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21/11/01(月)23:16:32 私の枝... のスレッド詳細

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21/11/01(月)23:16:32 No.862436997

私の枝はお節介焼きだ。 口に咥えて学園を歩くだけでやかましく囀る。 「ブライアン…もう少し野菜を食え…」 「五月蝿い。枝らしくぽつんとしてれば良いんだ。」 不自然な独り言が聞こえぬよう、ぼそりとつぶやく。枝が震えると、ようやく静かになる。 好きでこんな生物(生物か?)を咥えている訳じゃない。深い理由も無いが。 〜〜〜 話は1週間前まで遡る。 私は自分で咥える枝は栽培するたちだ。そこら辺で拾ったり手折ったりなんて野蛮なことはしない。 寮に持ち込んだ植木鉢に小さな木の苗を植えて水をやり、適当な大きさの枝に育ったら折って洗って口に挿す。これが一番しっくりときた。 そういえば数日前、ヤバいほうのアグネスから徴収した薬品で農薬のようなものがあったな、と鞄から取り出した。 使用容量がどうたらと書いてあったが、面倒だから容器の蓋を引きちぎって中身を全て鉢に注いでやった。どばあ。

1 21/11/01(月)23:16:52 No.862437115

次の日、朝に目覚めると目を擦りながら鉢に近づく。ちょうど古い枝を捨てたばかりだったから新芽を頂くとしよう。 程よく太い枝を手折り口に挿す。 「クチ…ア…ラエ…」 思い切り吹き出し枝を窓の外に飛ばしてしまった。幻聴か?それにしちゃ最悪だ。 登校の用意をして部屋を出る。無意識のうちにあの枝を見つけた。 幻聴だろう。幻聴だ。そういうことにしたい。拾い上げた枝を耳に枝を近づける。傍から見れば狂ったようだ。 「クサイ…」 思い切り枝を折り曲げる。へし折る気で全力を腕に込める。しかし靱性に富んだ枝はしなりはするがついぞ折れはしなかった。気味も悪い、捨てるか。燃やすか。 しかし枝としては最高の仕上がりだ。えもいわれぬ魅惑に耐えられず、咥えずには居られない。 仕方なく口に挿す。…悪くない。ちっ、と舌打つ。並の枝ならすぐに燃やしてやるのに。

2 21/11/01(月)23:17:05 No.862437199

〜〜〜 無駄に口を挟むこと以外は大人しい枝だった。少しずつ話す言葉も流暢になる。 トレーニングで走り込みをしていた時に「もっとフォームを意識しろ」と指図してきた時は流石に吐き捨てたが。 レースでも常にしゃべり続ける。声が小さく、私意外には聞こえないみたいだ。だが、どうにも頭は良いらしい。授業でサボりがちな私も補修の前に枝から勉強を教えてもらう。情けない。 「そこは…直前に導き出した解を使う…」 「ちっ…こんなことせずともお前が補修の間にいつもの通り私に答えを囁けばいいだろうが…」 「それは…ブライアンの為にならない…」 姉貴が2人いるみたいだ。花瓶に挿した枝はまた震えた。

3 21/11/01(月)23:17:32 No.862437355

~~~ 暫くして分かった。この木の枝はトレーナーとしての才に溢れている。 私の専属のトレーナーの教えと、コイツの教えを一緒に聞けばよくタイムが伸びた。 「ブライアンのトレーナー…彼は優秀だ。君は…運がいい。」 「ふん。確かにあいつは腕は確かだ。だが、それはお前もそうだろう?」 「…私は、ブライアンの走りをもっと見ていたいだけだ。」 くだらない。だが、なかなか可愛げもある。これでもう少し静かならな。 だがコイツにも苦手な事がある。私が姉貴に騙され野菜入りのハンバーグを食わされた時、そばに置いてあったコイツを含むといつもと違う震え方をした。 「野菜…を…食べたのか?」 「食べたかったわけじゃない。」 「…そうか。よかった…。仲間を、食べられるのは…苦しい。」

4 21/11/01(月)23:17:48 No.862437457

…別にコイツの為じゃない。だが、それからは少しでも野菜の匂いがするものは徹底的に避けることにした。 ~~~ この枝とトレーナーのおかげ、というと癪に障るが…皐月賞、ダービー、菊花賞を勝ち抜き、有馬記念を優勝した。そして、招待状が届く。 「年度代表ウマ娘…か…。」 くだらない。だが、ここには強者が集まるのか。本能で分かる、熱い血のたぎり。 「ブライアン…お前なら…勝てる。」 「…ふん。当然だ。お前も来るか?」 「…パーティに…枝を咥えてくる奴は…いない…。」 ふふっ、と笑う。何故かこの枝の前なら自然でいられる。花瓶に挿し、水を少しだけ注ぐと玄関の扉に手を掛ける。

5 21/11/01(月)23:18:04 No.862437542

「すぐ戻る。待ってろ。」 「…ああ。」 パーティでは多くの名有りのウマ娘どもが居る。そして、うっとおしいインタビュアーも。 「今年圧倒的な活躍を見せたナリタブライアンさん!勝利の秘訣は!?」 「…枝だ。」 「はっ?」 「いつも咥える枝だ。あれが落ち着く。」 全く期待していた答えではなかったようだ。肩透かしを食らっているような顔をしていると、その後ろでトレーナーが苦笑いをしていた。

6 21/11/01(月)23:18:19 No.862437628

~~~ 寮に帰る。機か去った服はうんざりだ。さっさと枝を含んで寝るとしよう。 中に入り、机の上を見る。花瓶の中にいるはずの枝が居なかった。そして、そのもとには1枚の紙があった。 「…!?」 周りを探し回る。落ちているのかと思い机の下を見て、勝手に移動したのかとソファを動かして、下を覗く。どこにもいない。ついに紙に目を落とす。 『ブライアンへ。君は素晴らしいウマ娘だ。だが、惜しむらくは人を信じないきらいがある。私は、君を支えたいと思う。だが、分かるのだ。最近になって、自分の内側が少しずつ空洞になっている。 植物なのだから、避けられない滅びがあるのだろう。最近は君に語り掛けるのも少しだけつらいのだ。軋む音を聞かせたくないのだ。枯れる葉を落としたくないのだ。 私は、自然に帰ることにする。だから、ここでお別れだ。心配はいらない。自然の輪廻に戻るだけだ。腐り、土に戻り、風になって、雨になって、また生き物に戻るだけだ。 私はずっと君を見ている。君の鉢に生まれて良かった。さようなら。』

7 21/11/01(月)23:18:39 No.862437768

自然と、ぐしゃりと紙を握りしめていた。 私は、私は─── 気付けば、寮を飛び出し走り、走り、走り続けていた。途中、アマさんに止められたような気がするが、気にしなかった。 何処かも分からぬ河川敷に辿り着くと、叫んだ。腹の底から、叫んだ。 声が、途切れ途切れになった。喉が痛んだ。血の味がした。 その日、私は寮に持ち込んだ植木鉢を全て処分した。

8 <a href="mailto:s">21/11/01(月)23:18:49</a> [s] No.862437830

~~~ 「…今年になってから、全戦無敗の記録を立てております!ナリタブライアンさん、一言お願いします!!」 「私はただ、勝ち続ける。だから誰でもいい。かかってこい。」 「おぉ~…!それでは、勝ち続ける秘訣とはなんでしょうか!?」 「…。」 「…?」 「野菜は、食わない。それだけだ。」

9 21/11/01(月)23:18:50 No.862437837

正しく怪文書だ…

10 21/11/01(月)23:20:03 No.862438297

コワ~…

11 21/11/01(月)23:21:28 No.862438787

野菜は食え

12 21/11/01(月)23:21:55 No.862438966

枝くん…

13 21/11/01(月)23:22:26 No.862439163

少し泣く

14 21/11/01(月)23:23:25 No.862439534

やめろよこういう切ないの

15 21/11/01(月)23:25:05 No.862440172

ゔお゙お゙お゙お゙お゙お゙ん゙!゙!゙!゙い゙い゙話゙がな゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙?゙?゙?゙!゙!゙

16 21/11/01(月)23:26:28 No.862440643

切ないかな…切ないかも…

17 21/11/01(月)23:26:29 No.862440647

寄生樹…

18 21/11/01(月)23:27:29 No.862440992

なぜかバトーさんが天然オイルと蜂蜜酒まとめて投げ棄てたシーン思い出した

19 21/11/01(月)23:31:31 No.862442390

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

20 21/11/01(月)23:35:42 No.862443941

聞こえたのは小枝の声だ!…どうだ?

21 21/11/01(月)23:36:24 No.862444201

>聞こえたのは小枝の声だ!…どうだ? (萎びる枝)

22 21/11/01(月)23:46:49 No.862447829

さては野菜を食わないための長い言い訳だな…?

23 21/11/02(火)00:08:54 No.862455479

>1635777091036.png 困惑するブライアンイケメン

24 21/11/02(火)00:11:55 No.862456501

>野菜は食え 姉貴のレス

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