虹裏img歴史資料館

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21/08/30(月)23:11:24 どうや... のスレッド詳細

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画像ファイル名:1630332684421.jpg 21/08/30(月)23:11:24 No.840977777

どうやら私は保健室で気絶してしまったようです。意識を失う前になにをしていたのか記憶が少しあやふやです。 先生は私が目を覚ましたことに気付くと熱を測ったり、いつの間にか出ていた鼻血の処置をしてくださりながら、気分はどうか聞いてきました。 「……気分はそれほど悪くありません。ただ、何があったのかよく思い出せなくて……」 お腹にジクジクとした熱と痛みが残っていて無意識に手を当ててしまいます。 ちらとベッドを見ますが、もう寝ていた生徒さんはいませんでした。 そんな私を見て、何故か先生は頭を抱えていました。

1 21/08/30(月)23:13:46 No.840978823

起きあがってしばらくはぽわぽわとしてトレーニングに集中できないかもと不安でしたが、身体を動かしている内に頭が冴えてきてむしろ普段より調子が良くなりました。とても集中できていて、絶好調という感じです。トレーナーさんも驚いていました。 何かあったのかと聞かれましたが、私は困った顔で「心当たりはありませんけど……」と答えました。 トレーナーさんはうーん、そうかあ……、なんて唸りながら、それ以上追求してくることはありませんでした。

2 21/08/30(月)23:14:09 No.840978984

……普段私は嘘をつきませんからね。ちょっとだけ罪悪感があります。トレーナーさんごめんなさい。 理由は、わかっています。目標がはっきりしたからでしょう。迷う必要もなく、焦る必要もありません。 スカイさんが、私のことを想っていてくれたことがわかったから。 どうしてそうなったのかは思い出せませんが、ベッドに寝ていた生徒――スカイさんが、私への熱い想いを吐露してくれたのは覚えています。 あの時のスカイさんは様子が変でした。夢うつつで正気ではなかったのでしょう。 それでも私には十分でした。 今の私に雑念はないのです。だから目の前の事に集中できる。身体の疼きも気にならない程に。 あなたに相応しい私になります。恋に現を抜かして、自分の夢をおろそかにするなんて許されませんから。 私が誇れる私にならなきゃ。負けたときにあなたを言い訳にしてしまうことになるかも知れないから。それだけはしたくありません。

3 21/08/30(月)23:14:30 No.840979140

……トレーニングが終わって一人になると緩む頬を抑えきれなくなってしまいました。 シャワーを浴びている間も目の前の鏡ににやけた私の顔が映っています。 ぐにぐにとほっぺを捏ねますが中々上がった頬が元に戻りません……。 ――『フラワーじゃなきゃやだ……』 「~♥!」 変な声を出してしまって、近くの個室を使っていた人に心配されて声をかけられてしまったのが恥ずかしかったです……。

4 21/08/30(月)23:15:11 No.840979417

―――――― フラワーが出てくる変な夢を見たけれど、その夢の中で自分が闇を吐ききった。良い夢だった。 保健室のベッドで目を覚ますとやけに神妙な顔をした保健の先生に、フラワーとのスキンシップはできるだけ避けてくれと頼まれてしまった。 ……なんだろう寝言でも言ってたのかな。ちょっと傷つくけど……。や、そんな人じゃないか。 「わかりました。元からそのつもりだったんで大丈夫です」 そう言って一日サボらせてくれた保健室を後にした。隣のベッドに誰か寝ていたのもあってただのサボりがいつまでもいるのは悪いと思った。

5 21/08/30(月)23:16:26 No.840979970

そしてその次の日の朝、普通の顔して教室に出てくるくらいのことはできるようになっていた。心配してくれたスペちゃんやキング、エルには悪いけど適当に誤魔化した。グラスはほとんど何も触れてこなかったのがありがたかった。 「スカイさん」 フラワーが小さい身体を使って机を運んできた。 「しばらく私がノートを代筆しますね。許可は取ってありますので!」 元々私の隣の席の子はフラワーの席の位置に入れ替わっている。私の視線に気付くと、仲良しだねとでも言いたげに微笑んで手を振ってきた。 コツン。私の机にフラワーの机をくっつける音。 「怪我が治るまで私がスカイさんの右手になりますね」 ふんす、と鼻息を出して気合いを見せるフラワーはやっぱり可愛かった。

6 21/08/30(月)23:16:59 No.840980239

「ありがとう~。たすかる~! じゃあ私は寝てても大丈夫だね……」 自動で出力されたセイウンスカイの台詞を耳で聞き取りながら、困ったなと頭の中で独りごちる。 「もう~、またそんなこと言って!」 冗談を言ってフラワーを笑わせると気分が良い。仲の良い女友達なら、それだけだ。楽しく話す以上の欲望なんか抱かない。 だから、この気持ちを制御して、フラワーのことをただの友達として見られるようになるまで距離を取らなくちゃいけないのに。

7 21/08/30(月)23:17:20 No.840980384

そういえば、今仲の良い子たちはみんな私から声をかけたわけじゃなくて、ライバルの関係から発展したり向こうから来てくれた子ばかりだった。 私自身は友達と自然に距離を取る方法なんて知らないって事にふと気付いた。

8 21/08/30(月)23:17:56 No.840980663

「はい、スカイさん。あーん」 困った。 ピンク色の可愛い箸でちょこんとつままれた小さい一口をいただく。 「おいしいですか?」 天使の笑顔が見上げてくる。拒否することなんて到底できない。 めまいをこらえながら口の中のおかずを咀嚼する。 「すごく美味しいよ」 適切な言葉が見つからず、結局は簡素な感想が出てくる。 「えへへへ~……♥」 彼女は頬を赤く染めて幸せそうに笑う。この笑顔を守る為なら世界を滅ぼしてもいい。 なんだか今日のフラワーはいつもよりグイグイ来る……。スキンシップを控えたくてもフラワーの方から寄ってこられたらどうしようもない。 私が飲み込むのを見計らって小さい箸にちょこんとつままれたお弁当が差し出される。 「あーん」 嬉しさと恥ずかしさをこらえながら小さく口を開いて、差し出されたものを口に含む。 恥ずかしすぎていっぱいいっぱいで、正直今何食べているのかわからないんだけど、どれもこれも震える程美味しいのは確か。

9 21/08/30(月)23:18:40 No.840980986

お昼時の教室に生徒は少ない。その少ない子たちが微笑ましそうにこちらを見ていていたたまれない。 私に差し出したのと同じ箸でフラワーもお弁当を食べている……。そしてまた、その箸を使って私に……。 いや、女の子同士なんだからこれくらい普通なんだ。変に意識しちゃいけない……。唇を見ちゃいけない……。 「その手では食事も不便でしょう」とのことで、二人分のお弁当を用意してきたフラワーがくっつけた机にお弁当を広げて今に至る。 たまにはスペちゃん達とも一緒に食べよう――なんて言う暇もなかった。仲の良い子たちはみんな食堂に行ってしまった。 フラワーは私の隣に座って肩をくっつけて、私の右手の代わりに食べさせてくれている。 心臓が勝手に早鐘を打つ。フラワーの肩が触れている二の腕が熱い。 お弁当を食べ終わり、フラワーが丁寧にお弁当箱を畳む間に、私は上がった体温を元に戻すのに必死だった。 フラワーと一緒にいるとやっぱり幸せになってしまう。いけないことなのに。 そして、同時に苦しい。

10 21/08/30(月)23:18:56 No.840981128

「スカイさん?」 私の前髪をかき分けて、フラワーが私の顔をのぞきこんでいた。 「…………」 フラワーはハッとした顔をして、言葉を選ぶような間があった。 「……お疲れのようですね。授業まで寝ていても大丈夫ですよ。私が起こしますから」 どうやら顔に出ていたらしい。 「だーいじょうぶ! フラワーのお弁当で元気いっぱいだよ!」 フラワーは私のことを心配してくれているみたい。 ……きみのせいだ。なんていうのはあまりにも自分勝手に過ぎる。 私が苦しいのは、私の邪な感情のせい。

11 21/08/30(月)23:20:12 No.840981652

―――――― 私の発情期は表面上は沈静化しました。 熱っぽさや感覚の鋭敏化や疼きといった身体の不調は治まりトレーニング前の検診も必要ないと判断され、トレーナーさんと相談しトレーニングの時間も元通りになりました。 初めての恋に驚いて浮ついた心では肉体の変調に翻弄されるばかりでしたが、絶対にスカイさんを手に入れると確固たる覚悟を決めた瞬間、肉体の方が興奮していた猛獣が忠誠を誓う飼い主の命令を受けたように鎮まったのです。 実際には発情期は終わっていないことを知っています。熱を持った欲求が一滴一滴、雫がカップに落ちるように降り積もっているのを感じています。……スカイさんが欲しいのは変わってしませんから。 表面張力でギリギリ保っている私の情動は、きっとほんの少しの切っ掛けで溢れ出してしまう危うい状態なのでしょう。お腹の奥の奥で濃縮された熱が渦巻いているのを確かに感じるのです。 まるで噴火するまでエネルギーをためる火山のよう。 そのエネルギーすら走る力に変えるようなイメージを頭に描きながら、芝のコースに立ちます。

12 21/08/30(月)23:20:51 No.840981897

足に力をためて、ゴール位置を睨みつけます。視界が狭まり、音が消えコース以外の景色を認識できなくなります。代わりに芝の感触や風の流れといった走るのに必要な情報を肌で感じるようになります。やげてゴールまでのラインが一本の筋になって見えました。 ゆっくり息を吸ってゆっくり吐きます。 トレーナーさんの手が振り下ろされた瞬間に力を一気に爆発させてスタートします。 一歩地面を蹴る度に速く、もっと速く加速。目の前の空気の壁を突き抜けるように、ただゴールを目指して走ります。 桜花賞と同じ1600メートルというウマ娘にとっては短い距離に、全ての力を出し切るように。 直線からの速度を殺さず理想的なカーブを描いてコーナーを過ぎ、正面のゴールに向けてスパートをかけます。 余計な情報がそぎ落とされて白い空間に見えているゴールに、薄く緑がかった芦毛のウマ娘の姿が浮かびます。勝つことだけを考えている真剣な眼差し。 その幻影をぶち破るように最高速度を維持したままゴール位置を駆け抜けます。

13 21/08/30(月)23:21:35 No.840982203

すごいぞ! また記録更新だ! というトレーナーさんの興奮した声が聞こえます。 減速を終え、ゆっくり立ち止まるとそのまま身体を地面に投げ出します。形振り構わず肺に酸素を取り込みながら、頭では今の走りを一歩毎に振り返り全身の筋肉の使い方をより洗練させる為の反省を行います。……まだ、全力を出し切ったと言うには足りません。ニシノフラワーというウマ娘はこんなものじゃない。 息が整うと、立ち上がってトレーナーさんに宣言します。 「もう一度やらせてください。もっと速くできます」 今の私はどこまでも強くなれるような気がしています。 セイウンスカイさん。私、どうにかなっちゃいそうなくらい、あなたが好きです。 スカイさんが苦しんでいる時に、何の力にもなれないのが悔しいんです。私を大切に思ってくれているあなただから、なおさら。

14 21/08/30(月)23:21:50 No.840982301

――年齢差も、身体の大きさも言い訳にはしません。あなたが遠慮なく悩みも苦しみも打ち明けられるくらい、頼もしくなります。 大きく呼吸をし、手足を振って一度筋肉を弛緩させます。スタート位置に立ち煮えるマグマを一瞬だけ意識すると、後はもう音の無い世界に。 トレーナーさんの合図があって、私は走り出しました。

15 21/08/30(月)23:23:56 No.840983130

これまでのfu297079.txt

16 21/08/30(月)23:25:08 No.840983607

続きか…ありがたい…

17 21/08/30(月)23:25:20 No.840983695

随分幸運そうなゾロ目で続きが来て嬉しい…

18 21/08/30(月)23:25:43 No.840983845

フラウンスいいよね…

19 <a href="mailto:フラウンス">21/08/30(月)23:26:19</a> [フラウンス] No.840984066

月刊フラウンス(開き直り)。まーた間あいてしまった。 読んでくれてる人は分かってると思うけど、ウンスはわざとちょっとどうて……少年ぽくしてます。 ウンスは史実のネタから(調教師が受け取りに来なかったこととか)もっともっとかわいそうな子にする予定で、3回目まではそのつもりで書いてた。でも実装されたウンス見たら流石にキャラ違いすぎるからやめた。 その影響でフラワーに想定よりちょっと積極的になってもらいました。

20 21/08/30(月)23:26:50 No.840984259

レス番がハイパーラッキーセブンだ

21 <a href="mailto:フラウンス">21/08/30(月)23:29:07</a> [フラウンス] No.840985111

ほんとだ。今気付いた。5個も並ぶのはすごいな

22 21/08/30(月)23:32:04 No.840986250

リアルタイムで見るの初めてだから書くの応援しているよという気持ちを伝えておくね…

23 21/08/30(月)23:36:38 No.840987951

これまでのあったのか ありがたい健康になる

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