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    21/08/01(日)01:44:05 No.829784726

    マーベラスサンデーはようやくメイクデビューを果たした。4月入学から10ヶ月。同級生からすると遅すぎるデビューだったが、そのレース内容は完勝と言っていいものだった。 メイクデビュー戦を終えた翌々日、月曜日。授業を終えた彼女は、トレーナー室にてトレーナーと打合せを行っていた。 「改めてメイクデビューおめでとう、マベちゃん」 「ありがとう☆トレーナーちゃん☆」 満面の笑顔で交わす会話。高々メイクデビューの一勝にすぎないそれだが、彼女たちにとってかけがえのない一勝だった。 「ここからはいよいよクラシックだけど…」 「うん☆」 「マベちゃんにとって、これからが大変になるの」 「?」 首をかしげるマーベラスサンデーに対して、トレーナーは視線を逸らし、言葉に詰まる様子を見せていた。

    1 21/08/01(日)01:44:22 No.829784814

    「クラシック最初のレースは皐月賞。4月の2週目にあるじゃない」 「うん」 「G1レースの皐月賞に出るには、トライアルレースの弥生賞・スプリングステークスいずれかで3着以内、もしくは若葉ステークスで2着以内に入る。もしくはそれに準じた成績を収めることが必要になってくるの」 「うん」 「これらのレースは3月に実施されるけど…」 ここでトレーナーは言葉に詰まった。 「どうしたの」 マーベラスサンデーのまっすぐな瞳が彼女を見つめていた。 その光がトレーナーに向けば向くほど、トレーナーはその言葉を言い出せずにいた。 「何か悩み事なの、トレーナーちゃん」 「いや…その…」 まごつくトレーナーだったが、覚悟を決めたように深呼吸すると 「マベちゃんは…どのレースにも出ることが出来ない」 と一言言い放った。 そして言葉を続ける。

    2 21/08/01(日)01:45:01 No.829785005

    「マベちゃんの今の成績はダートで1勝。芝の成績は0勝。登録は受け付けてもらえるかもしれないけど…成績不足と取られて、多分足切りで落選すると思う」 一瞬沈黙が二人の間に漂った。 「…ごめんね」 そう俯きながら謝るトレーナーに対して 「どうしてトレーナーちゃんが謝るの」 と、マーベラスサンデーは彼女に向かい合う。 「分かってるよ☆だから次出るレースの話をしよ☆」 その顔は、春の陽気をもたらす明るい太陽のようにきらめき、曇りの気配など一切存在していなかった。 「うん…!」

    3 21/08/01(日)01:45:39 No.829785172

    トレーナーもそれに応じるように満面の笑顔で答える。 「日本ダービーを目指そう」 「マーベラース☆」 そして二人の目標が定まる。まずは日本ダービー。それに向けて 「じゃ、今日のトレーニングをやろうよ☆」 「そうね!」 彼女たちはトレーニングへのやる気を見せるのだった。

    4 21/08/01(日)01:45:53 No.829785228

    マーベラスサンデーがたどり着いた場所。それはいつもの練習場のターフではなかった。 彼女の周りには水着のウマ娘ばかりがいる。そして目の前には水面が広がっている。 そこは間違いなくプールだった。 話は日本ダービーを目指すことを決めた、打合せの後のこと。 「プール?」 「うん。今日から、最低週1回はプールトレーニングを加えようと思うの」 その意図が分からず不思議そうな顔をするマーベラスサンデーを見て、 「マベちゃんが病院にいる間、私も色々ウマ娘の骨折について調べたの。若いウマ娘の骨折のメカニズムだけど…、簡単に言うと、爆発的に成長する筋肉に対して、ハードなトレーニングを行いすぎることや、継続的にトレーニングを行いすぎることで、固くなった骨が疲労を起こして、それに負けちゃうことで起こるらしいんだって」 と言葉を続ける。

    5 21/08/01(日)01:46:14 No.829785331

    マーベラスサンデーが入院している間、トレーナーは何もしていない訳ではなかった。 骨折が起こったことを反省し、骨折を予防するにはどうすればいいか、文献をあさり考えていた。 以下、彼女がまとめた内容を、彼女のノートから抜粋する。 ウマ娘の骨について。 成長とともに筋肉量が増え、体重が増加し、さらにトレーニングを積む事で筋骨はそれに耐えるため、太く成長する。ここまではいいことのように思えるのだが、このように硬く丈夫に成長した骨は、硬化が起こるため、粘り気が少なく脆くなりがちになる。 ウマ娘の骨の内部構造には細く細かい骨梁が縦横に横行しており、通常それが骨にかかる力を分散しているのだが、骨の硬化が起こる際に、縦方向の骨梁の量が少なくなっていく。そのため、ハードな練習をこなし骨が固くなればなるほど、骨折をしやすくなるリスクを孕んでいく。 ウマ娘が路面を走る際、足の骨に対して垂直に強い衝撃が掛かっている。骨折箇所の症例を確認すると、①その骨は硬化を起こしており②縦方向に骨折が起こっている場合がほとんどだった。 つまり固くなった骨が、衝撃を分散することができず骨折は起こる。

    6 21/08/01(日)01:46:36 No.829785436

    「でも、骨折を怖がって身体を動かさないとなまっちゃう」 「だからプールなの?」 「そう」 骨折を防ぐには、ハードなトレーニングやレースを継続的に続けないことが重要になってくる。 だがトレーニングをしないという選択肢はレースを目指すウマ娘にはない。だとすると骨に負荷をかけにくいトレーニングを選ぶことになる。 その一つがプールトレーニングだった。心肺機能の増強と、筋肉量の維持・増大をしつつ、走るわけではないので骨への負荷を軽減できる。 それが彼女のたどり着いた考えだった。

    7 21/08/01(日)01:47:01 No.829785538

    練習が終わってプールから帰るときのこと。 すっかり空は夕日の色に染まり、マーベラスサンデーとトレーナーは並んで駐車場へと向かっていた。たまには一緒に夕食を取ろうとトレーナーが誘ったところ、マーベラスサンデーは心からそれに同意したのだ。 けだるい体を抱えながらもマーベラスサンデーは心地よい疲れに身を委ねている。 「どうだった、プール」 「なーんかだるーい☆」 「今日はよく寝られそう?」 「うん☆」 他愛のない会話をしながら歩く道すがら 「マベちゃーん!」 2人の後ろから聞きなれた声が響いた。そして振り向いた先には一人のウマ娘が走って駆けよってくる。その姿を見てマーベラスサンデーの眼が輝いた。 「ローレル先輩!」 入院する前、一緒にトレーニングに励んだ仲のウマ娘。澄んだ水面のような色合いの瞳の中に桜が躍っている彼女、スリゼローレルだった。

    8 21/08/01(日)01:47:19 No.829785641

    その姿を見て、マーベラスサンデーも彼女に歩み寄った。 「約束のアレ、持ってきたよ!」 走り寄った彼女の手には、手提げ袋が握られている。 「えー☆見せて見せて☆」 と興味津々のマーベラスサンデー。 その姿を見て少し鼻息を荒くし 「はい!これが中山金杯のトロフィーです!」 と自信満々に彼女はそのトロフィーを取り出した。 「わー☆すごいすごい☆☆☆」 「えへへ…」 金色の中山金杯のトロフィーが夕暮れの赤色に照らされ輝く。 スリゼローレルは結局、クラシックでは成果を出せなかった。セントライト記念では掲示板にも乗れず悔しい思いをした彼女だったが、その後、条件戦を4戦。1着2回、2着2回という十分な成績を示した。そして1月第1週の中山金杯。芝2000mのG3レース。彼女はついに念願のタイトルを手にしたのだ。 怪我に悩まされ、ようやく手にした栄冠だった。

    9 21/08/01(日)01:47:37 No.829785748

    「マベちゃんもメイクデビューおめでとう」 「うん☆」 「次、先輩は目黒記念だっけ?」 「そう、マベちゃんは?」 「3月のゆきやなぎ賞!」 それはただの条件戦である。オープン戦にも届かないレースだが、マーベラスサンデーにとっては重要なレースに違いなかった。そしてスリゼローレルもそれを理解している。彼女も歩んできた道なのだから。 「次もアタシ勝っちゃうからね☆」 「私だって!負けないんだから!」 楽しそうに話す二人を見て、トレーナーの目じりがやさしく緩む。そんな中、スリゼローレルの後ろに一人の女性の影を見つけた。スリゼローレルの後ろから歩んでくる彼女。それは新人トレーナーだった自分に、合同練習を提案し、トレーナーとして様々な重要なノウハウを教えてくれた恩師の姿だった。

    10 21/08/01(日)01:48:32 No.829786031

    「先生!」 「こんばんは」 トレーナーも彼女に呼びかけ、駆け足気味に少し駆け寄る。いつものやさしげな微笑みを携え、ベテラントレーナーは挨拶を返した。 「次、ローレルさんは目黒記念ですか」 「えぇ…」 「優勝するのを楽しみにしてます!」 そう笑顔で話すトレーナーに対して、ベテラントレーナーの顔はどこか上の空だった。 「先生?」 と、問いかけるトレーナーに対して 「…あ、あぁ。そうね。ありがとう。あの子の目黒記念での優勝、楽しみにしててね」 と、ベテラントレーナーは言葉を返す。 トレーナーはその恩師の顔を見ていた。表面上は変わらない彼女の顔だったが、どこか悩みを抱えているような、そんな小さな違和感を抱えた彼女なのだった。 こんな話を私は読みたい 文章の距離適性があってないのでこれにて失礼する

    11 21/08/01(日)01:48:45 No.829786089

    fu209762.txt

    12 21/08/01(日)02:02:57 No.829789690

    トレーナーちゃんもどんどん頼もしくなっていくな

    13 21/08/01(日)02:16:03 No.829792889

    ウマ娘の骨の内部構造が書いてある怪文書はじめてみた

    14 21/08/01(日)02:18:53 No.829793535

    おい待てェ 毎晩楽しみにしてるんだから失礼すんじゃねぇ