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21/10/31(日)02:03:30 トレー... のスレッド詳細

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21/10/31(日)02:03:30 No.861807695

トレーナーさんが私と専属契約を結んでくれたばかりのころ、トレーナーさんとお母ちゃんの話をしたことがあります。 「日本一のウマ娘になりたいって夢、いつからそう思ったんだ?」 コースの芝の風に揺られながら、靴紐を結んでいるとトレーナーさんはそんなことを聞きました。いつもの会話からすると、なんだかいきなりだったような気もします。 「子供のころからずっと、お母ちゃんたちとの約束なんです!」 「お母ちゃん、たち?」 「はい! あの、その私には産みのお母ちゃんと育てのお母ちゃん、二人のお母ちゃんがいるんです! その、産みのお母ちゃんは私を生んですぐに亡くなって代わりにその親友だったもう一人のお母ちゃんが……」 話の途中で、ぼとっという音がしたかと思うとトレーナーさんの手からクリップボードとペンが滑るようにして落ちていました。トレーナーさんはというと、落ちたそれをただ見つめながら一言も喋りません。 「あの、トレーナーさん?」 少しそれが不気味の思えて、声をかけると意識を取り戻したようにトレーナーさんは顔を私に向けて慌てて取り繕うような笑みを向けました。

1 21/10/31(日)02:03:40 No.861807721

「大丈夫……ですか?」 「あ、あぁ。ごめん、聞いちゃいけないことを聞いてしまったー! と思ってな! ごめん! 本当に!」 「いや、大丈夫です! 気にしていませんから! はい! 私も覚えていないほど小さなころなので!」 お互い、あわあわとして周りから暖かい目線を向けられた後は、トレーナーさんはいつもの調子に戻っていました。 「そうか、じゃあいつもお母ちゃんって呼んでるのはその育ての親御さんのことだったんだな」 「はい! 綺麗な金髪の美人なお母ちゃんで、小さいころトレーニングだってしてくたんですよ!」 「そうか……それは素敵な人だな」 ただ最後の笑みだけは、なんだか優しいけど、とても悲しい目をしていたのを覚えています。 その目が一体なんなんだか、今まで分かりませんでしたが今ならハッキリと図ります。あの人は、昔を思い出していたのだと。

2 21/10/31(日)02:04:11 No.861807852

〇 「トレーナーさん」 「スペシャルウィーク……」 私の声に振り向いたトレーナーさんは、ひどく何処か焦ったような顔をしていました。手にはあの写真を持ったまま、何故だか直感でトレーナーさんに写真を見たことがバレたのだと分かりました。 「き、今日は休みだったと思うんだが……なにか相談でもあったのかい?」 酷く震えた声でした。そうであってくれというような願いと恐怖が入り混じっていて、いつも見ている笑顔も絵の具が溶けて混ざったみたいにぐちゃぐちゃで顔色が分かりません。 「それとも、ご飯でも食べに行きたいか……」 「お父ちゃん……」 ぐっとトレーナーさん喉が詰まる音が聞こえて、ぎゅっと手に力が籠められました。ですがそれは私も同じで、これから自分が言おうとしていることを何とかして声に出そうと振り絞っています。 「トレーナーさんは、私のお父ちゃんなんですか……?」

3 21/10/31(日)02:04:25 No.861807911

それにはいと答えてほしいのかいいえと答えてほしいのか私には分かりませんでした。ただあの写真を覗いた時、お母ちゃんの幸せそうな顔を見た時、トレーナーさんとの思い出が浮かんだとき、私の中でいろんな感情が弾け合って、混ざり合って、みんなを置いてトレーナーさんを探しに行ってしまっていました。 どうして、だけが頭の中に浮かんでそれが私の中から突き破ってきそうで、そうしないと私は走る理由さえも何処かに置き忘れてしまいそうで。 「……スペシャルウィーク、何を言っているか分からない」 トレーナーさんは言葉を慎重に選びながらそう言いました。 「私、写真見ちゃったんです。子供のころから、大人になったお母ちゃんとトレーナーさんの写真、勝手にごめんなさい! で、でも、教えてほしいんです! 違ったら、とっても恥ずかしいけど……それでもはいかいいえだけでもいいから答えてほしいんです!」 トレーナーさんは優しくてちょっぴり厳しくて、私に嘘なんかついたこともないそんな人でした。そんなトレーナーさんから言われたことなら何でも信じる気でした。信じるつもりでした。

4 21/10/31(日)02:04:36 No.861807987

「だから、教えてください! ホントのこと! トレーナーさんは、お母ちゃんのことを知ってたんですか? 私の、お父ちゃんなんですか!」 くしゃりとトレーナーさんの手の中にあった写真が握りしめられ、トレーナーさんは俯きながら歯を食いしばっているようでした。そうして数秒だけ唸ると、私の眼を見つめ直しました。 「私は……俺は、君の……」 どきり、と心臓が高鳴ります。その時ふと後ろで足音が聞こえました、エルちゃんたちが私達を見つけて走ってきているのでしょう。それでも振り向く余裕はありませんでした。 ですがトレーナーさんはみんなを見ると、まるでこちらが泣きたくなるような悲しい目を私に一つ向けて、そのまま何も答えずにただ背を向けて歩き始めてしまいました。 「あ、待ってください! トレーナーさん、まだ、まだ答えを聞いてません!」 「スペシャルウィーク」 追いかけようとする私にも顔を向けずに、トレーナーさんは口を開きました。

5 21/10/31(日)02:04:50 No.861808040

「聞いてどうする」 「えっ……?」 「夢に専念しなさい。私も、そんなことのために君を担当したわけじゃない」 ピシッと私の中で何かがひび割れる音がしました。私が思わず立ち止まっても、トレーナーさんは止まらず、振り返ることなく廊下を歩いて消えて行ってしまいます。 そんなこと。答えも貰えず、出すこともできず、渦巻いた思いが何処か心のみな底に沈んでしまったように冷たくなって、私はしばらく友達の皆が声をかけていたことにさえ気づきませんでした。 嘘だって良かった、信じさせてほしかった。ただそれさえもできなかったことが、何よりの裏切りのような気がして、私は一体何を期待していたのだと、自分が悔しくなって。 それでも何故だか涙がでてこないことに、可笑しいな。とただ自分の足を見つめることしかできませんでした。

6 <a href="mailto:s">21/10/31(日)02:05:47</a> [s] No.861808272

スリーゴッデスのせいで忙しすぎてちょっと日が空きましたがスぺちゃんのトレーナーさんスぺちゃんのお父ちゃん概念の続きです

7 21/10/31(日)02:08:33 No.861808768

読んでてちょっと辛いな…でも良い…

8 21/10/31(日)02:10:05 No.861809013

本当に読んでて呼吸が苦しくなるな… あのスペちゃんが泣けなくなったらやばいよ

9 21/10/31(日)02:12:34 No.861809454

分岐点になりそうなところだな…

10 21/10/31(日)02:15:59 No.861810100

クソ親父が…!!

11 21/10/31(日)02:16:02 No.861810120

嘘でも受け入れる姿勢だったのに答えも貰えずお前には関係ないとばかりに突き放されたらさしものスペちゃんも心が…

12 21/10/31(日)02:20:43 No.861810952

言ってくれなきゃわかんないじゃないか

13 21/10/31(日)02:24:32 No.861811566

今更父親だってのうのうと言うわけにもいかないし…

14 21/10/31(日)02:25:57 No.861811784

>言ってくれなきゃわかんないじゃないか それ言ったやつは本当に父親ヤッちゃったじゃん! いやまぁそうならないようにしてほしいなぁ!

15 21/10/31(日)02:27:04 No.861811976

コイツまたスペちゃんのためとか言い訳しながら逃げやがったな!

16 21/10/31(日)02:32:41 No.861812984

そうやってまた逃げるのか

17 21/10/31(日)02:55:35 No.861816956

お母さんの友達とか幼馴染とかでも信じてくれただろうになぁ…

18 21/10/31(日)02:56:21 No.861817100

スペちゃんは勇気出したのにお前は逃げるのか

19 21/10/31(日)03:01:16 No.861817751

逃げるなァァ!責任から逃げるなァァ!

20 21/10/31(日)04:32:00 No.861825923

何もかも半端で見本のようなクソ親父だ…

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