虹裏img歴史資料館

1 21/12/01(水)02:17:11 No.871994190

「…コレデイイデスカ」 俺の返事は固い。自分の喉から出たとは思えないくらい四角く角ばっていた。 椅子に座って俺の姿を見るニコーレの顔は反対に気味悪いくらいの満足げな笑みだ。いやらしく唇の端が吊り上がっている。 「そうそう、それそれ。 　文化祭で見た時びっくりしちゃったんだけど、こうして見るとやっぱり似合いすぎてるくらい似合っているわ。 　そんなふうにチョーカーで喉元隠しちゃうともう立派なメイドよ、テンカ」 畜生。口は災いの元。何でも言うこと聞くなんて物の弾みで言っちゃうとこういう目に合うんだぞ、こないだの俺。 溜め息を漏らす俺は自宅にいるというのに黒のワンピースドレス姿だった。言うまでもなく女物である。 その上からフリル付きのエプロンをし、髪にはヘッドドレス。襟元はリボンタイで結ばれ、喉には喉仏を隠すチョーカー。 どこからどう見てもいわゆるクラッシックタイプのメイド姿だった。 文化祭の時に半ば無理やり着させられたのだが、あまりにも似合ってるということで贈呈されてしまっていたのだ。 こんなの貰ってもとは思ったが楽しかった文化祭の思い出の品ということで捨てられず、こうして悲劇を招くに至る。

2 21/12/01(水)02:17:25 No.871994216

…いや。仮に捨てていたとしてもニコーレならあっさり調達してきそうだ。本物の名家のお嬢様だし。 「じゃ、約束通り今日は一日中その格好で過ごすように。メイドなんだから勿論私の身の回りの世話をするのよ」 「一日中って…セイバーたちが帰ってきたらどうするんだ」 「え？もうとっくに皆には知らせてあるけど？今頃なるべく早く帰ってこられるよう努力してるんじゃないかしら」 その格好で外に出ろと言わないだけ温情だと思いなさい、とニコーレは宣う。 ぬかった。既に外堀は埋められていた。俺はなんて甘い男だ。我が家の女性陣が誇るいざという時の連携プレーの緻密さをいつまで経っても学習しない。 いくらかの諦観を込めて俺は長いスカートの裾を払った。落ち着かないなぁスカートって…。 「…はぁ。かしこまりました、お嬢様」 「はい。よろしい。 　ところで今気づいたんだけれど…もしかして顔に化粧もしてる？」 「ああ、うん。棗がこういうの教えてくれててさ。どうせやるなら徹底したほうが恥ずかしくないんじゃないかと…恥ずかしかったわけだけれど」 それと意識しなければ気づけないくらい薄っすらとではある。ニコーレもよく見抜いたものだ。

3 21/12/01(水)02:17:36 No.871994238

気まずそうに頬をかいた俺をくすりと笑ったニコーレは椅子の上で脚を組みながら言った。 「そう。テンカ、主人としての最初の命令よ。私の前に跪いて顔をよく見せなさい」 …命令と言われては仕方ない。今だけは主人がニコーレで仕えるメイドが俺。そういう約束だ。 なるたけ上品に見えるよう静々とニコーレの前に跪いてその顔を見上げる。 顔つきの幼さに似合わぬ嫣然とした微笑みを浮かべる彼女はそっとその腕を伸ばして俺の頬を撫でた。 少し冷たい指先が産毛を擽るように這う。その怪しげな手つきに思わずぎくりと表情を強張らせた。 なんだか変な気分だ。いつもは見下ろしているニコーレを見上げているのも相まって。 やがて顎に指が添えられる。彼女の視線は美術品を鑑定する好事家のように微熱を帯びていた。 「テンカは本当に綺麗な顔をしてるわね。ドイツに連れて帰って本当にメイドにしてしまおうかしら」 「ニコ、それは」 「言葉遣い」 「…困ります、お嬢様」 一瞬だけだったが、かつて出会ったばかりの頃のような高圧的な口調と冷たい目つき。 俺がしゅんとして畏まるとニコーレは色良い報告を聞く女王のように大人びた顔で唇を半月の形にした。

4 21/12/01(水)02:24:33 No.871995067

ニコちゃんいやらしい

5 21/12/01(水)02:25:28 No.871995151

女装！！

6 21/12/01(水)02:26:21 No.871995260

メイド典河いいですよね 逆レしたいです

7 21/12/01(水)02:30:26 No.871995709

>メイド典河いいですよね >逆レしたいです 発言者の候補が多すぎる…

8 21/12/01(水)02:41:44 No.871996839

>メイド典河くんいいですよね >うさ耳と水着も着ませんか？

9 21/12/01(水)02:44:04 No.871997073

現れた途端控室に連れ込んでいかがわしいことをする女性が多い

10 21/12/01(水)03:12:24 No.871999600

栗野さんちのメイトカゲ