わなかったなぁ」 寒空の下で息を吐く。白煙が広がり、冷たい空気が肺に入り込んで容赦なく体温を奪っていく。コートの襟を掴んで縮こまった。 お母さんは、酔い潰れて寝てしまっている。「初めてお酒を飲む時はお家で、家族の前で潰れるまで飲むの。安全な場所で自分の限界の感覚を知っておけば、お外で危険な目に合う前に帰ってこれるから」とか言っていたのに、その初お酒会で保護者が先に潰れてどうするのか、まったく。まぁ、実は事故とはいえ以前にお酒飲んじゃったことあるんだけども。我ながらとんだ不良娘だ。 風邪を引かないようベッドに運んだ後、ウチはまだまだ目が冴えていたから、物音を立てて起こさないよう外に出てきたのだ。

2 21/12/22(水)00:48:31 No.878773020

田舎が故の暗い夜道を歩くこと十数分。目的のお店に辿り着き、扉を開ける。カランカランというベルの音と、暖房の風が迎え入れてくれた。 「おや、いらっしゃい。……こんな時間に珍しいですね」 顔馴染みのマスターの声。もう日付が変わる頃というのもあって、お客さんは奥の方に居るどてらを着た薄ピンクのお姉さんだけらしい。なら、と遠慮なくマスターの目の前のカウンター席に座る。 「こんばんは、マスター。今日、無事お酒が飲める年になったので」 「ああ、なるほど。おめでとうございます」 カフェの時間には何度も来たことがあるけれど、バーとしてのこのお店は初めてだ。見知った店内だというのに雰囲気も違って、少し不思議な感覚。

3 21/12/22(水)00:48:53 No.878773142

「というか、もう呑んでます?」 「あ、流石に分かります?」 「顔色も足取りもおかしなところはありませんが、微かにお酒の匂いがしますからね。香りからして、随分と良いものを飲んだようで」 ふふっ、とマスターは笑う。流石はプロだ、凄いなぁ。 「お母さんと少しだけ。で、そのまま飲み足しと、ちょっと迷惑をかけに来ました」 その言葉に、マスターは眉をひそめる。そりゃ、迷惑かけに来た、なんて言われて良い気はしないだろう。 説明を続ける。お母さんに前々からお酒の飲み方で言われていたこと、それを果たす前に先に寝られてしまったこと。 「だから、お母さんの代わりにマスターにどれだけ呑んだらダメになっちゃうか見ててもらおうかなと。マスター相手なら安心ですし、迷惑はかけちゃいますけど」 自分でもかなり我儘を言っているとは思うけれど、マスターは優しくて、なんだかんだで受け入れてくれる人だと知っている。事実呆れたように苦笑しながらも、既にカクテルの用意を始めていた。

4 21/12/22(水)00:49:13 No.878773270

「まったく、困ったお客様ですね。まぁ、もっと迷惑な人も多いですし、それくらいなら可愛いものですけど」 「あらあらマスター普段からそんな変な客に絡まれてるなんて大変なのね」 「一番の迷惑客は貴女ですからね?」 「そんな……私は常連としてお店の売上に一番貢献してると思うのだけど」 「確かに時折置いていくおだんごしんじゅやらはツケの累計代金より多いですけど、換金の手間が面倒なのでちゃんと毎回現金で払ってください。あとテレポートとか諸々はやめてください」 薄ピンクのお姉さんとマスターのやり取りに、おお、となる。気心しれた感じの軽口の応酬がなんか大人っぽい。ロックだ……。 そんな会話をしながらも、着実に作られていたカクテルを差し出される。綺麗な青色のカクテル。 「本日の誕生酒であるエレクトリック・ジン・カクテルです。少し強めではありますが、ほんのり甘口でさっぱりしてるので飲みやすいかと」 「わ、おしゃれ。綺麗ですね」

5 21/12/22(水)00:49:30 No.878773359

正直まだお酒の風味というか、アルコールの独特な感じには慣れていないけれど、こうやって出されると少し感動物だ。マスターの所作がキマっているのもあって、凄く絵になるなと思う。 恐る恐る持ち上げて、一口だけ含む。一瞬強いアルコール感が来たけれど、甘さとレモンの風味がそれを洗い流して、後味はとてもスッキリ。 「……美味しいですね」 「それは良かった。このカクテルに込められた意味も、お客さんにはピッタリだと思いますよ」 「へぇ。どんな意味なんですか?」 「それは……ナイショにしておきましょう。帰ってから調べてみてください」 唇に人差し指を当て、ウインクしつつ微笑むマスター。小柄ではあるけれど、本当にとてもカッコいい人だ。 「ねぇマスター、八海山のお茶割りをお願いしても良いかしら」「ウチには置いてません」「じゃあおつまみにおでんでも欲しいわ」「今から仕込めと?」 常連らしい薄ピンクの人とマスターの会話をBGMに、ちょびちょびと舐めるように味わう。届いたお祝いメッセージを眺めながらグラスを傾けていると、だんだんと身体が温かくなってくる。

6 21/12/22(水)00:49:47 No.878773446

そうしていると、突然マスターが小皿とグラスをカウンターに置いてきた。サラダと透明の液体。まだ前のが途中だけれど追加のお酒なのかな、と飲んでみたけれど、いたって普通のお水だった。どういうことなの、と眼で訊ねる。 「チェイサーとおつまみです。何か食べながらの方が悪酔いしませんし、合間合間にお水を飲む方が良いんですよ」 夜遅いのでおつまみは低カロリーのシンプルなサラダですよ、とフォークを手渡してくる。言われるがままに食べてみたけれど、不思議なコクがあるドレッシングのせいか、カクテルととても相性が良い。 「確かに限界を知ることも大切ですけど、ベロンベロンに酔っ払ってしまったらお酒の味も分からなくなってしまいます。そんなの勿体無いですし、お酒も可哀相じゃないですか。美味しく上手に飲むのが一番です。お酒は飲んでも飲まれるな、ですよ」

7 21/12/22(水)00:50:03 No.878773534

……なるほど、確かにその通りだ。今思えばお母さんは料理を食べ終わった後もハイペースでお酒を飲んでいた。それが良くなかったのかな。 「ありがとうございます、マスター。お母さんにも教えてあげなくちゃ」 そう言うと、マスターは「ふむ」と少し考えるように。 「……最近、お客さんをテレビでもよく見ますよ。お忙しそうですね」 「そうですね。色々仕事も多くて……。本当は音楽活動だけやりたいんですけど、そういう訳にもいきませんし」 「お母様とも、あまり会えてなかったのでは?」 「……はい。普段はシュートシティに居ますから、今日は久しぶりに帰ってきました」 ビデオ通話自体はちょくちょくしているけれど、直接顔を合わせたのは何時ぶりだろうか。お母さんも仕事が忙しいのもあって、小さい頃からその傾向はあったけれど。

8 21/12/22(水)00:50:23 No.878773627

「だからですよ、きっと。お母様も寂しかったんでしょう。だからついつい飲みすぎてしまった。娘さんと初めて一緒にお酒を飲めて、元気に育ってくれた嬉しさもあって、でももう既に立派に独り立ちしているから、より一層寂しさを感じて」 滔々と、マスターは話す。 「お客さんはしっかりしてますし、話を聞く限りお母様にはあまり迷惑をかけないようにしていたみたいですけど。もう少し甘えてみても良いのでは?」 「甘える……」 「少し我儘でも言ってみるとか。実は甘えられるのも嬉しいものなんですよ」 そう、なのだろうか。これまでの感謝を伝えようって日に、助けるならともかくこちらから甘えるなんて……。

9 21/12/22(水)00:50:40 No.878773717

「その通りねマスター。私も夢ちゃん……妹に甘えられるととても嬉しくなるわ」 「うわ、急に話に入ってこないでくださいよ」 「その反応は酷くないかしら? というか、夢ちゃんが居る私と違って、独り身のマスターに大切な人なんて居ないでしょうに、何したり顔で語っているのかしら」 「なっ! 私にだって居ますよ、大切な人くらい!」 「例の店員さんとか?」 「~~~!!!」 いつの間にか隣に座っていた薄ピンクのお姉さんは、真っ赤になったマスターから視線を外し、なんとも言えない笑顔でウチを見る。 「ある程度以上の好意を持つ相手なら、ちょっと迷惑かけられるくらいが丁度いいのよ。私もよく夢ちゃんに迷惑かけて怒られてるわ」 「怒られるのは駄目なのでは…」 「良いのよ。なんだかんだ言って優しいし私のこと大好きだから。ツンデレってやつよ」 なんとなくだけどそれは違うと思う。

10 21/12/22(水)00:50:57 No.878773820

「とにかくね。しっかりしているのは良いことだけれど、少しも隙を見せてくれないと、もっと私を頼ってと思うものよ」 「コホン。まぁ、常連さんの言うとおりです。ほら、私に酔い潰れた様を見てほしいと言ったみたいな感じで、ちょっとした迷惑を掛け合う関係が良いですよ。信頼の証というか」 「私がマスターにかける迷惑も信頼の証ね」 「それは違いますね」 でも、二人の言わんとすることが、おぼろげながら分かった気もする。 甘える、甘えるかぁ。いきなりは少し難しいし、お母さんは寝てるからまた今度にするとして。予行演習と実践を同時にやれる相手に、心当たりはあった。 おもむろにスマホロトムに指示を出して、“アイツ”に電話をかける。こんな時間だというのに、待ったのはほんの数コール。 「もしもし? こんな夜遅くにごめんね。ちょっと声を聞きたく、話をしたくなってさ──」

11 21/12/22(水)00:51:17 No.878773908

12 21/12/22(水)00:51:33 No.878773982

「色々、ありがとうございました」 「ちなみに私も昨日誕生日だったのよ」 「えっ、あっ、そうなんですか。おめでとうございます」 「だというのにとしくんったら酷いのよ全然おめでとうもプレゼントもないの」 「としくんって誰ですか」 「だから代わりに貴女のサインを貰ってもいいかしら。夢ちゃんが貴女達のファンなのよ」 「あっはい。分かりました」

13 <a href="mailto:s">21/12/22(水)00:53:16</a> [s] No.878774506

長くなった上に21日に間に合わなかったけど岩ちゃんの誕生日(推定)ということでせっかくなので書きました 短くまとめつつ面白いオチのやつを書きたいけれど難しいね…

14 21/12/22(水)00:54:26 No.878774872

これ絵は自分で描いとるの? 赤メッシュかわよ

15 21/12/22(水)00:56:16 No.878775411

真面目なお姉ちゃんで脳がバグりそう

16 21/12/22(水)00:57:24 No.878775776

としくんってだれですか…

17 21/12/22(水)00:57:52 No.878775916

>唇に人差し指を当て、ウインクしつつ微笑むマスター。小柄ではあるけれど、本当にとてもカッコいい人だ。 何か不適切な表現がある気がしますね

18 21/12/22(水)00:59:50 No.878776526

ガンちゃんリファインはリファインブームの時に描かれたやつじゃない?

19 21/12/22(水)00:59:53 No.878776544

マスターはカッコいいよ小さいけど

20 21/12/22(水)01:05:12 No.878778178

エレクトリック・ジントニックの酒言葉は「自分の長所を活かし称賛を浴びるお姫様」かぁ…

21 21/12/22(水)01:08:07 No.878779019

カタログから凄まじい総受けの匂いを察知したと思ったらごめんなさいする羽目になった 親子仲は大事にしてあげてね…

22 21/12/22(水)01:12:01 No.878780028

エキサイティングお姉ちゃんよ

23 <a href="mailto:s">21/12/22(水)01:26:20</a> [s] No.878783356

岩ちゃんと格好いいマスターの絡みにしようと思って書き始めて 真面目だけじゃなくおふざけも入れようとお姉ちゃんを参戦させたのですがなんか諸々がとっちらかった感じになってしまった… スレ画はリメイクブームの時に描かれたもので私が描いたわけではないです可愛いですよね岩ちゃん

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