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  • 18戦8勝... のスレッド詳細

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    21/10/29(金)00:47:59 No.861130559

    18戦8勝、G1は3回勝利し海外遠征でも実力を見せつけた。 一時は脚部不安で無為な時間を過ごすがスプリンターとしての道に活路を見出しG1勝利、しかし極端な追い込みという負荷が掛かる戦法は幾度も身体を蝕みその結果は長期休養、そして2度の大きな故障を引き起こした。 それでも挑み続けたのだ、コースの不利にバ場の不利と様々な困難もあった、順風満帆とは言えなかったもしれないが私は走り切ったのだ。 そして現役を終えてターフを去った私はというと…またターフに戻ってきた、今度はトレーナーという形で。 結局私という生き物はいつまでたってもレースから離れることが出来ず…いや、レース以外を知らないといった方が正しいのかもしれない。 現役引退後にトレーナーとしての勉強を始めて今はトレセン学園所属のサブトレーナーとして後進の育成に従事しているのだ。

    1 21/10/29(金)00:51:31 [s] No.861131468

    日も落ちた午後6時30分、私は校内見回りを終えて帰ろうと思ったところコースを走る一人のウマ娘が目に映った。 一人黙々と走り込みを続けるウマ娘、祝日にもかかわらず熱心に自主トレをするのは感心だが…… 「おい!そこのウマ娘。トレーニングには学園に申請が必要なのは知っているはずだ。夜間のトレーニングにはグラウンド照明をつけなければ思わぬ事故に繋がると指導されているはずだろう」 「あ……も、申し訳ありません!ついトレーニングに夢中になってしまって…」 泥まみれのトレーニングウェアにくたびれたシューズ、一目見ればわかる。 熱心にトレーニングを繰り返して…相当使い込んでいるのだろう。 しかし規則は規則、第一ウマ娘の安全を考えればこのような事許すことはできないのだが… 「えっと、その…お言葉ですが…私、事前に申請は済ませています!確認して頂いても…?」 「…何?わかった再度確認をとってやる。名前はなんだ?」 「はい!私メイケイエールといいます!メイケイ!エールです!」

    2 21/10/29(金)00:52:21 [s] No.861131689

    ……元気なのは良い事だが少々元気すぎるな、まあいい…タブレットに名前を…メイケイエールで検索…事前に予約があるならライトが点灯されるはずなのだが… 『PM14:00 第2コース:メイケイエール』 「な…ッ!お前…昼間から走ってるのか?」 ライトが点灯されないわけだ…17時以降に予約をすれば機械が自動的に判断して夜間トレーニングとして登録されるがこれでは… システム上6時間ものコーストレーニングは想定されていない。 「あーよかった…てっきり私が何かミスをしたのかと…はい!そのー…今日は空いてますし………それに私、一人じゃないと迷惑かけちゃうから…」 「6時間も一人で…担当トレーナーには話を通しているんだろうな?適切な休息も取らなければ怪我にも繋がるんだぞ」 「あはは、ちょっと根を詰め過ぎちゃったかも…大丈夫です!適度に5分から10分の休息を入れてますしまだイケます!まだ走れますから!」

    3 21/10/29(金)00:53:41 [s] No.861132052

    シューズがボロボロになっている理由もわかった、いくらウマ娘用だとしても連続してここまで使い込まれることを想定していない。 しかしそれ以上に驚くのは彼女の脚だ、休憩を入れながらも長時間走り続ける…根気もスタミナもさることながら耐えれる脚だ、震えや熱もない。おそらく天性の才能というものだろうか……私にはなかった、折れる事のない脚…… 「わかった、君が問題ないというのなら…ただこれ以上一人で走らせるのは不安だからあと3本走ったら帰るんだ。明日もまたトレーニングをすればいい、最後の3本は私が見ていてやるから…終わったらまっすぐ寮に帰るんだぞ?」 「……ハイッ!ご指導ありがとうございます!」 メイケイエールというウマ娘はその後3本コースを走って見せた、本当に6時間も走り込みを続けたとは思えない真っ直ぐな走りで…。 確かな力、同時に彼女から何か危うさを感じながらも私はトレーナー室で業務日報を書いていた。

    4 21/10/29(金)00:54:22 No.861132220

    「おっ!今日もご苦労さん!いやー優秀なサブトレーナーがいると助かるなぁ」 「…本来はトレーナーである君の業務なんだがな…まあいい、ちゃんと最後に目を通してくれ。私は日報を書き終えたら帰るぞ」 このチームを統括するトレーナー、少し気が抜けてるというか妙に神経を逆撫でするようなこの男…。 これでも重賞レースを勝つウマ娘を何人も輩出し…かくいう私も現役時代この男にレースを導かれたのだ。 「いやー俺字が汚いからなぁ…おう、ちゃんと目を通しておくから。………ああそうそう、今度ウチのチームでメイケイエールって子を預かる事になったから」 「は……?な、急に今…今言うのか!?なんの受け入れ準備もしてないんだぞ!?」 あまりの事に素っ頓狂な声が出てしまった、唐突過ぎる。しかも今日初めて会ったあのウマ娘の名前がここで出てくるとは… 「いやー…でも決まったもんだからなぁ…」 この男は…いつもこうだ。私が現役の頃からまったく変わっていない…本当に身勝手な男だ。 こういったのは事前にサブトレーナーの私にも相談すべきだろう。

    5 21/10/29(金)00:54:56 No.861132381

    「…でもいい走りだっただろ?メイケイエール。抜群のスタミナに丈夫な脚。それにデビューして1年目でG3とG2で勝ってるんだ。すごい戦力増強になるぞ~?」 コイツ…見ていたな。盗み見とは悪趣味な…それにこの相手を舐め腐った顔…腹が立つな。 「だが、そんなウマ娘がどうしてこのチームに来るんだ?そんなウマ娘向こうのチームが手放さないだろ?」 「まあ、それは、だな………メイクデビューで5バ身差の圧勝、その後G3の小倉Sで1着、ファンタジーSでも一着だしその上レコード更新。順風満々…だったんだけどなぁ。レースになるとえらい緊張してまう性分が災いして…。そんでもって桜花賞でも周囲が見えなくなりウチのソングラインと接触しての18着」 そのレースは私も見ていた、無茶苦茶な掛かり方…チームのソングラインに接触と下手をしたら怪我の可能性もあった。 ……だから彼女は一人で走っていたのか……

    6 21/10/29(金)00:56:09 No.861132702

    「あぁ…あの時のウマ娘、か…しかし解せんな。レースを台無しにされたソングラインとあのウマ娘を一緒にさせるなんて…相性は最悪だぞ」 「まー…そこはほら、サブトレーナー様が上手い事二人の間を…な?」 …気軽に言ってくれるな、年頃のウマ娘ほど面倒だというのに… 「メイケイエールが今所属しているチームのトレーナーさんがな、今度海外レースに行くってんで…それで暫くの間お前どうだ?って言われたからハイってなぁ」 「……私がいないところでずいぶんと話が進んだようだな」 「そー怖い顔しないでよ、いやぁ悪いと思ってるんだけども…どうもな、どうも…ほおっておけんというか…あの子今日も一人で黙々とコース走とったやろ?ああいう子見てるとなぁ……どうもこうも、なんとかしてやらんとって…ついなぁ…」 ――――この目だ、いつものとぼけたような言い回しだがウマ娘が好きな男の目。 わかっている、コイツが一度言い出したら他人の言う事なんて聞かない面倒な男だって事も…あの時も、あの時も、この男はずっとターフを走るウマ娘を見ていて……―――本当にウマ娘の事が……だから私はコイツが向ける目線の先を追ってしまうのだ。

    7 21/10/29(金)00:56:59 [s] No.861132899

    「フー……。…まあいい、メイケイエールをチームに編入する手続きは私がやっておこう。ソングラインにも…まあ故意ではなかったと私から堪えてもらうように伝えておく。…しかし本当に厄介な、いや個性的な子を拾ってくるな」 「えーそうかな?どの子もみんなええ子やと思うけどなぁ」 この男は他所のトレーナーが手に負えないと匙を投げられたウマ娘達に目をかけ…どれだけ振り回されても苦にせずケロっとした顔でいつもそう言うんだ。嘘偽りなく本心で…心から… 「……スイープの奴がヘソを曲げて練習場で動かなくなった時、お前という奴はスイープの心が開くまでずっとスイープと向かい合って根競べ、夜になっても動かなかったな」 「…そんな事もあったなぁ」 「……今じゃ暴君なんて言われてるオルフェーヴルのヤツがデビュー前に怖気づいてしまい、寮から出ないなんて言い出した時は一晩付きっ切りで話し相手になってやったな」 「…はは、そんな事あったかな?」 ……―――どんな思い出も、この男にとっては日常、楽しい思い出なのだ。大好きなウマ娘を走らせるためなら何でもする本当にどうしようもない男だ。

    8 21/10/29(金)01:00:54 [s] No.861133797

    「んー…でもなぁ、俺の中で一番手間のかかったウマ娘は…ソイツらじゃないんだよな…ソイツは諦めが悪くて、何度も一人でゲート練習をして、クラシックのG1前線に自分の足跡を残そうといっつも泥臭い事やってて…本当にほっとけない…頑固で、偏屈で、レースに真っ直ぐなウマ娘で…」 「あ゛…う゛……」 またこれだ、言葉が出ない…思わず後ずさりをしてしまいデスクに身体をぶつけてしまう。私は今どんな顔をしてるんだ? おそらく今私は…とても、人前に見せれない顔をしているだろう。不意打ちは卑怯だ、この男はいつも私の心を掻き乱す。いつもこうだ。 ここまで心を乱されたらもうまともにコイツの顔も見れないじゃないか。私を覆っている厚い鎧はいとも簡単に抜かれてしまうのだ。 「……そんな頑固で偏屈なウマ娘を…よく最後まで導いたな」 「………そんなん当ったり前やろ?なんたって俺が惚れ込んだウマ娘なんだから……ソイツがどう思おうと、俺は最後までソイツのレースを見届けてやるって決めたんだよ」

    9 21/10/29(金)01:05:43 [s] No.861134852

    恥ずかしくて聞いてられない。私の顔はもう今頃耳まで真っ赤になっているのではないか?赤く…コイツの顔を直視することが… 「……わかった、もう十分わかった。…私の反応を見てそんなに楽しいのか?」 「いや!そんな意図はなかったんやけどなぁ…ついつい心の本音ってもんが出てしまったみたいで…」 絶対嘘だ。 「聞く耳持たん!…帰りに飯でも驕れ、なんでもいいぞ」 「たはは……これ以上の金欠は困るんだけどなぁ」 うるさい、聞く耳はもたん。彼を小突きながら私はまたこのチームに一波乱生み出しそうなメイケイエールとソングラインの事を考えながらこの男と帰路につくのであった……―――――。

    10 21/10/29(金)01:08:09 No.861135404

    濃厚なトレデュラじゃないか…

    11 21/10/29(金)01:08:37 No.861135510

    架空ウマ娘良いぞー!