虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

1 21/07/25(日)02:31:34 No.827228246

ボクが舌を出すと、トレーナーは少しだけ微笑んだ。 菊花賞が終わってから、一週間が経って、あれだけ見たかったトレーナーの笑顔はあっけないぐらい見れるようになった。なったけど、それは本当に笑ってるんだろうか。 今のトレーナーはなんだか空っぽで、だからこそ何かを見つけてもがいているような、そんな迷子のようにも見えてしまう。 だからかな、同じように夢が一気になくなっちゃって空っぽになっていたボクに、またすぐに新しい目標ができたんだ。 「でも、よくこんな難しそうなドリンクの作り方とか知ってたよねトレーナー」 「今勉強中という所だ、資料や本、メモや口伝でな」 「えっ、誰か先生がいるの？」 「悪魔ならいる」 トレーナーはそういうと今日もボクの体調や血圧なんかを全て調べてどこかにメールで送り始めた。 それが何かは分からないけど、時々本当に悪魔と契約して魂の状態でも送ってるんじゃないかとさえ思う時もある。ほら、トレセン学園って色々な人がいるし、悪魔だっているんじゃないかな。

2 21/07/25(日)02:32:21 No.827228361

その中で槍玉が上がっているのはネイチャで、いろんな言葉で否定されている。ネイチャの走り方は正しいのかどうとか、スポーツマンシップがどーとか。 「みーんなネイチャが悪い悪いって…普通怒られるのってボクじゃないの？」 「ルールからみてもネイチャは問題なかったし、展開から見れば先に転んだのはテイオーで、ナイスネイチャはそれに巻き込まれた形ではある。だが周りはそうは思ってはくれない」 「ボクが、みんなの期待を裏切っちゃったから…？」 トレーナーは違うと言おうとしたようだけど、言葉に詰まったみたいで否定せずに違う言葉を並べた。 「俺のせいだ。テイオーが気にすることはない、責任は俺にある」 「違う、違うよトレーナー！ ボクがトレーナーの言うとおりにしなかったから、ちゃんと予定通りにしなかったから、転んじゃったんだ。ボク、トレーナーに黙って…」 「テイオー」

3 21/07/25(日)02:34:19 No.827228662

トレーナーの手がボクの手を優しく包んだかと思うと、その目がボクの瞳を見つめていた。 「俺だってトレーナーだ、隠れて練習してたことぐらいは…なんとなくだが分かっていた」 「えっ…じゃあ、なんで…あんなに予定を大事にしてたのに…どうして怒らなかったの？」 「怖かったんだ。俺は、俺は君を利用していた、自分の目的のために。そんな俺が…君の努力を怒る資格があるのか、分からなかった…」 俯いたトレーナーは何だか何処か、一人ぼっちに怯える子供のようにも見えた。 でもそれはボクも同じで、ボクたちは深いところで一緒なのかもしれないって、そう思えた。 「トレーナーの目的って、同じ三冠ウマ娘でカイチョーに勝つことだよね。どうして、あの日ボクの所にきたの…？ カイチョーに殴られそうになっても、ボクの担当を続けたいって…」 「君を…過去の英雄にしたくなかった。俺の母のように、したくなかった。例え君がこれ以上ボロボロになったとしても、走れなくなるかもしれなくても…過去を責めさせたくなかった…どうしてテイオーは俺を受け入れてくれた？」

4 21/07/25(日)02:35:29 No.827228814

「…………なんでだろ、分かんないや。でもたぶん、もっとトレーナーの事知りたいなってそう思ったからかも。ボクたちって、お互いのこと何も知らなかったからさ」 「それも、そうだな…」 ボクが笑うと、トレーナーはまた何処か申し訳なさそうに目を伏せた。 でも新しい目標はあるんだよ。前から変わらないこと、カイチョーに勝って、トレーナーがレースを好きになるくらい凄い走りをして、そして笑ってもらう。空っぽなんかじゃないよって、そう気づいてもらうんだ。 雰囲気を変えるように、ボクは手をたた…けないので指を鳴らした。 「じゃあさ、またやり直そうよ。自己紹介から！ ボクはトウカイテイオー！ 小さいころカイチョーのレースを見て、憧れてカイチョーを超えるためにトレセン学園にきたんだ！」 ボクが胸を張って、まぁ脚やら手やら吊り下げられてるけど、とにかく大声を出すとトレーナーは少し困ったような顔をしながら続けた。 「俺は…俺は、シンボリルドルフを超えるウマ娘を育てるために此処にきた。自分の価値が知りたかった、予定通りじゃないと気が済まない、気弱なトレーナーだ」

5 21/07/25(日)02:36:02 No.827228882

「あはは！ トレーナーが気弱なんて絶対うっそだー！」 「本当だ、強がっているだけだ。そう言えばテイオーがルドルフに会った時、すでに俺の兄はテイオーの素質を見抜いていたようだ。本当は前もってテイオーを紹介されてはいたんだ」 「カイチョーのトレーナーさんってそっか、トレーナーのお兄さんなんだよね。あれ？ でも可笑しいなぁ…」 「何がだ？」 「初めてカイチョーと会った時、トレーナーさんも横にいたけど違う人だったよ。もっとお年寄りだった気がするー」 「何…？」 トレーナーの動きが固まって、ハッとした表情でボクを見た。

6 21/07/25(日)02:36:21 No.827228939

「じゃあ、兄は…いなかったのか？」 「ううん、お兄さんもカイチョーといたのは覚えてる。でもカイチョーはそのお年寄りを見てトレーナーって言ってたよ。お兄さんの方はサブだったような…？ うん、サブトレーナーって言われてた。トレセン学園にきた時にカイチョーからトレーナーって呼ばれてて、変わったんだなって思ったから覚えてる」 「まて、テイオー…待て…一つ聞いていいか…？ そのお年寄りは…」 そのままトレーナーは額に手を当てながら、何かを思い出しながらそのお年寄りの印象や特徴をつらつらと並べ始めた。違う所もあったけど、だいたい当たっていて、思わず悪魔と取引をして得た能力かと思っちゃったぐらいだ。 「すごい…ほとんど一緒だよ。もしかして知り合い？」 「あぁ、まぁ…そうだな」 でもどちらかというとトレーナーの方が、自分で言ったことを信じられないといった様子だった。 「知り合いだ…かなり昔の…」

7 21/07/25(日)02:36:47 No.827229014

〇 「ネイチャ…」 朝、コッソリ荷物を持って部屋から出て行こうとすると、珍しくマーベラスが「マーベラス！」と叫ばずに起きていて、心配そうな目でアタシを見つめていた。 「大丈夫だってマーベラス、別に今生の分かれってわけじゃないんだからさ。うん…多分…」 「ネイチャ、行ってらっしゃい。行ってらっしゃいって言うのは、お帰りなさいが聞きたいからだよ、マーベラスなお土産話聞かせてね…」 「任せてよ。それじゃ行ってきます、マーベラス」 明日から一人で部屋を使うことになるマーベラスはアタシがドアを閉めるまで心配そうに、寂しそうに見送った。きっとマーベラスというと、周りが起きてしまうと思ったんだろう。その心遣いが嬉しくて、少し悲しい。 門の前に行くと、たづなさんがいて時間通りに来た車まで案内してくれた。 やっぱりこう、スケールが違うというか迎えの車はリムジンで一人で乗るにはかなり勇気が必要だった。

8 21/07/25(日)02:37:11 No.827229070

「行ってらっしゃい、ナイスネイチャさん」 「……行ってきます。たづなさん」 マーベラスと同じように、少し寂し気な顔で挨拶を交わして見送られる。運転手さんはアタシに笑顔を向けてくれて、少しだけ時間がかかりますから寝ていてもいいですよ。と言われた。 でも、なんだか目は冴えていて、スモーク越しのガラスから外を見るとトレセン学園は遠くに、小さくなっていって、ついに曲がり角で消えていく。ふと、今日から療養所で誰とも会わない場所で過ごすんだと、そう実感がわいてくる。ドキドキなんてなかった。 「一人ぼっち、か…」 「いえ、一人ぼっちではございませんよ」 「わ、聞かれてた…すいません、なんか…運転してるときに変なこと聞こえさせちゃって…」

9 21/07/25(日)02:37:37 No.827229144

「いえいえ、でもお一人ではありませんよ。お嬢様方も時折いらっしゃいますし、今日もご挨拶に既に館の方でお待ちしています」 「えっ、いるの…！？ てか待たせちゃってんの…！？」 「えぇ、皆さま首を長くしてお待ちですよ」 というか家の事を館っていう人初めて見た。そう呆気に取られながら、車に揺られると森に入っていき、暫くするとトレセン学園並にでっかい建物が見えてきた。西洋風で、大げさに貴族が住んでいるところといったらコレ、というようなそんな家…というか本当に館だ。 「お荷物はお運びしておきますので、どうぞ中へ」

10 21/07/25(日)02:38:00 No.827229200

そう言われて車から降ろされてでっかくて豪華な鉄格子の門の前で立ち尽くす。 「あの…チャイムとか…何処にあるんでしょうか？」 いや、何言ってんだアタシ。しかしどうやって入っていいかも分からずにおろおろしていると、門がひとりでに動いて、中の庭園が見えた。 「ようこそ、メジロ家へ。ナイスネイチャさん」 そしてメジロマックイーンも。

11 <a href="mailto:s">21/07/25(日)02:38:43</a> [s] No.827229297

遅くなったし長くなったしお休み貰ってたしでお詫びのしようもありませんが全てはスリーゴッデスのせいなので私は悪くありません許してください

12 21/07/25(日)02:42:01 No.827229798

テイオーとテイトレがちゃんと話せるようになってよかったな…

13 21/07/25(日)02:44:12 No.827230085

テイオーコンビの掛け違えたボタンはあるべき場所に直ったようでひとまず安心か テイオー本人が相当に追い詰められない限り折れないのはアニメ二期でもやってるし マンツーマンで向き合ってくれるトレーナーがいるなら何とかなるだろ…

14 21/07/25(日)02:44:36 No.827230127

向き合えるようになっていてよかった…それはそれとして殴られかけたんかテイトレ…

15 21/07/25(日)02:47:24 No.827230494

>テイオーコンビの掛け違えたボタンはあるべき場所に直ったようでひとまず安心か >テイオー本人が相当に追い詰められない限り折れないのはアニメ二期でもやってるし >マンツーマンで向き合ってくれるトレーナーがいるなら何とかなるだろ… つまりまだまだ追い詰める余地があるということですね！

16 21/07/25(日)02:48:07 No.827230574

メジロの子が顔見せてくれるとはいえネイチャの境遇がおつらい…

17 21/07/25(日)02:49:07 No.827230687

一安心していい…のか？

18 21/07/25(日)02:49:34 No.827230738

久々だなって思ったけど前が三日前だからそんなでもなかった 日刊のスピードに慣れすぎていた

19 21/07/25(日)02:51:12 No.827230960

しんみりマーベいいよね…

20 21/07/25(日)02:52:15 No.827231094

ネイチャは絶対学園で逃げたんだ…って噂されるだろうけどそういう噂からも逃げるために来たんだもんな…

21 21/07/25(日)02:53:19 No.827231230

テイオーとテイトレがようやく同じ方向向けた感はある テイトレ兄の動向が気になるが

22 21/07/25(日)02:53:26 No.827231242

さしものマーベラスも元気でないか…でないよな…

23 21/07/25(日)02:55:17 No.827231482

つまりルドルフの最初のトレーナーはルドルフ父でテイトレ兄貴は一緒にいた…？なんで兄貴だけになってる…

24 21/07/25(日)02:58:23 No.827231874

マーベラスとネイチャは曇ったところもかわいいな…

25 21/07/25(日)02:58:47 No.827231923

復讐はもう終わったのか…？

26 21/07/25(日)03:00:34 No.827232170

>復讐はもう終わったのか…？ もう無意味と言われてるしな…ただしルドルフトレーナーは精神壊れかけてるというか…

27 21/07/25(日)03:02:32 No.827232443

何をたくらんでやがる悪魔…

28 21/07/25(日)03:03:20 No.827232541

テイトレは復讐より大事なことを見つけた感じはある テイオーはこんな状況でも誰を攻めるでもなく明るくて安心する　 そしてこのマックイーンはたぶん面白饅頭でも悪役令嬢でもない貴顕マックイーン

29 21/07/25(日)03:10:14 No.827233308

>何をたくらんでやがる悪魔… テイオーを利用してウララちゃん強化とか…

30 21/07/25(日)03:18:45 No.827234270

お互いを知ろうとするために自己紹介から始めるテイオーにうるっときた 健気すぎる

31 21/07/25(日)03:22:07 No.827234660

この一件で生まれた無念を全て想いとしてウララに継承！ スピードが3600上がった！

32 21/07/25(日)03:37:38 No.827236414

テイトレ兄には詳しく説明してもらいたいねぇ...

33 21/07/25(日)03:39:03 No.827236566

今頃イクノは例の走りの特訓中かな

34 21/07/25(日)05:40:20 No.827244589

ルドトレも動揺してるｶｲﾁｮｰ見てほくそ笑みたくなるのをどうにか堪えてたワケで 理性では復讐を否定してても内心ホントに割り切れてはなさそうなのがな･･･まだ一波乱ありそう

35 21/07/25(日)06:30:38 No.827247451

バクシンオーにバクシーンって囁かれるのと同じくらい 静かで湿度80％のマーベラスも聞いてみたい