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21/10/22(金)02:46:05 「ラス... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1634838365220.png 21/10/22(金)02:46:05 No.858820064

「ラスト1本!スタート!」 トレセン学園、練習場の芝コース。勢いよく手拍子が叩かれた。 すっかり日も落ち、照明が炊かれる中で、芝コースを駆けていく一人のウマ娘がいる。 1月の冬の寒さを切り裂くように、身体中に熱を迸らせ前へ前へ。パーマを掛けたツインテールが、汗と交わりたなびいていく。 「どうした!どうした!ペース落ちてるぞ!ジョーダン!!!!」 向こう正面に入って必死にターフを駆ける彼女に、トレーナーがそう大越で呼びかける。 「うっせぇ!!!バーカ!!!」 汗だくになりながら必死に声を出す彼女の名前はトーセンジョーダン。 歯を食いしばりながら第三コーナーに入り、徐々に減速。そして第四コーナーに入る手前でスピードを上げ始める。

1 21/10/22(金)02:46:25 No.858820100

「がんばれ!!!がんばれ!!!あとちょっとだ!!!」 そんなトレーナーの声をうるさく思いながらも、遂に第四コーナー出口に出てホームストレッチ。 張りさけそうな筋肉痛と、幾度となく冷気にひっかかれて痛む肺を抱えて 「あぁああああああ!!!!」 彼女はゴール板を駆け抜けた。それと同時にトレーナーはストップウォッチを止め、クリップボードにタイムを記録する。 第一コーナーまでクールダウンするトーセンジョーダンだが、汗だくのジャージ姿でその場にへたり込んだ。 「はー・・・はー・・・」 息を切らしてどうにか出てきたのは言葉にならない苦しみの声。 そして冷静になって脳裏に浮かんだのは (マジ・・・なんでこうなった・・・) ハードな練習をこなしている現在の環境に対する、当たりようのないフラストレーションだった。

2 21/10/22(金)02:47:06 No.858820163

12月、プレオープンのエリカ賞を見事制した彼女だったが、その後待ち構えていたのは、次走のために更なる鍛錬に燃えるトレーナーの熱血指導だった。 来たるべきクラシックに向けて、練習は一段とハードになり、ここまで3戦2勝という成績にも拘わらず、練習内容をこなす彼女に余裕は全くない。 「何でこんなにキツいんだよ!!!」 いつだったか、トレーナーに抗議した所、出てきた答えは 「皐月賞があと3ヶ月後に控えてるんだぞ!!!!!」 というクラシック初戦への執念のような彼の意思。 確かにクラシックのG1レースで勝ちたくないか、と言われれば、それは彼女も勝ちたいに決まっている。だが、練習量がどこか常軌を逸しているように彼女には思えて仕方なかった。 元から練習はそこまで好きではない彼女だ。もう少しのんびりと自分のペースで練習したい所だが、どうにも彼女のトレーナーはそんな彼女の意思など知らぬがごとく、ハードメニューを次から次へとつっこんで来る。 それに不満を口にしながらも、何だかんだで練習をサボることなく付き合った結果が、今の彼女の状況である。ターフの上で光る夜間照明。これではまるで地方のナイターレースのよう。

3 21/10/22(金)02:47:30 No.858820209

「マジふざけんな・・・。・明日はサボる・・・絶対サボる・・・」 鬼の形相で現在の状況に怨嗟の声を出しつつ、芝の上に座り込む彼女。 そんな折り 「お疲れ、ジョーダン」 とことこと、トレーナーが彼女の元に歩み寄ってきた。 「クールダウンしないと、脚に乳酸溜まるぞ」 全てを出し切った彼女にそう彼は話しかけたその刹那 「あ”ぁ”!?」 トーセンジョーダンの怒りの矛先が真っ直ぐに彼に向けられた。 「あっ・・・」 途端顔を真っ青にして少したじろぐ彼に 「うっせぇ!!!分かってるわボケ!!!」 半分マジギレ気味にトーセンジョーダンが追い打ちをかける。

4 21/10/22(金)02:47:54 No.858820236

「ご、ごめん」 冷や汗をかいて顔を引きつらせる彼を一瞥すると、彼女はゆっくりと立ち上がり、何も言わずゆっくりとターフを流し始めた。 「あ・・・あとな!!1」 その後ろからトレーナーが話しかけるが、それを無視してトーセンジョーダンは脚を止めようとしない。 そんな彼女に 「さ、最後の。1本の上がり・・・だ、けどぉー!!!さ、34.6だったぞぉ~~~!!!まずまずだった!!!」 びくつきながらも彼はそう声を張り上げた。 そんな彼の言葉を耳に入れながらも、決して振り向こうとしないトーセンジョーダンだった。

5 21/10/22(金)02:48:24 No.858820298

トレセン学園栗東寮。 「戻ったッス・・・」 練習を終えて自室に戻ってきたトーセンジョーダンは、同室のウマ娘に声を掛けると、 「あ”ーーー・・・」 疲れを口から吐ききるようにベッドに倒れ込んだ。 「お疲れッ!!!ジョーダン!!!」 そんな彼女の様子を見て、元気いっぱいに話しかけてくるウマ娘がいる。凜々しい瞳、黒く短いショートカットの髪の毛。 彼女の名はウイニングチケット。ダービーウマ娘である。 「チケゾーさん、ども・・・」 力なく笑い、彼女は手を振ってそれに答えた。 「最近練習頑張ってるねッ!!!すごいよッ!!!」 「あー・・・まぁ・・・」 先輩の彼女を前にして、どこか遠慮した感じに彼女は答えた。

6 21/10/22(金)02:48:52 No.858820349

「もうすぐクラシックだもんねッ!!!一生懸命で・・・いっしょうげんめいでぇぇええ!!!うぉぉぉぉぉん!!!ジョーダンはずごいよぉぉぉぉぉおお!!!!」 何に感動したのか、それとも何かを思い出して重ね合わせたのか。突然泣き出したウイニングチケットを尻目に 「あざっス・・・あざっス・・・」 と、ベッドの上で倒れた態勢はそのままに。どうにか頭を彼女は振った。 ベッドの上で顔を埋めていくトーセンジョーダンだったが 「あ・・・」 と何かに気づいて声を出す。シーツの上にマスカラの色が移っている。 「やっべ・・・化粧、落とさなきゃ・・・」 そう独り言を言うとベッドから立ち上がり、よろよろと自分の机に向かい始めた。 「あれ?ジョーダン、お風呂まだ?」 とウイニングチケットが問いかけ 「ア、そっすね。何かすぐに帰りたくて一直線に帰ってきちゃいました」 とトーセンジョーダンが化粧を落としながらそう返した。

7 21/10/22(金)02:49:21 No.858820393

トレセン学園にもシャワー室は当然あり、そこで汗を流すことも当然できる。しかし、そこまで彼女は気が回らなかった。一刻も早く部屋に帰って眠りにつきたいという、その願望の故である。 「ぼちぼち行きますよ。フジさんにも遅ぇって怒られますし」 そう彼女は言うと、風呂支度を始め、ふらふらと部屋を後にしようとした。 「ねぇ!!!ジョーダンッ!!!」 ドアに手を掛けた彼女に、ウイニングチケットが声を掛けた。 それに彼女が振り向くと 「気をつけてね。お風呂で寝ちゃわないようにねッ!!!」、 と一言。 「・・・・・・はーい」 と彼女は疲れた顔で何とか笑顔を作り、自室を後にしたのだった。

8 21/10/22(金)02:49:54 No.858820456

翌朝。5時30分。 トーセンジョーダンの目覚ましの音が部屋に鳴り響く。 「んん・・・・・・」 それに顔をしかめて、彼女は再び夢の中に入ろうとしていた。そんな最中 「ジョーダンッ!!!起きて起きて!!!」 目覚ましよりけたたましい声と、身体を揺する振動に、彼女は直面した。 「あと10分・・・」 「だめだよッ!!!起きて!!!」 「いや、マジむりだから・・・」 「起こせって言ったのジョーダンでしょ!?」 必死に彼女を起こすウイニングチケット。 トーセンジョーダンが彼女に依頼していたこと。それはクラシックに向けた朝練があるため、時間が来たら何をしても起こして欲しいというそんな願い。

9 21/10/22(金)02:50:41 No.858820537

「はい!!!起きるッ!!!」 ウイニングチケットが彼女の布団をひっぺ返し、トーセンジョーダンはその場に丸まり始めた。 「さみぃ・・・」 と言いながらも、依然として彼女は眠りの中に戻ろうとするが 「おーきーてー!!!!」 ウイニングチケットに何度も揺さぶられ 「ぁい・・・」 トーセンジョーダンは遂に観念したかのように身を起こした。だがそのまぶたは重い。身体中が鉛のように重く、全身に疲労を感じる彼女。そのままベッドに再び倒れ込みそうになるが 「おっと!!!」 ウイニングチケットがそれを支える。 「あ・・・・・・ども・・・・・・」 トーセンジョーダンがそう言うが、そのままの態勢で身体が徐々に倒れていく。 「ジョ、ジョーーーダァァーーーン・・・・!!!」 半分泣き顔になり始めたウイニングチケット。その声を聞いて、トーセンジョーダンのおぼろな瞳がゆっくりと開かれる。

10 21/10/22(金)02:51:17 No.858820593

「あ・・・!」 「ジョーーーーダン・・・」 彼女の視界にうつったのは、今にも泣き出しそうなウイニングチケットの顔。途端彼女はしゃきっと身を起こし 「ごめん、チケゾーさん」 と一言声を掛けた。 「起きた?」 「うん、起きました」 その言葉を聞いて 「よかったぁぁあーーー・・・・・・」 ウイニングチケットが胸を撫で下ろした。 彼女に軽く会釈をし、ふと時計を見ると、5時40分。急いで準備をしないと朝練に間に合いそうもないことに気づき 「やっべ」 と言って、彼女は急いで身支度を始めた。着替えを行い、顔を洗いに一旦部屋の外へ。急いで戻ってくると、いつものルーティーンの化粧を始める。

11 21/10/22(金)02:51:53 No.858820658

鏡の前でにらめっこをし、どうにか大急ぎで顔を整えると 「・・・ん!」 と一言。満足そうに少し彼女は微笑んだ。 「今日の爪は・・・」 と言い、取り出したのは、つけ爪のケース。急いでネイルを整えていく彼女だが 「うっわ・・・時間ねぇ・・・」 刻一刻と迫る時間に、少し焦り気味のようである。 「あー!!!もう!!!」 とやっつけ仕事で爪を整えると、急いで着替えを始めようとした。 「ね!ジョーダン!!!」 そんな彼女に話しかけるウイニングチケット。 「なんスか?」 少し焦り気味にトーセンジョーダンが返すと 「ジョーダン、脚にクリーム塗らなくていいの?」 と一言。

12 21/10/22(金)02:52:14 No.858820694

「あ・・・・・・」 その言葉に「忘れていた」と言わんばかりに彼女は口を開けた。 いつもは塗っている足の爪の保護用のクリーム。大急ぎで身支度を調えるばかりに、それを塗るのを忘れていたのだ。 「あーーーーっとぉ・・・・・・!!!」 朝練まで時間は無い。どうしようか。と焦る彼女だったが。 「今日は、今日はいいッスよ!!!じゃ、いってきまーす!!!!」 と言い、そのまま急ぎ足で部屋を出て行った。 その場に残されたウイニングチケットは、ふと彼女の乱雑な机の上をぼんやりと眺めた。 「ジョーダン、最近忙しそうだなぁ・・・」 とぽつりと言ったその言葉の先に、12月のエリカ賞以来、減ることが少なくなった、クリームの容器の姿があったのだった。

13 21/10/22(金)02:52:42 No.858820740

2月上旬。東京レース場。第11レース。 芝1800m、G3、共同通信杯。 天候は晴。バ場は良。 『東京レース場、風はまだまだ冷たく。しかし日差しには力強さが備わってきている、そんな風に感じられます。さわやかな冬空から共同通信杯、クラシックを見据えた本レースが始まろうとしています』 寒空の快晴の天気の中、ゲートの中に入ったトーセンジョーダンは、あるウマ娘との会話を思い出していた。 「ジョーダン、お前、共同通信杯に出るんだろ?」 昼下がりの校舎裏。トーセンジョーダンが落ち着ける場所。そこで彼女は同じくその場所を縄張りとするウマ娘にそう話しかけられた。 「ナニ?ナカヤマ。何か文句あるの?」 ニット帽をかぶった目つきの鋭いウマ娘、ナカヤマフェスタにトーセンジョーダンはそう話しかける。

14 21/10/22(金)02:53:15 No.858820796

「文句なんてねぇよ。ただ、な」 「何だよ」 「一人、強ぇウマ娘が出るんだよ。共同通信杯」 そう言って彼女はにやりと、トーセンジョーダンに話しかける。 「教えてやろうか?」 とナカヤマフェスタは言うが 「別に・・・」 とトーセンジョーダンは彼女から視界を逸らし、自分のツインテールを右手で触る。 ナカヤマフェスタ。ジュニア級の時にG3を勝ち、先日行われた中山レース場、芝2000m、G3、京成杯でも2着に食い込んだウマ娘。彼女も自分と同期であり、これからクラシックで覇を競うライバルになるウマ娘の一人。 そんな彼女が「強い」という相手だ。気にならなくはないトーセンジョーダンだった。しかし「教えて」というのも何だか気が引けた。何故か自分が彼女の下の立場に甘んじているような気がして。

15 21/10/22(金)02:53:41 No.858820855

そこで 「言いたきゃ言えばいいんじゃない?」 と言うに留めることにした彼女である。 それを聞いてナカヤマフェスタは鼻で笑うと、 「ブレイクショット」 と一言。 「アタシはジュニア級の時勝ったんだけどさ、二着に食い込んできたんだよな、クビ差で。身体はちっこいんだけど、朝日杯でも3着に食い込んでるし、今まで1勝しかしてないけど、掲示板外した事ねぇんだよ、アイツ」 「あっそ」 心にもたげるのは強い興味。しかしそれを覆い隠すように彼女は素っ気なくナカヤマフェスタに返す。 「まぁ、お前も足下掬われんようにしろよ」 からかうように笑う彼女に、心の中を見透かされたような苦みを感じつつ、 「ハイハイ」 と努めて冷静に彼女は返した。

16 21/10/22(金)02:54:06 No.858820902

(ブレイクショット・・・か) と記憶を巡らす中で 『さぁ、ゲート開いた!スタートを切りました!夢を乗せて、共同通信杯が始まりました!』 遂に共同通信杯が幕を開けた。 第二コーナーのスポットから始まる本レース。 『まずはフレンドシップ!すこーん、と抜けてハナを切り、向こう正面に入っていく所です』 ゆるくなった第二コーナーを抜けて、逃げウマがハナを切り始めた。 『二番手にガンパレード!そしてその外にトーセンジョーダンがつけています!』 先頭から1バ身程度離れて、トーセンジョーダンは三番手にポジションを取る。 そして最初の直線。バックストレッチがすぐ目の前に広がっていく。 「ジョーダン、このレースは末脚勝負だ。東京レース場は501mの長い直線と、残り200m手前にある心臓破りの坂がポイントになる。そこでいかに全力を出し切るかが重要だ。だから最初から飛ばしすぎず、好ポジションを取ることだけ考えろよ」

17 21/10/22(金)02:54:31 No.858820947

トレーナーに言われた言葉を思い出し 「うっざ」 と苦虫を潰したように呟くトーセンジョーダン。しかしそのペースはトレーナーの指示通り、逃げウマの挑発に乗らず、自分が得意な先行策ができるよう、極めて冷静に足を進めようとしていた。 『先頭から後続まで、そこまで差が無い中で向こう正面の中間です!』 どうやら後続も同じ心持ちらしい。流石にクラシックを臨むウマ娘ばかりの共同通信杯。皆が皆、トレーナーに同じような事を言われたのだろう。 『改めて確認しましょう!先頭はフレンドシップ!じわじわと差を詰める二番手にガンパレード!そしてその後ろにスクエアステージ!その二人の間にトーセンジョーダン!』 トーセンジョーダンの前に一人ウマ娘が先行しはじめたが、 (まだなんだろ・・・クソ・・・) 抜かれた事を苦く思いつつ、無理に足取りを輝かせようとはしなかった。 バックストレッチが終わり、第三コーナーに入り始める。 (いっちゃお!!) 途端、先頭のフレンドシップがスピードを速め始め (アタシも!!) それにガンパレードが競り合い、2人が突出し始めた。

18 21/10/22(金)02:54:55 No.858820994

(あたしも行きたい・・・!) 気持ちよく差を広げていく2人のウマ娘を見て、そう思ったトーセンジョーダンだったが (でも・・・まだ、マジになる所じゃない・・・!!!) とその欲望をぐっと抑える。 2人が先に先に進む一方、バ群との差がつき始め、気づけばトーセンジョーダンがバ群を引っ張るポジションになっていた。 (なーんか逃げウマみたい・・・) と自分のポジションを思う一方で、トーセンジョーダンが後ろをふと確認した。 「ブレイクショット」 そうナカヤマフェスタが認めたウマ娘の姿を確認するために。 するとブレイクショットはバ群中団を走っているのが確認できた。まだまだ脚を貯めてそうな雰囲気である。 (マジで・・・あの陰キャが言ったみたいに。最後でやるしかなさそー・・・) とトーセンジョーダンは思い、前を向く。

19 21/10/22(金)02:55:41 No.858821059

気がつけば第三コーナー終わり、第四コーナーに入り始めていた。そして前には逃げる2人、後ろにはバ群。 状況を改めて飲み込んだトーセンジョーダンは (よっし!!!) と気合いを入れると、徐々にスピードを上げ始めた。ロングスパートの態勢である。第四コーナーを抜ければあとは最後の直線、ホームストレッチ。コーナーがない以上、ここから加速しホームストレッチで最高速になるように調整する算段。そして長い直線の中でスタミナを切らすウマ娘が出ることを期待した走り。 (勝負じゃん!!!) 一層の加速をしていくうちに、徐々に逃げウマとの差が縮まり始める。後ろのバ群もトーセンジョーダンに食らいつこうと必死になっていく中、 『さぁ600の標識を通過!第四コーナーを抜けて、まだまだ直線は長い!しかしこの先にクラシックの夢が繋がります!』 遂に東京レース場の長い直線がウマ娘達の目の前に現れた。

20 21/10/22(金)02:56:14 No.858821121

『フレンドシップ!思い切った逃げ!』 依然としてハナを切る逃げウマ。 『そしてそれを引きつけるように!ガンパレード外側二番手!』 そしてそれに身体を合わせてくる二番手。 だが 『しかし後続!飛んでくるように迫ってくる!!!』 トーセンジョーダンが引き連れたウマ娘達が一斉にその後ろに殺到している。 (ここからが勝負だっての!!!) トーセンジョーダンも全力の脚色で直線を駆けていく。 そんな最中 『内の方から!赤い髪をたなびかせてブレイクショット!!!』 それは一瞬だった。背の低いウマ娘が、直線で一気に抜いて先頭に躍り出る。

21 21/10/22(金)02:56:36 No.858821161

(はっや・・・!) 抜群の瞬発力にあっけにとられるトーセンジョーダン。 (でも・・・!!!) だが彼女は諦めていなかった。一層の加速をし、先頭に躍り出たブレイクショットを捉えようと脚色を輝かせる。 「トーセンジョーダン!!!真ん中を割って上がってこようとしている!!!」 (やるしかないんだろ・・・!!!) 全力で繰り出す自慢の末脚。 そんな最中 「むーりー」 「むりー!!!」 後続の一部のウマ娘、逃げウマ2人の脚色に陰りが見え始める。 長い直線と坂道に耐えきれなくなってきた脱落者が出始めたのだ。

22 21/10/22(金)02:57:10 No.858821228

(あぁぁああああ!!!もう!!!坂道きつい!!!) トーセンジョーダンも必死に坂道を上りすすめ、目の前のブレイクショットの陰を追う。 (坂道終わり!!!ここからぁ!!!!) 残り200を切ってあとは平坦な直線。ここでスピードを上げようと懸命に前に脚を進めるトーセンジョーダン。 だが 『しかし抜けた!!!ブレイクショット!!!完全に抜けた!!!ブレイクショット完全に抜けた!!!』 既にブレイクショットは遙か前を進む。 心に宿ったのは今までのレース戦績。ジュニア級のG3ではナカヤマフェスタに負け、朝日杯では三着に終わった悔しい思い出。 (アンタ達とはね・・・!走ってきた道程が違うのよ!!!アタシは!!!) それが誇りとなり、バネとなり、後ろのウマ娘達を突き放していく。 そして 『ブレイクショット、見事に一着!!!』 先頭で彼女はゴール板を駆け抜けた。 トーセンジョーダンは二着。一着とは1と3/4バ身差だった。

23 21/10/22(金)02:57:37 No.858821277

「お疲れー」 東京レース場、控え室にて。 レースを終えて戻ってきたトーセンジョーダンは、トレーナーにそう言い手を振った。 「うーん・・・」 頭をひねって唸るトレーナーに 「何だよ、初めてのG3で二着だぞ。褒めろよ」 と挑発するように笑うトーセンジョーダン。 「あ、あぁ!!!その通りだな!!!ご、ごめんな!!!」 とトレーナーが焦って頭を下げるのを見て 「ナニそれ!マジうける!」 と、トーセンジョーダンは笑って見せた。 しかし、その実、心の中には渦巻き立つものが彼女の中に存在し始めていた。 同時に思い出したのは辛く苦しい練習の数々。そして先頭を捉えられなかった衝撃。 そしてそれは心中の大海の底に、大きな錨を沈めるように、ひっかかりをもたらし始めていたが、彼女はその存在に気づくことは未だないようだった。

24 21/10/22(金)02:58:34 No.858821386

こんな話を私は読みたい 文章の距離適性があっていないのでこれにて失礼する これまでのやつ fu453546.txt

25 21/10/22(金)02:59:32 No.858821498

寝る前にいいのが読めた アンタの続きを待ってる

26 21/10/22(金)03:11:33 No.858822705

おい待てェ 相変わらずレース描写が巧みじゃねぇか

27 21/10/22(金)03:19:49 No.858823473

前回も読ませて頂いたけど面白いです ただやっぱりこのトレーナーちょっと心配になる…気にしすぎか?

28 21/10/22(金)03:47:47 No.858825621

長いしいい文章だな いいぞもっと書いてくれ

29 21/10/22(金)03:52:26 No.858825898

いつもいいレース描写しやがってよ…

30 21/10/22(金)04:16:01 ID:34VHkVYQ 34VHkVYQ No.858827179

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