虹裏img歴史資料館

ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。新しいログはこちらにあります

21/08/30(月)22:12:48 皐月賞... のスレッド詳細

削除依頼やバグ報告は メールフォーム にお願いします。個人情報、名誉毀損、侵害等については積極的に削除しますので、 メールフォーム より該当URLをご連絡いただけると助かります。

画像ファイル名:1630329168376.jpg 21/08/30(月)22:12:48 No.840952109

皐月賞は3着、日本ダービーも2着、菊花賞も2着。 2着なのはすごい事だったし、その中間にあるG2も沢山勝つことができた。 黄金世代の一角として気づけば有名にもなったし、…それなりに、厳しい練習と、ある程度は楽しい学園生活は送れている。 だけど… (三冠も、…日本一にもなれなかった) 私、なんでトレセンに来たんだろう。 日本一のウマ娘になるって…決めたのに…なんで…!! そんな感情もあっという間に消えて、休みの日だからか、ぼんやりと放課後のテラスの外から見える景色を見ていた。 冷たい雨、暗い空、…本当は見るものなんてないのに、ただぼーっと見続けてしまう。 ……はあ、なんか最近疲れてるのかな…。

1 21/08/30(月)22:13:06 No.840952236

「聞いたか?サイレンススズカが引退レースを変更したらしい」 「…?」 後ろで数人のトレーナーが喋っている。 なんだろう、静かに…その名を聞いたら、嫌でも耳を向けてしまう。 「何でもジャパンカップに出るらしいぞ、…トレーナー曰く、海外に行く前に前哨戦として1度やるべきと決めたらしい」 「あのトレーナーらしいなぁ、本当にここまでめちゃくちゃな勝利をしてきたのにどこまでも妥協しない…」 「いやはや、アイツは凄いなぁ、着任3年目で海外に一緒に行こうとする度胸も凄いと思うよ」 海外に、行くんだっけ。 「………」 彼等が居なくなって、私は大きなため息をついた。 ジャパンカップ、日本だけじゃない、海外のウマ娘も集う場所。 有馬記念と並ぶ、シニア級の最盛期とも言える、日本を代表する…。

2 21/08/30(月)22:13:29 No.840952379

「……私、出れるのかな」 日本一になりたい、…本当はそうじゃない。 本当は違うのだろう、彼に縋りたい心があるのかもしれない。 ドス黒い感情に満たされて。それをもう振り払う手段もなく、ただ真っ暗な瞳でお空を見続ける。 最近、セイちゃんが怖がってたな、いい加減、しっかりしないとダメだね。 うん、トレーナーさんの所に行こう。 ジャパンカップで勝てば…日本一に、なれると思うから。

3 21/08/30(月)22:13:45 No.840952495

ガチャり、扉を開いて、ゆっくりとトレーナー室に入る。 「あら、どうしたの、スペちゃん」 優しいおばあさん、負ける私に叱ることもせず、頑張ったねといつも撫でてくれる人。 ……だから、いつも無理をさせてる人なんだ。 「あの、ジャパンカップ、出走権…ありますか?」 「……スペちゃん!?いきなりどうしたの!?…いきなりシニアの…しかも大舞台なんて…レースの体力よりもあなたのメンタルの部分の方が心配だわ…」 「私、日本一になりたいんです」 「…身体は資本よ、壊す訳には…」 「嫌です!!…ごめんなさい…このレースにだけはどうしても…どうしても……!」 どうしても、何。 ………スズカさんを、倒したい?

4 21/08/30(月)22:14:00 No.840952600

(…………) 「……分かったわ、その代わり、有馬記念の投票は辞退することで良いわね」 「………!分かりました…」 「……その、…スペちゃん」 彼女は優しく、穏やかに、しかしどこか怒ってるような言葉で話す。 「日本一…っていう言葉は、呪いじゃないわ、…貴方は貴方らしく結果を残してるの、…だから、本当に…無理だけはしちゃダメよ」 「……はい…分かってます…」 「…それなら、応援するし、調整もするわ、…今から始めましょうか?」 「はいっ!!お願いします!」 …この黒い感情はもう消すことはできない。 だから、せめて、…どこかに、誰かに、投げ捨てれば…… 消えると信じてる。 (お母ちゃん、こんな悪い娘、許さないで良い…から…) …その日の練習は嫌なくらい体にこびりついて、己の力になった。

5 21/08/30(月)22:14:24 No.840952773

おかあちゃん、私、ジャパンカップに出るよ。 …うん、言いたいことはわかってる、クラシック級なのにいきなりシニアに出るのかい?ってことも。 …その、ね、サイレンススズカさんって人が出るの。 彼女、そのレースがトウィンクルシリーズの引退になるらしくて…私、どうしても負けたくない。 あの子に勝って、日本一を証明するの。 ……別に、彼のことはもういいと思ってるよ? 違う、違うから…本当に違うの。そういう為の勝負じゃない、から。

6 21/08/30(月)22:15:20 No.840953198

~~~~~~ レースの前、スペちゃんはとても険しい表情をしていた…。 「スズカさん」 「どうしたの、そんな怖い顔して…」 「負けませんから」 らしくなかった。たった一言だけそう言って居なくなってしまうの。 スペちゃんなら、そんなことしないもの 「スペ、どうしてしまったんだ」 トレーナーさんも、凄く心配してる、私も凄く心配だった。 「……分かりません、…トレーナーさん、彼女を知りませんか」 「…分からない……どうしちまったんだよ…」

7 21/08/30(月)22:15:44 No.840953345

「……」 今、レースが始まる。 彼女を倒せば。…スズカさんを倒せば。 …もしかしたら奪えるかもなんて、思ってたんだろうな。 …愛してるの?…もう思わないと決めたんじゃないの。 ううん…違う、これは、日本一のウマ娘になるためだから。 …だから、倒すんだ。 走る、スズカさんはまた綺麗な逃げをだす。 身体は熱いのに、心は芯まで冷えきっていた。先行で、食らいついて、最後まで追いつけば、追いつけ…… …早い、早くて、誰も追いつけないほど早い。 「……嫌」 ぽつりと、漏れた言葉。足音に潰されて、スズカさんは最後のゴールにもう入ろうとする。 「いや、いや……嫌だ…いやっ!!」 足が、届かない。 私は…………私はっ……!

8 21/08/30(月)22:16:11 No.840953540

ただ、実力にねじ伏せられて 彼女に勝つことも、近づくことも出来なかった。

9 21/08/30(月)22:16:28 No.840953667

「……お疲れ様、スズカ!」 「はいっ!トレーナーさん!」 彼は静かに抱きしめた、嬉しそうに、スズカさんは甘えている。 ……もし、私が勝てば、あの位置に私がいたのかな。 苦しくて、辛くて…それでも、好きだった。 「これで…憂いなく海外に行けるか?」 「…はいっ」 「……」 行っちゃうんだ、もう、会えない、その姿を見ることも……。 振り向いて、静かに控え室に入る。 トレーナーさんは来ないで欲しいと言っておいた、誰もいない控え室で、静かに泣き崩れる。 「うっうっ…うわぁっ…ぁあ…」 ボロボロと涙が落ちた、悔しい、それでも、受け入れないとならぬ事実。 「…おかあちゃん…私…どうすれば良かったの…」

10 21/08/30(月)22:17:31 No.840954124

あっという間にあの2人はいなくなってしまった。黄金世代の皆からすごい心配された、いつものスペちゃんじゃないって。 「……」 ぼんやりと、商店街を歩く。1月前半の日、友達と歩くことも拒否した。 …もう、1人にして欲しかったから。 「…福引き…」 何となく気になって、1つ商品を購入し、静かに回す。 「おめでとう!!ペアの温泉旅行券だよ!」 「……うそ」 「おめでとう!!」 貰ったその手に渡された。二人分の温泉旅行券。……使う相手もいない、無意味なチケット。 「……っ!」 貰ったまま、私は駆け出した。トラウマが蘇るようで、苦しくて胸が張り裂けるようでーー 走って、走って…走り続けて…。 「………ここ、どこ…」 気づけば、私は知らない街の路地裏のどこかに…迷い込んでいた。

11 21/08/30(月)22:18:10 No.840954406

「ここ、どこ…」 目の前にある骨董店のような店を除けば、他に何も無い、パイプだらけの路地裏。 運命を感じたのか、それとも、行くあても無いのか… 静かに、その店に入る。 「いらっしゃい、…珍しい客人だ」 「…あの、迷っちゃって…」 「…ああ、ここは路地裏の隠れ家のような骨董店だからね…君、なんて言う」 「スペシャルウィークって言います」 沢山ある金や宝石の細工が施されたすごく高そうな芸術品に、いくつかの絵画、…その奥にある、ガラスに収められた目覚まし時計がある。 (なんだろう、アレ…?)

12 21/08/30(月)22:18:34 No.840954572

「おや、目覚まし時計に興味がおありかな?」 「えっあっ……はい、そうです」 彼はぼんやりとした空気の部屋で、その時計を説明する。 「過去に戻れる時計があるというなら、…どう思う?」 「へっ?」 「………君になら、話してもいいか」 静かに、彼はその厳重に守られた時計を取り出し、ゆっくりと動かした。 「この時計は、昔世界に3つあったんだ」 「…」 「信じられない話だと思うけど…」 ゆっくりと、彼は話し出す。

13 21/08/30(月)22:18:59 No.840954744

「1度目に使用したのはウマ娘の王女様だった、とある身分違いの恋が諦めきれなくて、のの時計を俺から藁をも掴む思いで購入した、…結果、今、彼女は彼と夫婦の関係を描けていて…」 静かに、手紙を見せた。 「急に送ってきたのさ、…知りもしない王女様が、俺に感謝をする手紙、…怖かったよ、だけど、その時、時計の力を信じざるを得なくなった」 「……その、3つあったなら、ここにはまだ2つ…」 「いや、もうない、…2つは使われたからね、正確には…もう無かったことになってる」 「2人目は、どう使ったんですか?」 「2人目は…そうだね…どこにでもいる男だった、彼が一世一代のプロポーズをしたのに失敗したもんだから、この時計を使った、…まあ、2回目も失敗したんだ」

14 21/08/30(月)22:19:19 No.840954897

「……」 「もっと詳しく言うと、…覚えてなかったんだよ、泡沫の夢のようだったと言う、1日も経てば記憶は完全に忘れてしまうから、時計を使って過去に戻る時は自分の運命の分岐点をしっかり分かってないとならない」 「……不思議な、時計ですね」 心の奥底に1つ影が浮かぶ。 私の運命の分岐点。 ちゃんと覚えていた。…あの時…ちゃんと私は言えてたら、変わったんじゃないのかって スズカさんの為だなんて、変な良心を出して…自分のしたいことを棒に振って…。 「……どこか、思い詰めてるのかい?」 「…へっ」 「まあ、これが最後の時計だよ、正体を知るのは俺しかいないし、盗まれる価値も誰も分からない時計だ、今後使われることも無いだろう」 「そのっ……」

15 21/08/30(月)22:19:51 No.840955143

どうしても、それが欲しかった。 力づく奪いたくなかった、お金を払っても買えるものでもないと知っていた。 ポケットにある、小さな旅行券。もしかしたら、彼との温泉に行けたかもしれない、ひとつの切符。 「………これ、あげます、だから…その…時計を……!」 「おや、…これは商店街の温泉旅行券だな」 「私…戻りたい…あの日の…あの時…彼に言えれば…私は…」 「……そうか、使いたい人はもう…」 「……うっ、うっ……ううっ…」 「………ああ、いいよ、持ってお行き」 優しく、彼はそれを手渡して… 「使い方も教えよう、戻りたい日を思い出して、思いっきり時計を割るんだ。そうすれば、時計は無くなって過去に戻れる」 「……」 「夜しっかりと練ってから使うんだよ、…タクシー呼んであげるから、しっかりと考えて使いなさい」 「いいんですか…?」 「無くなるものに、勿体ぶるのもどうかと思ってたからな」

16 21/08/30(月)22:20:27 No.840955395

静かに路地の外へと導かれ、目の前にあったタクシー私は乗り込んだ。 「駄賃だ、トレセンまで行ける」 「…知ってるんですか?」 「嬢ちゃんの脚を見ればね」 ゆっくりと扉を閉めて、彼女を彼は送り出した。 最後まで不思議な人だったな… でも、どこか知らないのに懐かしい感じがした…

17 21/08/30(月)22:20:42 No.840955497

………… ぼっと、タバコに火をつけ、静かに空を見る。 「全く、顔すら見ることも叶わないと思ってんたんだけどな」 ふーっと煙を履いて、光る街灯の街を眺めた 「キャン。私は最後のひとつを君の顔を見たいがために使おうとしていた、かつて、俺は愚かにも死ぬ間際の君に顔も見せれなかったから」 ゆっくりとタバコの燃えるカスに、静かにふっと吸い込む。 「…ああ、だけど…君の子に、それを譲ることにしたよ、……顔も見せれない夫を…どうか、許しておくれ」

18 21/08/30(月)22:21:04 No.840955650

深夜、私は静かに決意をして、窓の月を見る。 「……おかあちゃん、行ってきます、真実かは分かりません、だけど…きっと…行けると思う」 あの日の夕方、あの日の模擬レース、忘れるわけも無い。 全てをおもいだして、もう一度、やり直したいと強く願う。 「……今度こそ」 大きく振り上げて、目覚まし時計を床に向かって叩き割った。

19 21/08/30(月)22:21:43 No.840955926

っていう感じで昨日書いた曇らせ怪文書から一気に幸せに変わる目覚まし時計の怪文書が好きなんですけど 誰か代わりに書いてくんない?

20 21/08/30(月)22:22:48 No.840956432

やるじゃん そんなこと言わなくても君なら続き書けるよ

21 21/08/30(月)22:22:58 No.840956489

君の始めた物語だろ

22 21/08/30(月)22:23:44 No.840956807

ここで終わっちゃうの!?!?!?!?嘘でしょ!?!?!?!?

23 21/08/30(月)22:24:26 No.840957102

キャン… キャンペン…?

24 21/08/30(月)22:25:20 No.840957485

お前が始めた物語だろ

25 21/08/30(月)22:25:31 No.840957557

明日も楽しみにしてるからな

26 21/08/30(月)22:25:34 No.840957581

男版カフェみたいな人出てきたな

27 21/08/30(月)22:25:40 No.840957627

キャンペンガール…原作でスペちゃんの産んだ母親 ああ…骨董店のおっちゃんは…2回目の時計でプロポーズしたんだな…

28 21/08/30(月)22:31:05 No.840959935

戻っても結局何も変えられずに自分の力の無さとチャンスをくれたおじさんに対する罪悪感で潰れそうになるスペちゃんはこの世で最も美しいと思うのですが

29 21/08/30(月)22:32:21 No.840960523

いい…途中でストーリーランドをふと思い出した…

30 21/08/30(月)22:32:30 No.840960580

>戻っても結局何も変えられずに自分の力の無さとチャンスをくれたおじさんに対する罪悪感で潰れそうになるスペちゃんはこの世で最も美しいと思うのですが そうなったら俺もう耐えられねえよ…

31 21/08/30(月)22:33:02 No.840960809

お前が始めた物語だろ

32 21/08/30(月)22:34:01 No.840961239

>そうなったら俺もう耐えられねえよ… "完成"されたスペちゃんの美しさを共に眺めようではないか

33 21/08/30(月)22:34:04 No.840961270

目覚まし時計が鳴り響く。 「あら…?スペちゃん、珍しいわね…」 目が覚めた、日時を見てきちんと認識する。 「あの苦しい夢は、本当だったんだ」 「……?」 「ごめんなさいスズカさんっ!行ってきます!」 すぐに準備しないと、忘れないようにメモを取らないと……! ノートに残した手がかり。 彼の最後のスカウトのチャンスは夕暮れにやってくる。 まずは、このレースを必ず勝利しないと… ……真昼間、レースをぶっちぎりで勝利した。 落ち着け、ここで彼の元に行かないの。 午後に、運命の分岐点がやって来るから。

34 21/08/30(月)22:34:25 No.840961437

私はちゃんと色んな名門の招待状を手に取り、ゆっくりと放課後、寮に至る道を歩く。 「いたいた」 でも、運命は残酷なことをする。 そう、ここで残酷な事をしてくる。 その時、前に居たのは……何を隠そう、彼だっから。 「スペ、いいレースだったね」 「……どうして、私のところに来たんですか?」 「そりゃ…君をスカウトしに」 ………! ああ、…どうすればいいかなんてわかってる。 「でも、私、もっと凄い所に呼ばれてしまったから」 何、強がってるの 「そうか…いや、俺個人のマンツーマンよりもそっちの方が色々有利だしな」 何、投げ捨ててるの。

35 21/08/30(月)22:34:40 No.840961546

私、どうしたい?どうしたいの。 ……君の隣が良い、ずっと一緒に居たい!…ずっと……ずっと……………!!!

36 21/08/30(月)22:34:59 No.840961682

一緒に居たい!!!

37 21/08/30(月)22:35:58 No.840962139

ストーリーランドのババアなら手痛いしっぺ返しが来るがな

38 21/08/30(月)22:36:06 No.840962207

「…一緒に居たい…ずっと…ずっと一緒がいい…!私を…スカウトして…!してください…!」 「スペっ……!ああ、ごめんな、辛い思いをさせてたよな…」 彼は強く抱き締め、ただ、撫で続けた。 「…日本一、絶対成し遂げて見せよう」 「…はいっ…!」 「ごめんな、…俺、お前に相応しくないと思ってたから、それでも諦めきれなくて…」 そう…だったんだ。 私も、諦めきれなかったよ 「…大好き」 心の底から、漏れ出た本心 2人とも言えなくて、ずっと溜まり続けて、…今、ようやく言えた 「…頑張ろう、スペシャルウィーク」 「はいっ、一緒に…ずっと隣で頑張りますから…!」

39 21/08/30(月)22:37:17 No.840962768

あの夏の日から始まった、彼との記憶。 もう、過去じゃない、これからは未来を作る。 スズカさん、…私、ちゃんと向き合います。 だから、…最後まで私も、彼に……! ああ、……やっぱり、ずっと、好きなんだな。 これからも、大好きなの …ありがとう、あの時、誰だったか、分からない人。 どこかにいるのなら、…また、もう一度感謝を延べに行きたいんだ

40 21/08/30(月)22:37:41 No.840962965

おしまい 後日談はたぶん時間間に合わないけど作成してみます

↑Top