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  • 「鉄虫... のスレッド詳細

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    21/11/01(月)17:09:12 No.862310815

    「鉄虫を退治して下さり、ありがとうございます。でも私たちは、ご主人様の遺されたこの庭園を離れる気はありません」  着古されてボロボロのエプロンドレスを身につけたそのシザーズリーゼ型は、深々と礼をして言った。

    1 21/11/01(月)17:09:25 No.862310863

    「そうですか……近くの島に、私たちの補給基地を置かせてもらうのは構いませんか?」 「もちろん、どうぞ。ご主人様の所有地はこの環礁だけです。隣人が増えるのは大歓迎ですよ」 「ありがとう。では、のちほど……」  オベロニア・レアは一礼してふわりと舞い上がる。  リーゼと、その後ろに居並ぶ十数人の姉妹達の姿が小さくなっていく。高度を上げ、低く垂れ込める雲を抜けると、宙に浮かぶ機械の玉座が彼女を待っていた。赤毛の小柄なバイオロイドが、尊大に片肘をついて座っている。 「どうだったの?」 「駐屯は問題ないそうです。合流は……断られました」レアは悲しげに首を振ってみせる。 「ふん。厄介ね、あんた達は」

    2 21/11/01(月)17:09:40 No.862310918

     太平洋の真ん中に点々とつらなるこの小さな島々は、かつての時代には「真珠の首飾り」と呼ばれていたらしい。  星の落とし子を避けて航路を大きく制限された今のオルカにとって、この群島はアラスカに向かうための必須の足がかりとなる。何としても制圧し、補給拠点とする必要があった。海に囲まれた群島で、地上の敵を掃討するとなれば、ドゥームブリンガー以上の適任はない。  同時に、亡き主人の地所を守りラビアタの呼びかけにも応じなかったフェアリーシリーズの一団が、一部の島に細々と暮らしていることも以前からわかっていた。そこでオベロニア・レアのたっての頼みで、彼女も同行させることになったのだ。

    3 21/11/01(月)17:09:56 No.862310966

    《東側の島二つ、制圧終わりました。今からそちらに合流します》  ナイトエンジェルからの通信が入ってきた。待つまでもなく、空を切り裂くエンジン音とともに、ドゥームブリンガーの編隊が雲の下から現れる。ナイトエンジェルを先頭にきれいな楔形を描いた六体のバイオロイドは、メイとレアの眼下でふわりと散開して減速し、二人を囲む位置まで上昇して静止した。 「ジニヤーが軽傷を負いましたが、ほかに損害はなし。真水が出るのは大きい方の島だけですね。基地にするならあそこか、その隣の環礁でしょう」  進み出たダイカが、データバッドを叩きながら報告する。 「まだ生きてる農園があるとかいう話はどうなったんです?」 「いたわ。オルカに誘ってみたけど、フラれたところよ」  メイがくい、と親指でレアを示すと、レアは申し訳なさそうに頭を下げた。

    4 21/11/01(月)17:10:11 No.862311010

    「長姉が言っても駄目ですか。フェアリーシリーズは土地に根を下ろすと聞いてましたが、本当なんですね」  ナイトエンジェルが呆れたように言う。 「司令官に命令してもらえば一発じゃないんですかあ?」シルフィードがしきりに前髪を気にしながら言った。 「無理強いはしたくないというのが、ご主人様のご意志ですので……作物は分けてもらえるそうです。今年はカボチャが豊作みたいですよ」 「カボチャかあ……」 「どうでもいいわよ、島一つくらい」メイが手を叩いて会話を終わらせた。 「シルフィードとバンシーは見張りに残りなさい。あとは帰投。明日からしばらく島巡りよ」

    5 21/11/01(月)17:10:25 No.862311085

     翌日からはじまった群島の制圧作戦は、思いのほか難航した。  一つ一つの島は小さいが、起伏や原生林が多く、鉄虫が隠れる場所が無数にある。補給拠点にしたいオルカからすれば、森ごと焼き払ってしまうわけにもいかない。おまけに、かつてここを所有していたどこかの金持ちが、いくつかの島と島を海底トンネルでつなげており、片付けたはずの島にいつのまにかまた鉄虫が湧いたりする。 「もうやですー。帰ってソワンさんのとうもろこしご飯食べたいなあ……」 「文句を言うものではないですよ。私達は幸運なのです」  フラフラ飛ぶジニヤーを、レイスがたしなめる。 「何がですかあ」 「この地域は今雨期のはずですが、毎日晴れ続きでしょう。この好天が続いているうちに作戦を進めなくては」 「レイス、あなたそれ本気で言ってるの」  人手不足でスチールラインから駆り出され、久々に古巣の編隊長を務めていたフェニックスが眉を上げる。 「何か変でしょうか」  フェニックスが無言で指さした先へ、レイスが高高度爆撃用の強化された視覚をこらしてみると、数キロ彼方にオベロニア・レアがぽつりと、両手を広げた姿勢で静止したまま浮いていた。

    6 21/11/01(月)17:10:40 No.862311131

    「彼女が雲を散らしてんのよ」 「そんなことが!?」レイスが目を丸くして、あたりを見回す。「フェアリーシリーズのトップは天候を操作できると聞いてはいましたが、こんな広範囲に……」 「伊達にメイ隊長とタメを張ってたんじゃないってこと。因縁のある相手くらい、ちゃんと頭に入れておきなさい。私がいなくなってから、規律が緩んだんじゃないの?」  長い説教が始まろうとした瞬間、通信機からするどい警報が鳴り響いた。 「……私の不覚です。申し訳ありません」  再生ベッドに固定されたナイトエンジェルは、口惜しそうに顔を背けた。 「いえ、私が」片目を損傷したダイカがいそいで言い、痛みに眉をしかめる。「島をつなぐ海底トンネルを一つ、見落としました」  そのために、予期していなかった背後から奇襲を受けた。なお悪いことに、鉄虫側は切り札としてレーダー型を隠し持っていた。ナイトエンジェルの率いていた編隊は重傷を負わされ、レーダーはそのまま、あの農園がある方角へ飛び去っていったという。

    7 21/11/01(月)17:11:01 No.862311195

     報告を聞いたメイは無言できびすを返し、修復室から出て行こうとした。 「隊長! 待って下さい」 「ドゥームブリンガーの不始末は隊長の責任よ。私が片を付ける」 「フェニックス隊が追っています。作戦計画も見直しが必要です」 「レーダーの居場所だけ教えなさい。そこが拠点よ。根こそぎスラグに変えてやるわ」 「直掩が足りません。せめて私とダイカの予備機が来るまで」 「直掩には私がつきます」  ナイトエンジェルの言葉をさえぎって、修復室に入ってきたのはレアだった。 「先程、レイスさんから連絡がありました。農園が襲撃を受け……全滅したと」  普段穏やかな彼女の眼差しが怒りに引き絞られ、瞳が白い雷光をはなっている。豊かな黒髪までが、青白く光る細かな稲妻を無数にはらんで大きく膨らんでいた。 「私のエスコートでは不足ですか」 「いえ……それは……」ナイトエンジェルが絶句する。 「いいわ。ついてきて、レア」 「ええ」  怒りをみなぎらせた二人のSS級バイオロイドを止める言葉はなく、ナイトエンジェルとダイカはただ黙って背中を見送った。

    8 21/11/01(月)17:11:11 No.862311229

    「大丈夫ですよ。ああなったお姉様はすごいんです」  医療班のダフネがやってきて、二人の患者の頭を枕へ押しもどす。「メイさんは、私達の姉妹の仇を討って下さるのですから。お姉様はきっとそれを支えます」 「……別に、実力に不安があるわけではないです」  おとなしく点滴をつながれながら、ナイトエンジェルはため息をもらす。それから隣のダイカと目を見交わして、自嘲めいた笑みを浮かべた。 「ただ、できればついていって、この目で見たかったですね。あの二人のタッグなんて」

    9 21/11/01(月)17:11:37 No.862311320

     雨期だというのに連日晴天が続いていたのを、一気に取り戻すかのような豪雨だった。  すべてが灰色に荒れ狂い、伸ばした手の先も見えない。すさまじい雨と風と雷の中を、電磁フィールドに守られた二人のバイオロイドが悠然と飛ぶ。 「レーダーはこの先の島で休息しています」  ダイカから借りてきたデータパッドの表示と、自身の電磁波センシングの結果を交互に確かめてレアが言う。メイが玉座から首をのばして、画面をのぞき込んだ。 「よりによって、その島ね。……あんた、覚えてる?」 「忘れるわけがありません」レアが冷たく微笑んだ。  かつて、この島は三安の幹部の私有地だった。そして数百キロ離れた別の島に、ブラックリバーが保有する私設基地があった。  第二次連合戦争のさなか、その基地にいたドゥームブリンガーの隊員が先走って、この島を制圧しようとしたことがあった。姉妹を蹂躙されたオベロニア・レアは激怒し、みずからこの島に乗り込んでドゥームブリンガーを駆逐しようとした。そうなれば当然、メイも黙ってはいない。

    10 21/11/01(月)17:11:47 No.862311356

     戦争中、二つの企業国家間の相互確証破壊を保証する破滅的な切り札として温存され続けた二人が、もっとも直接対決に近づいたのがこの島だったのだ。 「こんな形で再訪するとは思わなかったわ」 「同感です。……ターゲットはこの岬、それと海底のここ。照準は問題ないですか。少し雨風を弱めましょうか?」 「私を誰だと思ってるの? それより、原子雲は成層圏に届くわよ。あんたの嵐で抑えきれるのかしら」 「私を誰だと思っているんですか」  二人は同時にクスリと笑って、そしてその後はもう笑わなかった。  やがて、嵐を貫いてオレンジ色の炎の柱が一本、二本と立ちのぼるのが、遠く離れたオルカからも見えた。  続いて、柱を包むように嵐が収束し、巨大な竜巻となって、膨大な粉塵と熱、そして放射性物質を上空へ吸い上げていく。  夜が明ける頃、すべては平穏に戻り、ただかつてビキニと呼ばれたこの環礁から、一つの島が消えていた。

    11 21/11/01(月)17:11:58 No.862311402

    ---  本日、海域調査が完了。懸念されていた放射性物質の拡散はなし。オベロニア・レアの天候操作能力の精度は恐るべきものだ。  レイス少尉の報告に誤りがあり、農園のバイオロイドはダフネ型、ドリアード型各一名が生存。救助後、オルカに加わることを受け入れたものの、農園への執着は依然強く、治療ののち島へ戻り、今回造営した拠点の運営を担当してもらうことになった。  追記1。レイスの注意力について訓練の機会を設けること。  追記2。オルカを去る前日、フェアリー二人は司令官とベッドを共にしたらしい。それを聞いたメイ隊長が、二人を見送る時ものすごい顔をしていた。まあ、あの人の新参先越され連敗記録が今さら一つや二つ伸びたところで、大したニュースでもないが。  戦闘日誌 ナイトエンジェル記す End

    12 21/11/01(月)17:14:39 No.862311933

    記念動画見てmayちゃん最近ちょっといいとこなさすぎじゃない?と思ったので書いた まとめ fu485767.txt

    13 21/11/01(月)17:22:24 No.862313686

    may隊長の次の出番は夢の中か…

    14 21/11/01(月)17:26:17 No.862314546

    戦略兵器連中が設定通りの性能を振るうともう無茶苦茶だな…

    15 21/11/01(月)17:29:26 No.862315291

    会って数日でセックスしてるわ司令官

    16 21/11/01(月)17:39:21 No.862317814

    神戸さんの本気はマジでシャレにならなそうだからな…

    17 21/11/01(月)17:42:37 No.862318670

    さすがだぜ司令官…

    18 21/11/01(月)17:51:04 No.862320944

    嵐の女王と炎の女王いいよね

    19 21/11/01(月)18:02:15 No.862324097

    周回中に気楽に撃ってるけどヤバい代物だったなそういえば…