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    21/08/24(火)00:56:37 No.838512647

    1月上旬。トレセン学園。ある日の朝。 短い冬休みも終わり、学園にはウマ娘たちも普段の生活に戻り始める頃合い。どんよりとした灰色の雲が寒空いっぱいに広がっている。どうも雪が近いようだ。 「今日は…練習はちょっと厳しいかな」 そう若き女性トレーナーは校門前でつぶやいた。担当のマーベラスサンデーと充実した1年を過ごした昨年度。本格的にレースに臨んだ彼女の成果はG1レースで1着を取ることは叶わなかったものの、天皇賞では4着、有マ記念では2着と好走することができた。さらに心配されていた怪我もなく、まずまずの成績を修めた彼女に、新年最初の練習位、思いっきり芝を走らせてあげたいと思ったのはトレーナーの親心。だが生憎と天候はそれを許してはくれそうにもないようである。 ふと冷たい風が吹き抜けて、彼女の全身を撫でていく。 「さっむ…」 身を震わせる若きトレーナーは、身に着けた茶色のコートで身を屈ませるように包み、そのまま足取りを職場の方へと進めていく。いつもの日常に戻るにしては、冷たい洗礼を受ける彼女だが、その足取りはそれにも負けないような、どこか逞しいものだった。

    1 21/08/24(火)00:57:11 No.838512828

    夕刻、トレーナー室にて。 パソコンに向かい合い仕事をするトレーナーのもとに、ドアをノックをする音が響く。 (早速来たわね) そう彼女は思うと 「どうぞ」 と明るい調子でドアの向こうに声をかけた。 ドアが開かれ冷たい空気が廊下から入り込み、そして 「トレーナーちゃん」 とウマ娘が姿を現した。 マーベラスサンデー。若きトレーナーの担当するウマ娘だった。

    2 21/08/24(火)00:57:37 No.838512962

    「マベちゃん」 とにっこり笑ってトレーナーはデスクの前のソファに座るように促す。 お互いに向かい合うようにソファに座ると 「明けましておめでとうございます」 「あけましておめでとうございます☆」 とお互いに頭を下げあった。 「どうだった、冬休みは」 「うん☆久々におうちに帰ってね、いっぱいいろんな人と話せたよ☆」 「そう、よかったね」 「おばあちゃんの家にも行ってね、いっぱい褒めてもらった☆」 楽しそうにマーベラスサンデーが話すたび、トレーナーの目じりが穏やかに緩む。そしてもたげてくるのは、どこか仄かな充実感。3度の骨折。生死の境をさまよった疝痛。棒に振ったクラシック。マーベラスサンデーは他のウマ娘とは異なり、苦難の道を歩み続けていた。懸命に前を向いても結果が伴う保証などない。他のウマ娘が道を譲ってくれるなどあり得ない。そんな厳しい状況の中で、昨年、ついに本格的にターフの上を走れるようになった彼女は見事に結果をだした。その結果の影響が、彼女の思い出話の要所要所に現れているのを聞くと、ここまでやってよかったと、ついつい思ってしまうトレーナーである。

    3 21/08/24(火)00:58:09 No.838513110

    思い出話に花が咲くのもほどほどに 「それじゃ、次のレースの話をしましょうか」 とトレーナーは切り出し、 「マーベラース☆」 元気一杯にマーベラスサンデーは右手を振り上げた。 「今年の前半は、春シニア三冠に挑戦してもらおうと思います」 そうトレーナーは切り出した。 春シニア三冠。 3月下旬、大阪杯、芝2000m。4月下旬、天皇賞(春)、芝3200m。そして6月下旬、宝塚記念、芝2200m。いずれもG1レース。歴戦の強豪たちが戦う上半期のウマ娘の憧れの舞台である。 「まずは3月下旬の大阪杯を目指します。芝2000mですから、どうしてもトップスピードを伸ばすのが重要となってきます。ですからマベちゃんには、前哨戦で消耗するのを避けるため、大阪杯には直行してもらい、十分な時間を確保したうえでスピードのトレーニングを…」 そうトレーナーが説明していたその時だった。

    4 21/08/24(火)00:58:49 No.838513279

    「ねぇ、トレーナーちゃん」 マーベラスサンデーが彼女の言葉に割って入ってきた。 「どうしました?」 と首をかしげるトレーナー。普段は聞き分けのいい彼女が、途中で言葉を遮ることなど非常に珍しい。だからトレーナーは内心面食らった様子で言葉を止めた。 「大阪杯ってさ、天皇賞のリハーサルにはなるのかな」 マーベラスサンデーは真っすぐにトレーナーを見つめ、そう問いかけた。 「それは…」 言葉に詰まるトレーナー。芝2000mの大阪杯は、芝3200mの春の天皇賞の前哨戦として相応しいかどうか。その答えは明快だった。どんなトレーナーでもそういうだろう。相応しくない、と。 「アタシね、トレーナーちゃん。春の天皇賞を目指してレースがしたいんだ☆」 にっこり笑ってマーベラスサンデーは答える。曇りのない目標。それに裏打ちされた強いはっきりとした語気。その言葉にトレーナーは少し狼狽えた。

    5 21/08/24(火)00:59:19 No.838513402

    「でもね、マベちゃん。大阪杯はG1レースだよ。その…春の天皇賞の前哨戦としては違うのは分かるけど…回避するにはちょっと惜しいような…」 そう彼女に話しかけるトレーナー。どこか焦りを含んだ調子で、目の前のウマ娘を説得するのに必死なようである。 「春の天皇賞にはね、ローレル先輩も出るの」 しかしマーベラスサンデーの語気は衰えない。その言葉に若干怯みがちになるトレーナーの瞳に、彼女の顔色がただ映り込む。鋼のような強い意志が彼女の顔からあふれ出ているようだった。 「約束したの、アタシ。ローレル先輩と、春秋両方の天皇賞に出て、最高にマーベラスなレースをするって。だから、そのリハーサルがちゃんとできるレースに出たい☆」 その言葉の節々は物語っていた。マーベラスサンデーの心には、すでに出たいレースがあるのだと。そして否応なしにトレーナーも気づく。いや、向かい合うといったほうが正しいだろう。芝3200mのレースに出るためのリハーサル。それは春の天皇賞同様の長距離レースであり、そんなレースが大阪杯と同時期にあるのだ。

    6 21/08/24(火)00:59:38 No.838513498

    「……阪神大賞典、ですか」 そうトレーナーの口からレースの名前が語られる。G2レース、芝3000m、阪神大賞典。 「うん☆」 屈託のない笑顔でマーベラスサンデーは同意した。その明るい表情に、トレーナーは天井を仰ぐ。 正直なところ、マーベラスサンデーの実力は既にG1級だ。そうトレーナーは感じている。だが肝心のタイトルがない。だから、春シニア三冠で、いずれかのタイトルを取らせてあげたい。それがトレーナーとしての本心だった。しかし、目の前のウマ娘はどうも違うらしい。G1のタイトルを取るならば、春の天皇賞で。それだけを考えているようである。 「…ちょっと考えさせて」 トレーナーは即断することができず、視線を逸らして彼女にそう告げた。G1のタイトルへの可能性か、ウマ娘のたっての希望か。どちらをとってもどちらかを捨てることになる。しかし、目指すレースが異なれば、練習する内容にも差が生じる。だから早めに方針を決めなくてはならない。そう頭を悩ませるトレーナーに 「明日までに決めてくれればいいよ☆」 とマーベラスサンデーは、彼女の心を見透かしたかのように歯を見せて笑いかけるのだった。

    7 21/08/24(火)01:00:15 No.838513656

    1月中旬。朝。 (ねっ…みぃ…) マヤノトップガンのトレーナーはトレーナー室にて歯を磨きながら、パソコンの画面を眺め、有力ウマ娘の自走予定の記事に目を通していた。 有マ記念で7着になったマヤノトップガンのメンタルへのダメージは相当辛いものだったが、一緒に過ごす時間を多くとり、最近になりどうにかマヤノトップガンは調子を取り戻しつつあった。その反面、彼女の調子に合わせることを主とした生活をした結果、若いウマ娘のパワフルな力に振り回されっぱなしで、どうにも最近疲れが取れない彼である。 「スリゼローレルは…春の天皇賞が次走予定か…」 年末のセンターの座を射止めたウマ娘、スリゼローレル。しかしグランプリ直後に骨折が見つかったようで、現在は休養中である。 「流石に大阪杯に出るつもりはなし…か」 そう独り言ちて、次のウマ娘の自走予定をクリックした。 その瞬間だった。

    8 21/08/24(火)01:03:28 No.838514465

    「は……?」 思わず手に持った歯ブラシを落とす。それほどまでに強い衝撃が彼の心に走った。 「嘘だろ……」 そこに映っていたのは、「次走予定:阪神大賞典」の文字。そしてその出走を予定しているウマ娘は、彼が衝撃を受けたそのウマ娘。それは驚愕の日曜日、マーベラスサンデーだった。 「マジか……」 茫然とした脳みそを抱えるように頭に手をやる彼。何がここまで衝撃的かといえば、彼の担当のマヤノトップガンの次走予定も阪神大賞典だったからだ。 G1ウマ娘の実力があるのに、G1タイトルを取っていないマーベラスサンデーである。てっきり大阪杯に進むと思っていた彼だったが、思わぬ見当違いになった。まさかG2レースで、天皇賞の前哨戦でぶつかり合うことにあるとは予想外だった。そしてそれにわずかばかりの苛立ちを覚えた彼である。

    9 21/08/24(火)01:04:38 No.838514771

    そんな最中 「トレーナーちゃーん!おっはよー☆」 元気いっぱいにノックなしで、部屋のドアを勢いよく開けたウマ娘がいる。彼の担当するマヤノトップガンだ。 「おう、マヤ。おはよ」 「あー!トレーナーちゃんったら、またお部屋で歯を磨いてるー!髪の毛もぼさぼさじゃん!ダメなんだよー!マヤのトレーナーは、いつでもカッコよくないと☆」 調子のいい態度で話す、目の前の背伸びした少女。いつものマヤノトップガンの様子を見て 「あぁ、わりぃわりぃ」 と言い、トレーナーは身だしなみを整え始めた。 トレーナーの身だしなみが整うまで、部屋の椅子に腰かけて脚をプラプラとさせ、退屈そうに過ごすマヤノトップガン。

    10 21/08/24(火)01:05:38 No.838515033

    しばらくして 「お待たせ」 と言い、マヤノトップガンの前に現れたのは、髪の毛もびっしりと整え終わり、まっすぐなネクタイをかっちりと決め終わったトレーナー。 「うん!すっごくカッコいい!」 「だろ?」 「じゃ、早速朝練行こー☆」 「よっし!行くか!」 そう言ってマヤノトップガンとトレーナーは部屋を後にする。 しかし、トレーナーはマヤノトップガンに、次のレースにて、マーベラスサンデーと戦うことになるとはまだ言い出せずにいたのだった。 こんな話を私は読みたい 文章の距離適性があってないのでこれにて失礼する fu274919.txt

    11 21/08/24(火)01:15:54 No.838517816

    おい待てェ マベちゃんVSマヤノ再びか...

    12 21/08/24(火)01:23:53 No.838520039

    おい待てェ 原作をねじ曲げて来やがった…